しょうもないこと~数学と云う名の彼~
筆者の主観です。
「なっちゃん・・・私もう無理。彼とはもう付き合っていけないわ!これから大学卒業までずっと一緒なんて…私には耐えられない!あんなのDVと一緒よ!」
「駄目。彼は貴女の将来に必要なの!彼と貴女は分かり合えるわ!もっと歩み寄って、より多くの時間を共にするのよ!」
真剣な面持ちで語るのは私。勿論中学一年生の私にDV彼氏などいる筈も無く。彼とは数学のことである。
向かいに座るのは私の親友、なっちゃんである。なっちゃんは彼とのお付き合いは順調で、彼が点Pを縦横無尽に駆け回らせても健気に付いて行っている。私にはあんな所業は耐えられそうにない。
思い返せば、彼と私の出会いは小学一年生だった。幼馴染と言っても過言ではない付き合いをしてきたが、あの頃の彼はもっと単純で純粋で、可愛らしかった。しかし、彼は変わってしまったのだ。
小学生の頃はぼんやりとした苦手意識を持ちながらもテストでは彼との仲睦まじさを周囲に見せつけられていた気がする。だが私と彼が中学一年生になるといきなり豹変した。
小学生の頃の無垢さをちらつかせながら点Pを動かす鬼畜の所業。僅かな希望を見せておいて最後に地獄を見せるなんて酷すぎる。
だから私は国語を求めた。数学と同時に出会った彼は温かでロマンチックだった。優しくて(易しくて)いつも私の心に寄り添ってくれる。将来有用なのは数学だと知っていても、私の心はどうしても国語に傾いていった。国語が描く文は何処までも優しく(易しく)思えた。
包容力のある国語に心が本格的に傾き始めたのは中学受験期だった。数学と喧嘩をして仲直りできず、塾のテストの中でもそれが現れ始めた頃。テストでそれを周囲に取り繕ってくれたのはもう一人の幼馴染の国語だった。私は虚空に向かって言う。
「・・・ねえ、国語。もう数学なんて要らない、私と一緒に将来を歩みましょう? 私、大学生になったら貴方の元へ飛んでいくわ」
即ち、大学では文系を選択するという事だ。
「待って!まだ私達は中学生。これから数学とも分かり合えるかもしれないじゃない!早まらないで!」
「もうそんな時期は過ぎたわ。私には比例関数なんて無理。この先、数学は過去を振り返りながらやっていくのよ?私、何度も彼と喧嘩してきた。今でもそこは納得してないわ。だって・・・ だって・・・どうして点Pは動くの!?どうして太郎君の兄は忘れ物を届けにいくの!?私には理解出来ない!」
「諦めないで…彼は貴女との関係の修復を願ってる。国語とも数学とも仲良くしましょう? 将来後悔するわ!そうよ、私が教えてあげる。xとyを理解すれば彼との因縁はゼロよ!」
「でも...」
・・・誰か助けてほしい。私は教科を擬人化して勝手に幼馴染認定した挙句、勝手に喧嘩するという謎すぎる妄想が止まらないらしい。
今後も投稿するかもです!