実力を知るために模擬戦は大事ですが…。
勇者のひとり【田島悠斗】視点です。
「では勇者様、よろしくお願いいたします」
そう言って胸を張る、白い髭を蓄え白銀の鎧に身を包んだ初老の男。
オレらを様付けで呼んでいるが、どうも気に入らない。
今日は朝食後、中庭にて戦闘レベルの確認をするってことでここに集められたんだけど。
「ジイさんよぉ、それが勇者に対する態度か?」
「ちょ、ちょっとユウトくん…」
シズカがすぐに口を挟むが関係ない。
オレたちは勇者なんだ。
それ相応の態度で接してもらわないとね。
「ふっ」
「なに笑ってんのよ!」
俺の言葉を鼻で笑ったジイさんに対し、リミが間髪入れずに返す。
「これは失礼いたしました…ただ…貴方様の国では目上の人には敬意を払う…という話を聞いていたのですが、違いましたかな?」
ジイさんはそう言って背中に担いていたデッカイ盾を左手だけで外し、自分の左横に〝ドスン〟と立てる。
「だったら尚更だ! 俺たちの方がアンタらより偉いんだからな!」
「目上ってそういうことじゃ…」
ミユの小声でのツッコミが聞こえたが無視だ。
俺が、この、勇者パーティーの、リーダーなんだから!
「ではこうしましょう。今から貴方たち〝勇者チーム〟と私とで模擬戦をいたしましょう。それに勝てましたら貴方たちをお認めいたしましょう」
ジジイはそう言ってニヤリと笑う。
「いいのか? 俺たち5人にあんたひとりで?」
「そう言っておりますが?」
呆れたような表情でジジイは口を開く。
バカめ。
たったひとりで勇者パーティーに勝てるなんて思ってやがるのか?
コイツらが頼りないから俺らを呼んだんじゃねーの?
…
「アンタ、どんだけ強いんだ?」
一応、相手の実力を聞いておかないとな。
「そうですな、一応、この教会の聖騎士団の団長という地位を任されております」
「それでは答えになっていません」
シズカがジジイの言葉に反応して聞き返した。
「うーん… そう言われましても…」
「一番ご苦労なされた戦闘は?」
おっとぉ、ここでおデブちゃんの発言だ。
なんでコイツがこのオレのパーティーにいるのか不思議だ。
顔も体型もブスだ。
格好もダサい。
ジャージって!
バスにジャージで乗ってくるようなセンス、あり得ないっしょ!
「それならば20年前の〝魔王討伐〟ですな。あの時は酷かった。特に酷かったのは最後の〝魔王城〟での魔王対勇者の戦闘を邪魔させないために我々教会騎士団と各国の騎士団合わせて千人ほどで魔王城を囲み、戻ってくる魔族たちを中に入れないよう戦った時ですな。中に入って行った勇者チームは7人だったのですが、見事魔王を倒し戻ってきた時は3人でしたよ。そしてわしはその時40代だったがこの盾と剣で戦い生き残ったのです。あとで数えたら我々千人の騎士団は100人ほどになっておりましたよ」
け、結構強いんじゃねーの。
「やってやろうじゃねーの!」
オレはそう言って腰の剣を抜いた。
「では」
あの後、フォーメーションやら剣の振り方、それに魔法の行使方法など習ってから模擬戦をすることとなった。
…魔法。
やっぱりすごいよね、魔法!
身体に〝身体防御〟の魔法を掛ければ剣で斬られても浅い傷で済むし〝身体強化〟を掛ければ走るスピードも剣を振る速度も桁違いに速くなる。
でもそれでバランスを崩しやすいってことも…
それらを含め、やっぱりワクワクが止まらん!
前衛はオレとシズカだ。
彼女は日本では剣道部に所属していたそうで剣の振り方も様になっている。
中堅はおデブ…じゃなくてイイズカだ。
コイツはデカい盾を持ち後衛を守りつつ状況に応じて指示をする役目だ。
場合によっては戦闘に参加する。
後衛はミユとリミだ。
ミユは弓道部だってことで弓で戦うしリミは体操部出身だそうで、相手の隙を見て投擲や魔法で牽制する。
更にその後ろには治癒役の〝白魔法師〟と、いざという時用に〝魔法師〟のふたりが教会から提供されている。
…
おかしい…
…
あんなジジイひとり、なぜ突破できない。
普通に攻めてもダメ。
まともに攻めてもダメ。
みんなで一斉に攻めてもダメ。
オレ様の渾身の一撃もダメ。
…
ダメダメじゃん。
イライラする。
「あぁー! くそっ!」
オレは自分の足に魔法を重ね掛けしメッチャ高く跳ぶ!
「今だっ!!」
と叫びながら渾身の一撃をジジイの脳天目掛けて振り下ろす!
が、簡単に縦で防がれ剣の横なぎで吹っ飛ばされた。
「なんだよっ! オレが今だって言ったら全員で突っ込めよっ!」
オレは声を荒らげてみんなを責める。
「…いや、聞いてないから…」
シズカがポツリと呟く。
「オレが跳んだらそれに合わせて攻撃をするのが常識だろっ?」
「…常識って…」
ミユは真面目さんだから知らねーのかよっ! 有名な戦いのマンガの一場面だぞ!
「なんだってんだよ! オレがリーダーだろっ! 言うこと聞けよっ!」
「ゆ、ユウトくん。一旦落ち着いて」
「デブがウルセェんだよっ!!!」
デブババアが口を挟んできやがったんで、ついキレて思いっきり罵声を浴びせながら剣を振る。
「!!!」
…?
あれ? 何が起きた?
…?
なんで…デブの顔が…地面で…
「治癒師!!!!」
ジジイの叫び声が遠くから聞こえる…
あれ? オレのせい? なの?
周りが騒がしい…ゾ?
なにが?
……




