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脳筋で無計画でした。

マルクの顔色が変わる。

身体は小刻みに震え出し呼吸が早くなる。

あ、そういえばこいつ、俺の本名知ってるよな?

いや……知ってるのか?

牢屋に名札は……ない。

そういえば名前を呼ばれた記憶……

ないなぁ……って覚えてるわけないって。

どっちでもいいか。でも……

マルクにバラされたら……信用無くしそうで怖い。


それにしても、こんな小柄な身体でよくもマルクを押さえつけていられる……あぁ、これも魔法なのか。

俺はそんなことを考えながらマルクの表情をうかがう。

……

……ちらりと動いた視線を追うとリックが座ってる場所……の横にある部屋を気にしているようだ。


「あそこか?」


カマをかける感じで後ろの部屋を指差してみたら、マルクがビクリと身体を震わせ俺を睨み付ける。

顔は……恐怖と怒りが混ざったような怖い顔をしている……ゴメンね、俺も役に立つことを証明しないと連れてってもらえないからさ。


俺は立ち上がってリックの横のドアの中を覗く。

リックは何も言わずにいるが、俺の行動をしっかり監視しているようだ。


木の机と椅子。

壁はレンガのようだ。

机の上には俺がさっき貪り食った給食っぽいトレイに載ったパンとスープがある。

それ以外はペンやら紙きれ、布などが散乱している。

天井には明かりが……これってランプっぽいけど油で点いてるのか?

あとは、部屋の隅に剣やら盾やら槍やらの武器が並べられてるが、鎖に南京錠で留められていて持ち出すことは出来ないようになっている。

うーん、ここは……看守の控え室のようなもんか?

中に足を踏み入れ、壁を念入りに見てみると……おっと発見! そこだけレンガの色が微妙に違う。


俺はそそくさと馬乗り女のところへ戻る。


「そこの部屋の壁に怪しいところがあったぞ」

と伝える。

すると彼女はナイフをちょっとだけ持ち変えると峰の部分で看守の首をグイッと押さえた。

マルクさんの目が恨めしそうに俺を見上げる。


「どうやって開ける?」


「・・あ……」

マルクさん、喋ろうとして喋るなと言われたことを思い出したのか、途中で口ごもってしまった。


「チッ」


いやん。舌打ちなんてお下品。

それにしてもこの二人、無計画もいいとこじゃねぇか。

こんなとこに忍び込めるからさぞかし優秀なのかと思えば、行き当たりばったりの作戦じゃねぇか。

これ、喋らなかったらどうするつもりだったんだ?


「しゃべっていい」

(しゃべんなきゃ殺す)


彼女はそう言ってナイフを押し付ける力を少しだけ弱める。


「あ……合言葉と鍵が必要だ」


「合言葉を教えて」


「い、いやだね。お、俺の命の保証をしてくれなきゃ喋らねぇよ!」

おっと、状況がわかった途端、強気に出てきたよ。

そうだねぇ、とにかく自分の命を第一に考えないとね。

よーく考えたら、助かる見込みなんてあまりないけどさ。

……

いや、まぁ、俺も似たような立場なんだけどね。


「フ、フ、フ……鍵なんぞ俺がぶっ壊してやらぁ」


今まで黙って俺らのやり取りを聞いていたリック君が不敵な笑いを発したかと思えば……鍵をぶっ壊す?

正気ですか?


「それがいい」

(できたら儲けもん)

彼女、まさかの同意!?


いやいやいや!!!

あんたらどんだけ脳筋なんだ?

いや、魔法か?

そんなに凄い魔法があるのか?

……いや……

そんな感じには見えんし、そもそもここでは大出力の魔法は行使できないはずだぞ!

じゃあやっぱり腕力か?

多分そうなんだろう!

リックの体つきを見ればわかる!

絶対力任せ人間だろ!

しかも鍵を壊すって、壊したら開くのか?

壊れても開かないかもしれないじゃん!

バカ? やっぱバカなの?

さすが残念筋肉剣士!!!


「何言ってんだ! 合言葉を言わないと警報が鳴るんだぞ! そもそもぶっ壊せるわけねぇだろ!」

マルクさん、正論。

ですよねぇ……警報、絶対鳴るって!

そしたらドカドカ衛兵とか来ちゃうよ?

逃げらんないよ?

それじゃ俺が困るのよ。


「やってみなきゃわからんだろ」


「やってみてダメだったら警報が鳴るんだぞ? バカか?」


ヒートアップしてまいりました!

ってマルクさんよ、あんまり言いすぎると、あっという間に殺されちゃうよ?

ほら、リック君がすんごい顔で睨んでるよ。

それに……やばいよ? こんなに大声で言い争ってて誰か来ちゃったらどうすんの?

「あんまり大声で騒ぐとマズくない?」


「……大丈夫。この廊下には遮音の魔法がかけてある」


彼女はそう言ってクイっと顎をしゃくる。

その先には……壁に四角い……紙?が貼ってあった。

よく見てみると……あ、なんとなくわかった。

そういう魔法が行使される魔法陣が書いてあるのね。

いつのまに……スゲーな。

……ちょっと見直したわ。

って、俺もあれを見た途端、遮音の魔法陣だってわかったのも凄くね?

これってハンツの記憶って事だろうな。


あっ! リックが部屋に入っていったぞ……


ドガッ !!


やっべっ!

本気じゃん!

本気でレンガの壁を叩き壊そうとしてやがる!


ドンッ!


いやいやいや! 無理っしょ!


「……っかぁあー! かってぇえ!!! こりゃ無理だわ!」


やっぱりね……


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