表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/56

メイドのララ 後編

【sideララ】


「「「了解した!」」」


 戦士階級として狩りを生業としているだけのことはあり、彼らはすぐに私の意図を汲んでくれる。


 迫ってくる狼に対処するため、まずは光魔法を発動。

 やられている男達と狼の間に障壁を生み出し、接近を防ぐことにした。


 中級光魔法、エクセレンスバリア。

 喉元に噛みつきその命を刈り取ろうとしていた狼の魔物が、突如として空中に現れた障壁に阻まれて止まる。

 ただ、狼の数は多い。


 第二陣第三陣と複数体でやってくる狼達を全て受け止めるためには、連続して魔法を使い続ける必要があった。

 精神を集中させ、大量のエクセレンスバリアを使うことで狼達の襲撃を防ぐ。


 その間に私の意を汲んだ無事な戦士達が、バリアに守られながら怪我人達をこちらへと運んでくれる。


「こちらへ!」


 私が応戦をしながら彼らを誘導している間に、あちら側も動きがあった。


「GARUU……」


 自らの配下達の不甲斐ない様を見たからか、後ろで見物をしていた金色の狼がのそりと一歩前に出たのだ。


 嫌な予感がした私は、即座に魔法を展開させた。

 次の瞬間、目の前にいたはずの狼の姿が消える。


「ホーリーシルド!」


 怪我人を含めた人員の全てを私の背後に下がらせている。

 なので私達全体を守れるように半球状に魔法を展開させた。


 上級光魔法、ホーリーシルド。

 城壁から打ち込まれるバリスタすらも止めるだけの高い防御力を持つバリアは、目の前に突如として現れた金色の狼の突撃を受け止めてみせる。


「GYAN!」


 鼻っ柱から障壁に激突することになった狼が、わずかにうろたえる。

 金色の狼がわずかに怯んだ隙を見逃さず、私は即座に空へライトアローを打ち上げました。


 恐らくこれで、ヴァル様にも異変があったことを教えられるはずです。


(しかし……何という敏捷性でしょう)


 こちら目掛けてやってきた金色の狼の突進を、しっかりと止めることはできました。

 けれど見ればあらゆる外側からの干渉を防ぐはずのバリアが、わずかにたわんでいるのがわかります。


 迷わず上級魔法を使って良かった。

 中級魔法のままでは、まず間違いなく防御を突破されてしまっていたでしょう。


 私は即座に再度ホーリーシルドを再展開。

 二重三重に防御を固める形で光のシェルターを作りました。


 上級魔法は、その使用に必要な魔力も少なくありません。

 何度も使っていれば、すぐに限界が訪れます。


「けれど私はどこまでも尽くす侍女。待つことに関して、私の右に出るものはいないのです」


 私は即座に胸の谷間に手を入れ、取り出した種をガリリとかじります。

 すると胸の奥の辺りにあった重たい感覚が消え、清涼感と共に力が湧いてきます。


 スキル、魔力の種。

 自身の魔力を種という形で貯めることができる力です。


 余った魔力は全て種にして持ち運ぶようにしているため、現在の私にはまだまだ魔力的な余裕があります。

 集中力さえ保つのなら、数分と言わず何時間でも障壁を張り続けることができます。


「GARU!」


 金色の狼の号令に従い、銀色の狼達もこの障壁へと突撃をしてきます。

 けれどどれだけ攻撃をされても、障壁はわずかにたわむのみ。


 数分の格闘の後一枚を割ることができても、その内側にはまだまだ大量の障壁が展開されています。


「GAAAA!!」


 何度も攻撃を加え、こちら側を倒すのは不可能と悟ったのでしょう。

 金色の狼の視線が我々ではなく、その後ろにある恵みの里へと向きます。


(これは……まずい展開ですね)


 現在の私は、障壁の展開して自分達の身を守ることで精一杯。

 このまま里に入ろうとするのなら、危険を覚悟で障壁を解除して直接相対するしかないでしょう。


「そうはさせないのです!」


 覚悟を決めて障壁を解除しようとしたタイミングで、遠くからやってくる影が。

 よく見ればそれはナナさんでした。

 おそらく話を聞きつけ、急ぎやってきたのでしょう。


「GAAU!」


 金色の狼がのそりと前に出ました。

 マズい……いくらパワーレベリングをしたとはいえ、今のナナさんでは分が悪い。


「ナナさん、逃げて――」


「大丈夫、なのです。里の皆は……ナナが、守るのです」


 ナナさんはそう言うと、両腕をクロスさせながら天を仰ぎました。


聖獣解放(ザ・ビースト)


