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トロルキング


 トロルキングは各種状態異常攻撃に対しても強力な耐性を持つため、雷魔法で麻痺を狙ういつものやり方は使えないだろう。

 つまりは真っ向勝負で正々堂々戦うしかない。


「ララ、ベルト! 後ろは任せた! カーミラ、行くぞ!」


「ええいっ、女王の妾に命令するでないわ!」


「BUUU……」


 大トロル達が戦っている様子をジッと見つめていたトロルキングが、残るのは自分だけであると言うことを理解しゆっくりと立ち上がる。


 見事なまでの重役出勤だが、あちらにあまり慌てている様子はない。


 立ち上がると、本当に馬鹿げた大きさだ。体長は三メートルは優に超えているだろう。

 本当にトロルと同じ種族なのか、疑問に思えてくるほどに大きい。


 その瞳には明らかな知性を湛えており、全身からは王者の風格のようなものがにじみ出していた。


 だが、なぜだろうか。

 不思議と負ける気がしなかった。


 立ち上がったトロルキングが、玉座にかけられていた骨の棍棒を両の手で握る。

 そしてすうっと大きく息を吸ってから、


「BUOOOOOOOO!!」


 放たれた咆哮は、全身がビリビリと震えるほどに強烈だった。

 その声を聞いた背後にいるトロル達の意識がこちら側に向くのがわかる。

 なるほど、こうやって仲間を呼ぶわけだ。


「ララ、ベルト、後ろは任せたぞ!」


「はいっ、お任せください!」


「わおんっ!」


 そちら側の対処は彼女達に任せ、俺達はトロルキングと相対する。


「サンダーアクセル」


「――っ!? なんだ、少しピリピリするぞっ!」


「それくらいは我慢してくれ」


 カーミラにもしっかりとバフをかけてから、俺は右、カーミラは左側に回りながら剣を構える。


 トロルキングは少し悩んでから、カーミラの方に意識を向けた。

 どうやら巨大な大剣を持つ彼女の方を、より大きな脅威と認識したようだ。


 その認識が間違っているということを、身体に教えてやらなくちゃいけないな。


「おお、これはいいぞッ!」


 アマゾネスの中で暮らしていれば、なかなかバフの魔法をかけられるようなこともなかったのだろう。


 カーミラは普段より明らかに上がった敏捷にテンションが上がっていた。


 両手で構えた大剣を下段に構え、接近。

 いつでも相手の攻撃に対応できるように注意を払いながら、グッと力を溜める。


「BUOOO!!」


「おおおおおおっっ!!」


 トロルキングが棍棒を振り下ろし、カーミラがその一撃に対応すべき剣を振り上げる。

 両者の攻撃が激突。

 軍配が上がったのは、トロルキングの方だった。


「ぐううっっ!?」


 攻撃の勢いを殺しきれなかったカーミラが、後ろに吹っ飛んでいく。

 トロルキングは即座に追撃を放つべく、グッと足に力を入れて前に出ようとする。

 ――させるかよ!


「ライトニングボルト・オーバーライド」


 事前に発動準備を終えていた雷魔法を放つと、トロルキングは咄嗟に腕を上げて防御姿勢を取る。


 そして全身からプスプスと黒い煙を上げながら、ゆっくりとこちらの方を向いた。


 ダメージは入っているが、正直あまり効いている様子は見受けられない。


 既に傷が塞がり始めているし、中級魔法にオーバーライドを使った程度では大したダメージも入らなそうだ。


「そうだ……お前の本当の敵は、ここにいるぞ」


 全身に雷を纏わせながら、剣を構える。


「エレクトリックソード・オーバーライド」


 そして俺とトロルキングの戦いが始まる。


「BUOOOOO!!」


 トロルキングの乱打をくぐり抜けながら、剣を突き立て、刺し貫き、肉を刮ぎ取る。


 さすがに上級魔法のオーバーライドであればしっかりとダメージが通る。

 魔法が切れる前に再度かけ直す手間はあるが、これであれば俺も十分に戦うことができそうだ。


「ふっ!」


 振り回された棍棒を、少し余裕を見て大きめに避ける。

 今の俺には、余力を持って回避をしながら攻撃をするだけの余裕があった。


 相手とこちら側にはタッパの違いがある。

 おまけにトロルキングは腹にでっぷりと肉がついており、足下はかなり見づらくなっている。


 屈みながらこちらの姿を見えづらくし、足下を移動しながら着実に削っていく。


 上手く移動と攻撃を織り交ぜながらやれば、こちら側が被弾することなく攻撃を続けることが可能だった。


「悪いが……勝ちに行かせてもらうぞ!」


 カーミラとのやりとりを見ていてわかったが、こいつに真っ向からパワー勝負を仕掛けるのはあまりにも愚策だ。

 恐らく今の俺より力がある彼女でもダメなら、やり方を変えるしかない。


「―――おおおっっ!!」


 ダメージをしっかりと蓄積させていく。

 こちらは一撃でももらえば大ダメージを受けてしまうのだから、まったく気が抜けない。


「アクセルスマッシュ!」


 俺が戦っていると、トロルキングの背後から声と共に衝撃が伝わってくる。


 無防備なトロルキングの背を吹っ飛ばしたのは、戦線に復帰したカーミラだった。恐らくだがララに怪我を治してもらったのだろう。


 二対一であれば大分余裕もできる。

 先ほどとは異なりカーミラも力勝負ではなく、しっかりと相手の攻撃を見極めて適切な判断を下してくれている。


 彼女が時間を稼いでくれたおかげで、攻防を繰り返しながらでも発動準備に必要なだけの十分な時間を稼ぐことができた。


「これで……トドメだッ! サンダーロード・オーバーライド!」


 上級雷魔法、サンダーロード。

 雷雲を発生させ、そこから巨大な雷を落とす、現在の俺が持つ最大火力の攻撃魔法だ。


 オーバーライドを使い威力を上げたサンダーロードは、光の柱を思わせるほどに巨大な雷を見事に落としてみせた。


「BU……OOO……」


 俺とカーミラの猛攻を受けていたトロルキングがゆっくりと地面に頽れ落ち……そして二度と、起き上がることはなかった。


「トロルキング……討ち取ったり! 勝ち鬨を上げろ!」


「「「うおおおおおおおおお!!」」」


 こうして俺達はトロルキングを討伐し、統率が乱れたトロル達を着実に討ち取っていくことで、無事アマゾネスの集落を守ることに成功するのであった――。

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