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味方が増えたがトラブルも増えそうです。


「悪いとは思っているんだよ? 本当に」


俺の目の前に座る第三王子は本当にすまなそうな顔をしている。

「いやぁ…お気遣いなく。まぁ困ってはいますけど、王子のせいではないんで…多分」

とは言ったものの気にはなる。

「… 誰のせいです?」


「あー… ぶっちゃけると…王の我儘というか… 」

「過保護なんだよ! 王は!」

「王子は大事」

なぜか同乗しているリックくんとメアさんが続けて口を挟む。

「あはは…」

王子は苦笑いをするだけだ。


まあね。親としての気持ちはわかるよ。

何せ実子である王子は二人。

長男はあんな感じで評判も悪い上に喧嘩っ早い。

三男はついこの間まで行方不明だ。

そりゃ親心としちゃあ…ね。

〝王位継承権〟ってやつも絡んでくるからなぁ…

息子が二人。

娘が…いるの? 聞いてないわ。

それに王の実弟がいるんだっけ。

なんでも今の王は三男で、実質王位に就けるとは思っていなかったそうだ。

で、勢いで〝魔王討伐軍〟に参加したそうだし、そこでの経験が今の自分には良い方に働いた云々のことは言ってたっけ。

討伐軍に参加していた2年ほどの間にいろいろあって王様になれたんだけど、実際はなりたくなかったらしい。

長男は謎の事故死。

次男は病死。

三男の自分も討伐軍参加時に何度か暗殺されかけたそうだ。

魔王を討伐して帰って来たら上の二人がいなくなっていて自動的に〝王〟になったそうな。

…そんなだから〝王になりたがっている〟長男に是非継いでもらいたいとかも言ってたっけ…

でも、いまいち不安なんで保険として第三王子は死んでもらっては困るんだそうだ。

だからって…成り立ての貴族である俺をつけるってのは…どうよ?

しかも男爵ですよ? もっといるでしょ? ふさわしい貴族が! 第三王子派の中に。


ガッ!!


そんなことを考えていたら馬車が急停車した。

一瞬にして車内は緊張感に包まれる。

しばらくするとコンコンと馬車の扉がノックされ

「王子、元勇者のスズキ男爵様がお目通を希望されておりますがいかがいたしましょうか」

王子が扉のカーテンを開けるとそこには見知った顔の男が立っていた。


あー、確か彼はあの廊下で話した兄さんだったっけ?

名前は…知らん。

それにしても、元勇者? それってあのグロウスさんを首だけにしたってヤツ?

ヤベェヤツじゃん!

…もっともあの地下祭壇に俺たちが行ったことなんてヤツは知らんだろうけど。

そもそもなんで今、元勇者が来る?


「すまんが要件を聞いて来てくれないか? 会うのはその内容次第だ」


おっと。

流石に簡単には会えないか。

お人好しのワルター王子なら「いいよ」とか言うかと思ったわ。

なんて思ってたら、馬車の周りがザワザワとうるさい。


「なんでぇなんでぇ! 急に止まりやがって! 何かあったんなら俺様にいいな!」

「シュライバー、お前にトラブルを収めることなどできるものか。せいぜいトラブルを広げるのがオチだ」

「待て待てお前ら! まずは王子様にお伺いを立ててからだ!」


なんか聞いたことのある声と名前。

多分あいつらだ。

例の空き家で遭遇した盗賊団だ。

仲間にしたとは聞いてはいたけど、このいざこざに参加してたんだね。

ま、使えるものは使わないと勿体無いか。


「お前ら、勝手に持ち場を離れるな!」


おっと、兄さんが怒ってる。

彼らからすると〝元盗賊団〟なんて扱いづらいし命令なんて聞かないだろうからいない方がいいだろうな。

「まあまあ、かてぇこと言うなよ副長殿」

「……」

あーもー、こういう細かいトラブルって後々に響いてくるんだよなぁ…

ま、経験の浅い王子様じゃわからんだろうが。

うーん… これは注意した方がいいか?


「おい! ゴルドバイン!! お前、自分の立場、わかってんのか!?」


おっとっと! 俺が言う前にリック君がお冠だ!

怒鳴りながら馬車の扉を開け飛び出していった。

その勢いのままゴルドバインの胸ぐらを掴みグイッと顔を近づけた。


「お、ま、え、は  おーじの、ごこういで、この! きたねぇクビがツナガッテいるってことを、もっと、しっかり、じかくしろ!」


リック君はそう言いながらゴルドバインを投げ捨てる。

「…」

投げられたゴルドバインは恨めしそうな表情で彼を睨みつける。

モヒカン君も自慢のバトルアックスを構え臨戦体制だ。


いやいや…こうなることは予想できただろうに…

王子もお人好し過ぎるよ。

相手は悪名高き盗賊団だよ?

