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第8話:黒き部族らに味方してる白き女達!

ピカ―――!

「はあー!」


訓練に使う谷間の奥で素早くリロード用のルーンを組んでいる最中、背後からタジリの声が聞こえてきたー!


「いつも見てるんだが、お前の肌…本当に変わってるな。砂漠でいろんなものを見てきた。砂の下に燃える炎、青空からの嵐…でも、お前みたいな真っ白い肌は初めて見た......」


僕は回転の途中で動きを止め、魔導拳銃の引き金を引きそうになった。

「~え、なにそれー?」


彼は僕の目を見ようともせずに続けた。


「月明かりみたいだ、お前の肌は。前は気づかなかったけど…今は、見るのが好きだと思う...」


……えっ、ちょっと待って。今のって――告白~!?


脳内の歯車が高速で回る。

顔が一気に熱くなって、思わず襟を引っ張って顔を隠した。

くそ、この色白、すぐ赤くなるのごかませないから、こういう時だけ嫌なんだよー!


「じゃあ、僕のこと、...好きってことぉ~?」

ちょっと声が裏返った。


タジリはまばたきを一つ。

「いや、......お前の白い肌を見るのが好きなだけだ」


……は?


一瞬で赤面が消えた。


「……は?」


「光ってるみたいなんだ。...不思議だけど、悪くない...」


僕は死んだような目で彼を睨んだ。

「それ、褒めてるんだと思ったー?...雰囲気づくりしてそれはないでしょー?もう~!...で、次はあんたの小屋に小麦粉でも撒いておこうか?そしたら白くなった『ホワイトフェース』になったあんたに、僕が感じたついさっきの感覚をそっくりそのままあんたに返してやる~!あんたの白い顔が好きだ~って!」


タジリはくすっと笑った。

「褒めたつもりだったんだがな、あははは......」


「うん、それ、次は顔に出して言って」


でも正直、心のどこかで嬉しかった。

違う世界から来た彼に、ちゃんと「見られた」って感じた。


不器用だったけど、悪意じゃなくて、まっすぐな言葉だった。


..................................


その日の午後、ついに念願の「女子タイム」がやってきた。


ニアが穏やかな笑顔で僕を川辺の木陰に案内してくれて、アベニがついてきた。


ニアは僕の腕に灰色の神聖な模様を描きながら、アベニは僕の銀髪を器用に編み始めた。


「動かないで、雪頭。固すぎる...」

アベニが髪をぐいっと引っ張る。


「いった!石なんか髪に結んだことないってばー!」


「石じゃない。スピリットストーンだよ?」

ニアが優しく訂正する。


「はいはい、スピリット岩、了解ー、ふふははは~!」


文句は言ってたけど、気づけば僕は声を上げて笑っていた。


二人は古い歌を教えてくれて、意味不明な言い回しをいろいろ伝授してくれた。


恋愛儀式の中にはヤギを使わないものもあってホッとした。


お返しに、僕は『アフタヌーンティー』について説明してみた。


「香辛料も肉もないの?」

アベニが目をぱちぱちさせる。


「うん、小さいサンドイッチとお菓子だけ~」


「「「........」」」

沈黙。


アベニが眉をひそめた。

「それ、食事じゃなくて…鳥の餌じゃない?」


僕たちは笑い転げていた。

そこへマコノが突然飛び込んできて、僕を指さした。


「また魔女の円を腕に描いてるぞー!」


「これはペイントだよ、砂バカ!」

アベニが叫ぶ。


「きみは嫉妬してるんでしょー!私が預言者だから!」


「そのまま幽霊になりたいの、あなたー?」


「雷の魔女よ、こやつらを追放せよー!」


僕は顔を手で覆った。

「僕、狂人共に囲まれてる…」


でも――なぜか、嫌じゃなかった。


.................................


その夜、静けさは破られた。


「フ――――――――!!」

鋭い口笛が、砂漠の外れから響いた。


タジリも僕も、戦士たちの半分も食事を放り出して立ち上がる。


「斥候だー!」

誰かが叫んだ。


僕は考えるより早く動いていた。魔導拳銃が自然に手に収まり、青いルーンが閃いた。

パチ―――――――!!


狙いを定めて引き金を引いて一撃を。

バ――ン!!

