第2話:白い肌のガンガール
数時間後:
タジリは、まだ私を信用してない顔しているな。
まぁ、無理もないかー。
この灼熱の地で、《ルーメン・テゲレ》による恩恵で肌が焼けもせず、真っ白なままの外人が村で住むことになればなあぁ...
それに、見たこともない魔法の銃を持ってるんだから。
現れてきて一日も経たぬ内に信用しろと言った方が無理な話だ。
「ひそひそー、ひそひそー、......」
村人たちの視線が痛いほど突き刺さる。
でも、誇り高きアルジャンティエ公爵家の令嬢である私は気にしないつもり。
ルネヴァル学院での窮屈な生活から抜け出し、ここで自由を手に入れたんだから。
祖国では貴族の娘として、礼儀作法や婚約者の話ばかりだった。
そんなの、もううんざりだぞ!
今の私は、砂漠を駆け巡り、魔物を狩るガンガールになる!
狩りの帰り道、タジリに向かって言った。
「今日の獲物、4体だったぞー?鹿みたいなの2頭、角のあるトカゲ1匹、でっかい鳥1羽...。なかなかやるだろう、私ー?」
得意顔で言った私。
「...」
タジリは無言で頷くだけ。
「まったく、もうちょっと反応してくれてもいいのにな...」
雰囲気づくりに、憮然とした顔を浮かべたみた私が文句を垂れた。
本気でイラついてる訳ではなかったので、ただの場限りでの軽口のつもりだ、ふふふ...
「ひそひそー」
村人たちは、私のことを「白い悪魔」と呼んでることが聞こえてきて、そう扱うような目で見てる。
でも、何があっても気にしない。
だって、ここでは誰にも縛られず、自分の力で生きていけるんだからなー!
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その夜、村の端にある私用に充てられたテントで休んでいた。
銃を私の手が伸ばせば届く範囲に置き、横たわってうとうとしていると、外で何かの気配がした。
タタタタ......
足音が近づいてくる。
テントの入り口がそっと開き、若い男が忍び込んできた。
奴の目は、私の銃に釘付け。
極黒肌してる未開部族の男が銃に手を伸ばした瞬間、私は彼の手首を掴み、力強く捻った。
「痛っ~!」
彼が叫ぶ間もなく、私は彼を床に叩きつけ、膝で男の真っ黒い胸板を押さえつけたー!
「おいおい、何してるんだー?私の魔導拳銃を盗もうとしたのかなあー?だったら残念だな、ふはは~!」
「くっそー」
彼はもがきながら毒づき、私の足を掴もうとした。
バコ――――!!
その瞬間、私は彼の顎に膝蹴りを食らわせた。
「がっ~............」
彼は呻き声を上げ、動かなくなった。
ザワザアー!ザワザワー!
テントの外から、村人たちが騒ぎを聞きつけて集まってきた。
「何事だー!?」
タジリも現れ、男の胸の上に跨ってる私と倒れた男を交互に見た。
「この男~、私の銃を盗もうとしたんだ!さらに、...銃を本当に奪えたら『良からぬこと』もしようとしたかもしれない!」
「「「「.......」」」」
村人たちは沈黙し、私を見る目が変わった。
銃だけでなく、素手でも戦える私を、より一層恐れるようになった。
「ふふふ......」
でも、私は笑みを浮かべた。
「私を甘く見るでないぞー?銃がなくても、あんた達全員、同時に襲ってきても返り討ちにできるんだからなー?ふはははー!」
豪快な笑いしてる私はそう挑発した。
部族内での友情は『支配』と『恐れ』だ。
ここでの生活を満足に過ごしていくために、まずは私のことをそういうふうに見てもらって、認めさせる事が先決。
(力こそが全てだからな、部族ってものは......)
その夜、村には新たな噂が広まった。
「白い肌のガンガールは、素手でも最強だ」と。
そして、男勝りの私はやっと、トムボーイらしい言動が板についたような感じになってるんだった!
なんなら、一人称を『僕』に変えるべきかー?
ここの私は、もはや貴族令嬢としての礼儀作法で縛られなくなったんだぞー!
自由に何でもできちゃうぞー!ふふふ~!あ~はははははー!
本当に最高だね~ここは~!
これぞ『僕』がずっと待ち望んでいた大冒険の体験さあー!
ドレスを着て社交場でダンスするよりも魔物の頭を銃でぶち抜け動物狩りで食料調達した方が色んなものを撃ててストレスフリーな生活ができるぞ!
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