3-3 iloveyou
月が綺麗だね、と一輝は佳祐に言った。
二人で歩いて帰る道。寒さはあるものの、澄んだ空気に、月や星が輝いている。よく晴れた夜だった。
昔、学校からの帰りに、一緒に歩いた道を帰る。
「みんな元気だったよね」
「あぁ、特に石田と堀川が結婚したのはびっくりした」
「ねー、高校の時からだって。気づかなかった」
そんな事を話しながらも、美波の話題は出さない。一輝も深くは突っ込まなかった。
佳祐の実家の前まで来た。写真館は電気が消えていて、実家の方に明かりが灯っている。
「じゃあ、」
良い年を、と言って別れようとした一輝の手を、佳祐が掴んだ。
「その……今、ちょうど撮った写真を、おやじの作業場借りて編集してたから、見ていかないか?」
「いいの?……見てみたいな」
と、一輝は頷いた。
佳祐はキーケースから鍵を出して、写真館のドアを開けた。
「わー、なんか久しぶり」
夜の写真館。照明をつけると、今日の撮影に使ったのか、明日の予定があるからか、白い階段風のセットがされている。美波の前撮り写真を思い出した。
「仕事納めの後も、撮影あるの?」と佳祐を振り返った一輝は、そのまま佳祐に抱きしめられた。
顔が近づいてくる。
触れるだけのキス。
唇が離れたあと、目を見返すと、佳祐は「ごめん」と少し俯いた。
自分からしておいて、何かを考え込むようなその様子に、一輝は苦笑した。そして自ら佳祐の首に腕を回す。
一輝はまっすぐに佳祐を見て言った。
「……おれはずっと好きだったよ」
佳祐はその顔を見つめた。
まるで、その一瞬を捉えて、自分だけの記憶の中に現像するように。
【はじめからずっと】
ー了ー
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