遠くの敵が、胸に穴を空けて倒れる!


もう一人が逃げようとした。

タジリが槍で足を突き刺し、僕が駆け寄って顎に蹴りを入れた。

バキ—―!

「があーッ!?........」


でも――ひとりだけ、峡谷の影に逃げ込んだ―――!!


砂ぼこりを上げながら、そいつは稜線の向こうへ消えた。


タジリが低く唸る。

「奴はここへ連れてくるぞ。本隊をー!帝国兵が我々のいるここの位置に気づいたから――!」


僕は沈みゆく空を見つめ、拳を握った。


「じゃあ――迎え撃つしかないねー!」

僕はそう、控えめにだけど、叫んだ。


.................................................


その夜:


僕は評議会の石輪を鋭く歩き回っていた。

がー、がー、がー!

ブーツが砂に固められた石の上で音を立てるたび、腰の魔導拳銃が振り子のように揺れた。


まるで戦の刻限を刻むかのように。


タジリと長老たちが沈黙してる中、やがて僕の方を見てきた。


「奴らは戦闘部隊を送ってくる。下手をすれば2連隊。訓練された兵士、統率された行動、統一された装備。帝国軍に『次』はない」


タジリの顎が引き締まる。

「それでも、我らは立ち向かうんだ」


「立ち向かうだけじゃ足りない!」

僕は思わず声を荒げた。

「人数では劣ってるぞ、僕らは。...向こうが2連隊の2000人なら、ここの部族の我々の総力数である400人では5倍以上の兵力で劣ってるー!そしてこっちは、戦士ばかりじゃなくて村人の方が大半ー!」


僕はチョークを取り出し、地面にひざをついた。

砂上に粗い地図を描きながら説明する。


「なら、数の差をものとしない戦術で地形を利用するぞ!ここ、ここ、それからここに罠を仕掛けるんだ」


数日前、タジリと共に偵察した峡谷の狭間をあっちこっちで見て回っていたのでここら辺の地理は既にある程度を把握できた。

「落石、魔法罠、棘の穴。私は岩に魔法陣を刻める。結界も衝撃波も作れる......」


「お前にそんなことができるのかあー?」

長老オヤマが懐疑的に眉をひそめた。


「時間と空間さえあれば、できるぞ?僕は『魔導射撃教師』のオルランデ師に師事し、首席を常にキープしてきました。三日ください。この峡谷を『噛みつくお化けの渓谷』にしてみせるよー!」

実際に、一年生になってから半月経ってきたんだけど、いくつもの射撃訓練テストに参加してきた我々学院生の中、僕だけいつも1位の座を保ってきたのが事実だ。だから僕の戦闘力の高さは最早疑いようのない不変な事柄だ。


タジリは腕を組み、真剣な眼差しで僕を見つめてきた。そして一度だけ、ゆっくりと頷いた。


「ならば――日の出から始めよう!明日の明朝からー!」


........................................................................


............................


会議が行われる前に、同日の昼過ぎには、遥か南へ、赤い砂漠と腐敗した帝国との国境地帯にある村々を越え、果てしない森の霧が梢を撫でるそこからもっと南方の遥か森林地帯の奥へ――!:


.......................


死しか存在しないはずの場所で、何十人の命が目を覚ましたー!


陽光が木々の隙間から木漏れ日を作りながら差し込み、開けた空間に灼熱の光が強烈に降り注ぐー!


そこには十数人の戦士たち。肌は黒く、部族の装束は破れ、血に染まっていた。

かつての戦で命を落としたはずの者たち...


だが今、彼らの身体に傷はなく、呼吸をしていた。

確かに――生きている!


彼らのまぶたが静かに開く。

それを導いたのは――一人の煌びやかな服を着ている金髪の不思議なオーラと豪華なドレスを身に纏う少女の声。


優雅で、気品に満ち、磨かれた大理石のように硬質で、それでいてベルベットのように柔らかい声だった。

「そなたらは、もう『死者』ではありません!」


彼女は太陽光の中に立っていた。魔術を発動中か、白い肌が焼かれずに平気なままだ。


挿絵(By みてみん)


深い紫色のドレスに黄金色の装飾が施され、呼吸のたびに魔力の糸が微かに煌めく。


その髪は金色にして王族らしさが滲み出てきて、完璧なウェブ髪となって肩に曲線を描いて流れ垂れている。


金色と紅色を模した豪華な冠みたいなティアラが、その額に輝いていた――!!


