表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/43

6:滞在中はお勉強予定です

 聞きたい事もある程度質問できたので、ここからは少し雑談混じりに話をする。


「ところで、ホウジョウさんは各国で人族と亜人族の関係改善をって話でしたが、実際はどんな事をされたんでしょう? 恐らくは名前から同郷の先輩に当たるだろうし気になります」


「んー、と。例えば、この世界のルミス王国に来て直ぐに王家に乗り込み謁見し、各地の盗賊壊滅に貢献! そのついでにバニス聖国の人間が亜人排斥運動を性懲りも無く広め続けていたのを捕らえ牢へ! 次に亜人排斥による強制奴隷を行っていたバニス聖国に独断で潜入! 潜入後に現地の協力者を増やし、各地の労働奴隷施設の襲撃、特異魔法による制裁で改変された人族至上主義の教典狂信者を消し去る! 開放によって奴隷魔具による強制奴隷となった亜人族を救済。更に数を増やして聖国の管理下にあった10代の聖女を救助! 上げればきりが無い程の噂や伝説があるよ。リプレイユ帝国でも政変を勇者と共に等々、暗躍から実行まで参加されてた凄い方なんだ!」


 饒舌に英雄譚を喜々として語ってくれるエリ女史。


 え?15年前に召喚されてルミス王国で活躍し、その勢いで一気に数年間で聖国と帝国を手にかけたって事?

 そこまで小さくない3大陸だけど、どんな早さで行動して行ってたんだ…


「まぁ、ホウジョウ様も全ての奴隷労働施設を破壊した訳ではないし、帝国に関して言えば腐敗した有力貴族達が違法奴隷にしてたのを皇帝の首を据えかえて強制的にって感じだから……帝国はガッツリ暗躍だね! ただ、ホウジョウ様もそんな短期間で行っていったから、今もなお活動を続ける亜人排斥運動一派が居るんだよ。ホウジョウ様が活躍する前と後じゃ大分世界の在り方は変わったけどね! 不平不満がない世の中じゃないから、心の弱った人に漬け込んで巧みに操り狂信者となってるのさ」


「ホウジョウ”さん”とか気軽に呼んで良い人じゃないな……正しく英雄、神に遣わされた転生者だ……」


 机に肘を置き、うなだれた顔を両手を組んで支える。


「あはは、転移してきたって知ってるボクや院長なら平気だろうけど……外でその敬称は怪訝な顔をされるかもね? 場合によっては、怒鳴り込んで殴られるかも?」


 少し脅かすようにエリ女史は言う。


「お、脅かすのはやめてくださいよ……人と話す時はホウジョウ様に変えていきますよ……」


「ふふ、そうするといいよ! まだまだホウジョウ様と出会った人達が沢山いるし、直接助けられた人達なんて尊敬どころじゃ済まないからね。ルミス王国は元々、人族と亜人族の国家がくっついてできた国。亜人排斥も西側沿岸部に広がるかどうかで被害もほぼ起きてなかったからホウジョウ様への尊敬も比較的緩いだろうけどね」


 改めて自分との違いが……というか……15歳って高校生だ……

 そんな歳だからこそ出来る無茶もあるんだろうが、壊滅までに血とか中身とか見たら動揺して吐きそうだぞ……

 私なら危険な状況の他大陸に行こう、なんて言えないだろう……


「まぁ、ジヒト君も、もしかしたら一角の人物かもしれないよ? 明日から邸宅にいる執事長に魔法でも教えてもらってみようか!」


 魔法か……

 正直、文明レベルは少し不便を感じるかもしれないけれど、盗賊やら奴隷やら過激派やらといるし……

 自衛の為にも覚えておこうか……


「よ、よろしくお願いします」


 暫くはそんな雑談をしながら時間が経過し、エリ女史が話を区切り告げる。


「では改めて、ヘルアタック家へようこそ、ジヒト・ホウジョウ君!」


 その後、エリ女史が執務室へメイドを呼び、自室を案内、続けて食堂にて用意された食事を済ませる。


 今日はもう疲れたな、と部屋へ戻りベッドに横たわる。

 突然に転移され、気付けば領主の邸宅で客人。

 明日からは魔法の鍛錬。

 疲れていなければエリ女史が語らなかった部分等を書物で見識を深めたい。


 しかし、こうして落ち着いて考えていても、不思議と、元の世界である地球、日本への帰還ができなくても問題ないか、という気持ちがある。


 元の世界では勿論、両親、友人、職場もあったのに……

 今頃、私が消えた事で、もんだ、い、で、も……


 ジヒトは徐々に眠気に支配され、考え事も途中のまま眠りについた。


……


夢の中で呼びかける声が聞こえる。

「……きて……ねぇ……おき……」


 色々あって疲れたんだ。寝させてくれ。


「起きろって、言ってんでしょうが!」


顔を殴られた感覚の後、意識が急速に落ちていった。


「あ、うそ!? ちょっと、ちょっとま、待ってー!?」


……


 ムクリと起き窓を見れば、雲1つない快晴。

 朝の陽が差し込みだし、清々しい天候、気温になるだろう事を私の体に伝えてくる。


「ふぁあ……昨日はあれから寝てしまったのか……随分と気持ちよく寝られたな……無意識に掛け布団に包まって寝たのか」


 つぶやくと部屋の扉をノックされる。


 まだ早い時間なはずだ。それに私がつぶやいたのが聞こえていたのでは……


「どうぞ」


「失礼致します。当邸宅でメイド長のテナシーと申します。昨夜は良くお休みになれましたでしょうか?」


 メイド長テナシーは入室しお辞儀をすると背筋をピンと伸ばして言う。


「えぇ、しっかりと休めました。それでどういった用件でしょうか?」


「起床されたようですので朝食のご案内と、その後の御予定をお聞きさせて頂きたいのです。特に御予定がないのであれば、お嬢様が申し上げた魔法鍛錬を執事長のカムウェルが行わせて頂きます」


 魔法鍛錬か……

 教えてもらうのは良いんだが、執事長の邪魔にならないか心配だな。


「執事長の業務の邪魔にならなければで構いませんので……」


「これも業務の一貫ですので、問題ございません」


 即座にきっぱりと言うメイド長テナシー。


「そ、そうですか……それではお願い致します」


「伝えておきます。では私は部屋の外で待機しますので、お召し物を着替えて頂き、食堂へ参りましょう」


 そしていつの間にか寝間着で寝ていた自分に驚きながら、いそいそと着換え、テナシーさんに連れられて朝食を取るのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