適当なこと言ってお宝だけせしめて後は衛兵にでも渡してしまえばよかったのにね。

どうせ盗賊団の奴らなんて表面上は王子に従ってる風を装って絶対逃げ出す機会を伺ってるに違いないって。

それに、今回の従軍にしても王国軍の立場から考えれば、小規模な国境紛争で大事な騎士団員を失うのは勿体無いし世間の評判も悪くなる。

かといって何もしないのも国民感情的によろしくない。

で、王国騎士団が出張ってきたわけだが…

第三王子の拍付の意味もあるんだろうけどさ。

何か起こった場合はどうすんだろ?

なんかきな臭さを感じるわ。

あ、だから俺みたいないなくなっても大した損害にならない〝新興の貴族〟が同伴に選ばれたのかね。

そういやぁ、あのトラブル大好き第一王子が今回は出てこなかったのは第一王子派の側近が止めたからって誰かが愚痴ってたっけ。

実際、あの会議では「俺が行く!」って言ってたし。

…第一王子派が止めたのって…何か重要な情報を入手しててこの国境紛争はいつもの小競り合い程度で終わらないと踏んだのか?

だとしたら…第三王子、危険じゃん!

こんな内輪でゴタゴタしてる場合じゃねーじゃん!

と、勝手な推測を長々と妄想していたら副長さんが近づいてきた。


「王子、元勇者様の用事ですが、なんでも丁度ヒマなので王子のお手伝いをしたいとのことです」


副長さんの後ろの方では膝に手をついてゼーゼー言ってる少年兵がいる。

多分こいつが全力疾走で戻ってきて伝令してくれたんだろうね。

…ご苦労さん…


で、元勇者が〝お手伝い〟?

何? 戦闘狂なの? それとも何か他に目的が?

あ、でも、グロウスさんを首だけにしちゃうほどの武力があれば…

心強いっちゃあ心強い。

けどまあ…やっぱ戦闘になるの?


「うーん… 人手はあった方がいいとは思うけど…副長はどう思う?」


あ、そうか!

第三王子が騎士団の団長だったつけ!

すっかり忘れてたわ!

…となると、リック君ってマジでどういう立場の人?


「私は反対です! 人は足りておりますし部外者の混入はこれ以上難しいかと」


あー、チラリとゴルドバインの方に視線を向けてるし…

それって結局は〝騎士団長批判〟になっちゃうよ? 大丈夫?


「勇者、強い。盾には最適」


ここでメアさんから助言が!

…メアさんにかかれば元勇者も王子の盾扱い!!

でもまぁ、ある意味これが正解かもね。

元勇者がいるって知られれば向こうも躊躇するだろうし、最悪戦闘になったとしても味方に元勇者がいれば…


「元勇者がいるって宣伝すれば向こうも帰ってくれるのでは?」

王子が視線で俺の意見を求めて来たので、一応もっともらしいことを言ってみた。


「あの勇者、借金まみれだって噂だぜ? 護衛って名目で、金が欲しいんじゃねーの?」


リック君、その情報、ホント?

ホントだとしたら、この間のグロウスさん討伐ではお金、貰えなかったの?

いや。貰えたけど足りなかったってこと?


「確かに… あれの噂はよく聞く」

メアさんも噂を聞いたことがあるっぽい。

一体どんだけ借りてんだよ。

てか、勇者ってお金、どうしてんの?

国から年金みたいな形でもらってんの?


「ふむ…金で転ぶなら御し易い」


おぉっとぉ! 副長の本音がダダ漏れだぁ!

確かに、今の俺たちは〝超〟の付く金持ちだ!