 目映いほどの光に思わず目を閉じます。

 そして再び目を開いた時……そこには見事な毛並みを持った、一匹の金色の虎の姿がありました。


 先ほどの様子から考えれば、それが何者なのかは考えるまでもありません。

 そして金色の狼と金色の虎は、激突を始めました。


「おぉ、聖獣様のお力を……」


「さすがナナ様だ……」


 攻防は一進一退、お互いの強さはおよそ互角であるように見えます。

 彼らが攻防を繰り広げる中、なぜか後ろにいる獣人達が感動していました。


 一体どういうことなのかはわかりませんが、今はそんなことを気にしている余裕はありません。


「ライトジャベリン!」


 金色の狼が居なくなった分余力が出るようになったので、その余裕を使って銀色の配下狼達を討ち減らしていくことに注力します。

 皆を守りながらであっても、中級魔法程度なら行使が可能です。


 そして私の魔法にそこまで威力の高いものはありませんが、銀色の狼であれば問題なく対処は可能でした。

 狼達の意識をこちらに集中させ、里に目を向けさせないことも忘れません。


 幸い金色の狼を除けば知能はさほど高くはないらしく、上手いことこちらに注意を惹き付けながら着実に数を減らしていくことができました。

 けれどある程度数を減らしたところで、戦況に動きが。


「GURAAAA!!」


「ガルルルッ!!」


 ナナさんが変身したと思われる虎の形勢が、不利になり始めていたのです。


 身体能力は同程度のようですが、ずっと狼として生きてきた魔物と変身して四足歩行になったナナさんとでは、差が出るのも当然のことかもしれません。


「ナナさん、援護しますっ!」


 私はナナさんの援護に徹しながら、自分達の身を守ることに専念することにしました。

 けれどそれでも状況は徐々に我々に不利になってきます。


「ああっ、もうダメだッ!」


「姫巫女様で勝てないのなら、俺達はおしまいだ!」


 首を動かして後ろを確認してみれば、そこには絶望の表情でこちらを見つめている怪我人達の姿がありました。回復魔法を使っている余裕もないので、怪我はそのままにしています。

「おしまい……なわけがないでしょう」


 私が張った障壁を、金色の狼の突進が破ってみせる。けれどその時には既にナナさんは場所を移しており、障壁を足場にして狼の胴体へ爪の一撃を放つ。


「私達が負けるはずがありません!」


「なんで……なんでそんなことが言い切れる!」


 金色の狼はこれを避けようともせず、ナナさんの一撃をそのまま腹で受けた。


 毛皮が大きく裂け血が噴き出すが、かわりに攻撃直後のナナさんは完全な無防備。


 そこ目掛けて狼の噛みつき攻撃が襲う。

 咄嗟に障壁を張るが、その牙がバリアを貫通しナナさんの喉元に突き立った。


「グウウウッッ!!」


 傷口から血が噴き出し、虎の顔が苦悶に歪む。

 そのまま身体を振り回し狼へと牙と爪を突き立てるが、狼は決して口を離しはしなかった。


 数分にも思える格闘の後、ガクリとナナさんの身体から力が抜ける。


 そして再び強烈な閃光。目を開けた時そこには、一糸まとわぬ姿で地面に倒れるナナさんの姿があった。


 狼もまた傷だらけではあるが、未だその瞳はギラギラと輝いている。

 その牙がナナさんを貫こうとした刹那――紫電が、狼の身体を貫いた。


「待たせたな、ララ」


「いえ」


「それとナナもか……ゴールデンウルフ相手に時間を稼ぐとは、想像以上だ」


 現れたのは、全身に雷を纏わせたヴァル様でした。

 そう、たとえどれだけ劣勢な状況であろうと、私達が負けるはずがないのです。


「後は俺に任せて……ゆっくりと休んでおけ」


 だって、私達には――ヴァル様がついているのですから。

【しんこからのお願い】

この小説を読んで

「面白い!」

「続きが気になる!」

「ヴァル!!」

と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!


あなたの応援が、作者の更新の原動力になります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