彼女が手を上げると、呻いていた戦士たちは静まり、次第に正気を取り戻していく。


「私はヴィレルス王国のエヴァンジェリンヌ第一王女—!」

その声は威厳を秘めながらも、優しさを失わない。


「そなたらは私を知らないし、私の国もそなたらの地と交わったことはありません。私たちの土地は遠く、寒く、誇り高く、そなたらの地図には描かれていない、本当に預かりしれぬところです!」


彼女はゆっくりと彼らの間を歩いた。

金に作られた黄金色の高級なハイヒールは苔の上を音も立てず進むー!


「けれど、私はそなたらの嘆きを見てしまいました。帝国軍がそなたらに何をしたか――虐殺、抹消、火と鋼の傲慢ー!」


一人の長身の男が深く頭を下げた。

「我らは…死んだはずだ…」


「そう、そなたらは死んでいましたわ」

エヴァンジェリンヌは頷く。

「けれど、私はそれを覆したように、忌避された魔術でそなたらを死の淵から蘇らせました!」


彼女は両手を広げた。

その掌から、淡い光が咲く――――!!


氷のような蒼と、霞む藤のような紫――神秘的で、美しく、どこか冷たい光―!


「私はある禁術を学びました。かつて母の王朝が封じた、氷に閉ざされた古の儀式を。すべてを賭けて!そなたらを救うだけのために!」


ざわめきが広がる。

畏怖、驚愕、そして――敬意。


長身の戦士が恐る恐る尋ねた。

「なぜ…我らを?」


王女の目がわずかに細められた。


「帝国は滅ぶべきですから」

その声に、鋼のような意志が宿る――!!


「だが、内部からでは倒せない。剣でも、政治でも無理。帝国を滅ぼせるのは――、彼らが忘れたはずの襲撃した村々!彼らが焼き払い、捨てた灰の中から蘇った焔たちだけなのです!」


彼女は一歩引いて、膝をついた戦士たちを見渡した。


「そなたらは正に、その『焔たち』なのです。対等な存在として見られず、受け入れられず、だが決して消えなかった。...帝国の人間に、そなたらがただの蟻か何かとしか見られなかった......」


彼女は背を向け、森の木々に向かって手を上げた。

そこには浮遊する魔法陣――雪のように、凍てついた時の中に漂っていた。


「でも!今すぐ立ち上がりなさい。壊されていた全てを、これから再び築き上げるのです!」


そして、凛とした佇まいと声で、続くエヴァンジェリンヌ王女!


「帝国がそなたらの旗を再び空に見たとき――やつらは思い出すでしょう。......かつて消そうとした部族の『名』を!それもー!」


その声は、王族の刃のように鋭く、空気を切り裂いた。


「やつらは、そなたらの『キワマシ部族』の事を思い出す時がくるでしょう。今度は、復讐に燃える黒虎として―――――!!」


森の静寂が、祈りとも咆哮ともつかぬ唸りに満ちる!


蘇った黒い肌の戦士たちは、地に足を踏みしめ、燃える眼差しで白い指導者の導いてくれる新たな未来の可能性を見据えたー!


遠く離れた北の砂漠では、リゼットが罠を仕掛け、岩に魔法陣を刻んでいた。


だがその遥か南、深き森の奥で――!

忘れられし焔が、再び灯った。


これからの物語に、二人の『ホワイト・セイビア』と呼ばれることになる、高貴なる出自を持っている白い肌の女性たちが黒い肌を持っている部族を勝利に導く英雄譚が始まる!


全ては、帝国軍を撃ち滅ぼすがために、運命の歯車が動き出す!

そして、その『焔たち』は――誰も飢えている目をしているー!


「「「「「「ううおおお―――――――!!!女神様が降臨してきたのだー!我々の恨みと無念を晴らしてくれるために、空から降臨してきた『太陽の金白女神様』が―――――――――!!!」」」」」」


「「「「「「これから、忌まわしき帝国軍兵らに目に物を見せてやる――――――!!!」」」」」」

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