天子のたまごである王女殿下の育て方
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
私こと馬佳仙月、此の度こうして我が中華王朝の二代女王である愛新覚羅翠蘭陛下より太傅の役職を仰せつかりまして、光栄の至りで御座いますよ。
私が太傅として教育させて頂く芳蘭第一王女殿下は、日々勉学に励まれる好奇心旺盛で聡明な御方で御座います。
これぞ正しく、国と民の親である天子の卵。
そんな殿下をより良い方向へ御導き出来るよう、太傅の私も一層に励まねばなりませんね。
ある日の事、殿下は難しそうな御顔で私に意見を求められたのでした。
「太傅に聞きたい。孫権や曹操、そして劉備の生き様は現代の我らの心を魅了する。こうした乱世ならば領地の拡大や敵の撃破が功績となるが、泰平の世で功績を挙げるには何が必要か。」
こう仰る殿下の傍らには、「三国志」の本が置かれていたのでした。
幼くも聡明な殿下は、古の英雄達の生き様に感銘を受けられたのでしょうね。
とはいえ喜んでばかりもいられません。
ここで私が不適切な回答をすれば、殿下が泰平を軽んじる御方に育つかも知れません。
それこそ、あの悪名高き殷の紂王のような…
「泰平な時代の功績は、その泰平を末永く存続させる事です。民を慈しみ安寧秩序を尊ぶ事こそ、泰平の世の天子の務めなのです。」
「然りだな、太傅…」
御言葉とは裏腹に、殿下には未だ疑問点が御有りのようでした。
「だが、それでは治世を記した史書が地味な物となるぞ。それを読んだ後世の人間が『乱世の君主に比べると、泰平の世の君主は大した活躍もしていない暗君だ。』と誤解したら何とする?仁政を尊び平和な治世を心掛ける母君は予の誇りだが、後世の人に母君を暗君呼ばわりされるのは堪えられぬぞ。」
確かに治世の名君が地味な印象なのは否めません。
この点も御甲斐なく御説明しなくては。
「史書が地味ならば、それでよいのです。華やかな武勇伝が血で記されている事を忘れてはいけません。」
「確かに戦乱となれば兵や民の血が流れる…それは駄目だ。」
御分かり頂けて何よりですよ。
「それに歴史など、所詮は後世の人間の解釈次第。演義で暗君扱いされる劉禅も、見方を変えれば四十年も蜀を維持した名君とも解釈出来るのです。」
「そうか…派手な逸話や武勲で名を残しても名君とは限らぬ。未来の評価よりも現代の問題に目を向け、臣下や民の為になる執政を行う。それが治世の君主の務めなのだな。」
臣下の言葉に耳を貸し、そこから答えに辿り着く。
そんな殿下の謙虚な聡明さは、頼もしい限りですよ。