俺のこの… あ、底なしバッグ、屋敷に置きっぱだわ。

執事、気を利かせて伝令に渡してくれないかなぁ。

ま、ダメならもう一度メアさん経由でお願いするか。


「わかった。勇者に会おう」


王子はそう言って立ち上がり、馬車から降りた。

「では連れてこさせます。おい!」

副長の一言でさっきの伝令がまた全力疾走していった。

いつの間にか王子のすぐ横にリック君とメアさんが並ぶ。


あぁ……二人って王子の護衛なのね。納得。


手持ち無沙汰の俺は後ろでしゃがみ込んでいるゴルドバインに近づく。

「ヨォ、親分。怪我の治療でもしようか?」

俺の声を聞いたゴルドバインはニヤリと笑い、すっくと立ち上がり

「おやおや、こ汚ねぇ貧民窟の住人だった兄ちゃんが、今やお貴族様かよ」

と言いお尻をパンパンと叩き付いた砂を払った。

「あはは! 似合わねぇのは自覚してるわ。そういうアンタだって盗賊団の団長が今じゃ王子様の私兵じゃん」

ゴルドバインは片眉と口の端をあげ

「アンタとは気が合いそうだな」

と言って回れ右をして元いた行列の最後尾へと戻っていった。


しばらくすると例の伝令が一人の男を連れて戻って来た。

黒髪を短く刈り上げ、顎には薄く髭を蓄え、軽装だけど高そうな装備を身にまとい、大剣を背に〝元勇者〟は現れた。

そして王子の前に跪き

「お初にお目にかかります。元勇者のマサル・スズキ男爵と申します。この度は急な申し入れにも関わらずお目通りが叶い恐悦至極にございます」

あら。意外。

こんな礼儀作法も身に付けてるんだ。

想像ではズカズカと土足で入ってきて「手伝ってやるから金をよこせ」とか言う感じだったのに。

「顔を上げてくれ、男爵。私がワルター・ヨヒアム・ドライスだ」

「ありがとうございます」

元勇者はそう言って立ち上がり深く会釈をする。

「で? 我が第5騎士団の手伝いをしたいとのことだが」

「は。たまたま王都で食事をしておりましたところ、客の会話で『王子が国境紛争を収めに軍を率いて出発した』と聞きました」

「うむ」

「で、私、王国の現王とは〝魔王討伐〟で一緒に戦った戦友であることもあり『これは恩を返す機会』であると思い馳せ参じました」


ん? それって本当? 信じる人、いる?


「それは心強い! ぜひ我が騎士団の、いや、私の手伝いをお願いしよう」


…乗った。

王子もワルよのう。


「で? いくら欲しいんだ?」

おーっと! リック君がいきなり核心に切り込んだぁ!

…勇者さん、薄く笑った?


「いえいえ、報酬など二の次。まずは私の働きを見ていただきその上でご判断を」


「ボランティア、オケィ?」

あら、メアさんのツッコミに表情が歪んだわ。

若い。まだ若いわぁ。ここで表情を変えたらさっきの言葉が薄くなっちゃうよ?


「まあまあ、そういうことは副長と話してくれ。じゃ、とりあえず男爵は味方になったということで、出発しよう!」


…丸投げですか? あー、副長くん苦笑いしてるわ。

おっと、みんな、馬車に乗り込んでいく。

俺も…

「お待たせしましたー!」

と思って動き出そうとした瞬間、横から声をかけられた。

驚いて声のした方を向くと小柄な黒ずくめの…少女?が立っていた。

「お屋敷への伝言、お伝えし終え、さらにお屋敷からのお手紙とバッグをお届けに上がりましたー!」

「あ、あぁ、ありがとう…」

バッグまで! さすがは執事! 出来る男は違うね!

俺はバッグと手紙を受け取る。

「またのご利用をー!」

彼女はそう言って足早に王都の方へと駆けていった。


俺はバッグをいつも通り肩にかけ、馬車に遅れて乗り込む。


「さすが我らが〝黒装束ヤマモト宅配便〟」


メアさん、それって始めたの絶対元日本人でしょ!

「…確かに早くて助かりましたけど、彼女、俺って確認、どうやってしたんです?」

俺の問いかけにメアさんの動きがビクリと止まる。

「…だ、大丈夫。相手は〝変態魔導師〟と言ってある。変態っぽい魔導師はお前しかいない」

ガーン! それはショック!

「いや…それ、嘘でしょ」

メアさん、あからさまに目を逸らす。

「…ちゃんと服装から髪の色まで伝えてあった。確認を怠ったことは後で叱っておく」

「それに、真っ昼間に黒装束って…変に目立ちません?」

俺の言葉に恐ろしい速さで振り返ったたメアさんの瞳孔がめっちゃ拡がってる。

…しばらく動かなかった。


「…要検討」


いやいやいや。検討も何もなんで今まで誰も突っ込まなかったの?

リックくんを見ても明後日の方角を見ている。

確か…この会話、前にもしたような気が…

大丈夫か? 黒装束ヤマモト宅配便…


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