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第4話:絹、社交界、そして魔弾...

翌日:


琥珀色の朝日が渓谷に降り注ぎ、僕はタジリの傍らで猫のように伸びをした。腰に下げた拳銃は、ホルスターの中でゆらりと揺れる――半分はステータスシンボル、半分は戦場の脅威。そこにあるのが自然だった。


タジリの声が静寂を破った。

「ずっと気になっていた...」

彼は目を細めた。

「お前の話し方は兵士のようだ。戦い方も。だが、俺が出会ったどの戦士とも違う」


僕は瞬きして――、そして鋭い笑いを零した。

「ふははー!」

ガラスさえ割れそうな、そんな笑い方。


「あら~、僕は兵士なんかじゃないぞー?本物のな。...僕なは、ただの脱走貴族令嬢で、ドンパチ好きってだけのおとこ女だぞー?」


彼は眉を上げた。頭の上に疑問符が浮かんでいるのが見えるようだった。

「貴...族?あの、...帝国が抱えていそうな『上流階級』って偉い者の、国の頂点近くに君臨している族長みたいな者?」


僕は大きな平らな岩の上にごろんと寝転がり、足を組んだ。

「ええ...あんたの部族の族長ってものが何十人、南百人もいそうな社会的権力者は『貴族』って言うんだぞー?どうだろうどうだろうー?小さな未開部族より規模の大きな話だろうー?ふふふ...」

半分は笑み、半分は思い出に浸りながら。


「大理石の館。シルクの天蓋付きベッド。夜になると子守唄を歌う噴水。噛む前に溶けるような柔らかいケーキ。お風呂なんて言わないで――バラの花びらと魔法の蒸気つきの、プライベートプールみたいなものまであったぞー」


「ふーむ」

彼は腕を組んだ。

「そんな場所を捨てて、ここへ来たのか?」


僕は空を見つめた。

「選んで捨てたわけじゃないぞ?他の公爵家の息子と結婚させられそうになったんだ。手は柔らかく、顎は弱々しく、ラベンダーオイルと臆病さの匂いがした男」

起き上がり、目を輝かせた。


「『宮廷でお茶をすすって優雅に振る舞う』タイプの女じゃないんだ、僕は......。だから逃げたいという強い思いがあったからか、いきなり何かの魔法的な現象でここへ転移させられてきたんだー。装備と史上最高の魔導拳銃を手元に持ったままここへ...」


「......」

タジリはしばらく黙っていた。


「あの公爵令息なんか、庭園パーティーに魔物が現れたらどうすると思う~?ふふふ...」

僕は笑いながら言った。

「謝ってばかりでろくに戦えもせず死んじゃうんじゃない?」


「あぁ~はははは......」

彼はふっと困ったような笑いを漏らした。ほとんど笑みといっていい。やっぱ見知らぬ奴でも同じ男だという点で他の同性を悪く言われて聞かされるのが複雑な気持ちでいた様子だな...


「絹から逃げられるなんて...」

彼は呟いた。

「幸せ者だな、お前は...」


僕の笑みが少し薄れた。

「そうだね……しばらくは......」

立ち上がり、拳銃の安全装置を切りながら。


「でも、遠くへ来れば来るほど、ドレスも粉飾されたパーティーも、恋しくないって気づくんだよ?」

彼を見つめたそう言った。


「ここでは、僕は僕でいられる。そっちの方が、ずっと好きだぞ」


訓練場――と言っても仮設の、へと歩き出した。木箱、壊れた像、焦げた草。完璧だ。


「さて」

肩越しに声をかける。

「本番の時間だよー!」


拳銃を抜き、手のひらで一回転させ、刻まれたルーンに指を滑らせた。

『ネクラ・クライルヴィス』-!

囁くように唱えると、最初の紋様が青く輝き始めた。銃は息を飲んだように震える。


姿勢を整える。膝を曲げ、視線を固定。

そして引き金を引く――!

ドカン!


バコココ―――――――――――――――!!!

衝撃波が飛び、石柱を真っ二つにした。

フシュ――――――――!!

煙塵が舞い上がる。


「ハッ! 真ん中だぞー!」


タジリが僕を見ている。感じた。


ただ見ているのではなく――観察している。そして多分……少し感心したー?


だが彼も気づいた。

「最後のルーンがまだ不安定みたい?」


額の汗を拭い、拳銃を睨む。

「まだ最後の紋様を安定させられないみたい~!」


「焦っている?」

彼は僕の傍らに立った。

「息をさせろ。弓を引く狩人のように」


横目で彼を見る。

「おや? 僕に指南するんだいー?」


「手助けしたいだけだ」


笑みながら彼の背中を叩いたー!

「まあ、タジリ。僕たち、打ち解けてきた?」


彼は答えなかった。だが一瞬だけ――笑みの兆しが見えた。


太陽が高くなるまで訓練を続けた。

拳銃の銃身は湯気を立て、ルーンの輝きは弱まっていた。腕は痛い。


「わかった、わかったよ。教訓を得たって感じね~」

息を切らしながら。

「魔法の殺人マシンだってお昼寝が必要なんだね」


村へ戻る途中、僕は渓谷の向こうの崖を見やった。

何も言わなかった――だが何かが僕を苛んだ。これはもう、ただの派手な脱走劇じゃない。世界は微笑みの下で軋み始めている。


僕の拳銃。僕の魔法。僕の頑固さ。


それだけでは足りないかもしれない。


でも今は?

タジリを笑わせることができた。


それだけで、勝利のように感じられたぞ!

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