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 クラーケン討伐が無事に終わったその翌日。

 久しぶりに酒を飲んでぐっすりと寝入ってしまった俺の下に、ぺたぺたとおっとせいのようなフォームでリリィがやってきた。


 その隣にはなぜかカーミラとナナの姿もある。

 そしてなぜかこちらに頭を下げたかと思うと、


「ヴァルさん、ぜひとも私とも婚約をしていただけたらと……」


「わ、私も! 私もヴァルさんの婚約者になるのです!」


「……」


 わずかに残っていた酔いも、一瞬で覚めた。

 多分……というか間違いなく、彼女達の隣でドヤ顔をしているカーミラが色々と気を回してくれたんだろう。


 この辺りで出現する最も強力な魔物達が海底に住んでいることを考えれば、マーメイド達との協力は不可欠。


 そしてアマゾネス、マーメイドと婚約関係を結ぶのなら、一番最初に俺の配下になってくれた獣人達が不安に思わぬためにも、姫巫女だったナナとも婚姻関係を結ぶというのは理に適っている。


 これも一種の政略結婚と考えれば、今世のヴァルの持っている常識的にも問題のないことだと納得できる。


 前世の価値観があるのでもちろん抵抗がまったくないわけではないが、彼女達と婚姻関係を結ぶこと自体はなんら問題もない。


 というか美女に囲まれるハーレムライフなわけだから、男としては理想に近いだろう。


 今はまだ少し幼いがナナもあと数年もすれば美少女になるだろうし、リリィは比較的美男美女の多いこの世界であっても、彼女とすれ違った人は十人が十人振り向くほどの美人だ。

 俺としてもまったくもって否やはない。


 けれどそれをするためには、まず最初にやらなくちゃいけないことがある。

 俺の気持ちを、打ち明けなくちゃいけない人がいる。


「済まない、もちろん構わないんだが……少しだけ時間をもらえないか?」


 目の前の彼女達には少し酷なことをしてしまうが、それでも俺には大切な人がいるのだ。

 ずっと俺に文句の一つも言わずについてきてくれた人が。


 俺の言葉を聞いて、リリィ達が苦笑する。

 まるで自分達がそう言われることをわかっていたように。


「はい、事情はカーミラから聞きましたから」


「もちろんナナも大丈夫なのです! ナナはこういう時に、きちんと待ちの姿勢を見せられる大人の女なのです!」


 ナナの言葉に思わず笑いそうになりながら、俺は急ぎ駆けだした。

 本当の大人の女はそういうことを言わないものだと彼女が理解するのは、一体いつの日になるのだろう。


 駆け出すうちに息が乱れ、顔は強張っていく。

 久しく感じていなかった緊張で、胸の中がいっぱいになった。

 レベルをどれだけ上げて強くなっても、こういう時に心臓が跳ねるのは変わらない。


「はあっ、はあっ、はあっ……」


 昨日のBBQ会場に向かうと、あちこちに散らばっているゴミや食器類などを綺麗にまとめているララの姿が見えた。


「ヴァル様、おはようございます。そんなに慌てて……どうかされたのですか?」


「ララ……好きだ。俺と結婚してくれ」


「……はい」


 ムードも何もない、あまりにも唐突な告白。

 けれど俺の言葉を聞いたララは喜色満面の笑みを浮かべてから、小さくこくりと頷いた。


 こうして俺とララは正式に婚姻関係を結び、そのままの流れでカーミラ・ナナ・リリィの三人とも同時に結婚を行うことが決定される。


 本来ならすぐにでも結婚式に移りたいところではあるが、俺のわがままで式は先に伸ばしてもらうことにした。


 北・西・東の三方にいる者達を傘下に置き、俺は名実共にダート大森林を統べることになった。


 これでフレイム領の滅亡を回避するための前準備は全て整った。

 だから後は……備え、その時を待つだけだ。


 待っていろ、タリバーディン。

 お前を倒して俺は、守ってみせる。

 俺のことを最後に諦めずにいてくれた家族も、こんな俺を信じてついてきてくれると言ってくれたララ達も……全部、全部。

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