誰か来たようだ。
何事だと上に顔を向けると、天井の一部がなくなってポッカリと口を開けていた。
と、そこから黒ずくめの人の頭らしきものが出てきた。
目が合う。
……泥棒か?……いやいやこんなとこに泥棒が来るわけがない。
じゃあなんだ?
うーむ……ん?
なんか小柄か?
ちょっと遠いんで分かりづらいが、顔が小さいな。
子供……ってほどではないが成人男性とは言いづらい大きさだ。
女怪盗か?
いやいや、こんなところに何を盗みに来たんだっての。
……
あっ!!!
誰かの救出か?
でも……それは、俺ではなさそうだな。
俺も相手も微動だにしない。
うーん……ラチがあかん。
「こんにちはー」にっこり笑って手を振ってみた。
「……」
無反応だ。
「いらっしゃいませー。お一人様ですか?」
店員風に言ってみた。
「……」
冗談も通じない感じだね。
おっと、ふざけてる場合じゃないな、ちゃんとしないと。
「あー……、ちなみに俺は看守じゃないぞ。そこの……牢屋にいたものだ」
相手はそっと俺が指さした方を見た。
牢屋の扉が半開き状態だ。
それだけで察したようだ。
彼(彼女?)の緊張感がちょっとだけ緩んだように感じた。
「看守に用があるんなら奴は中で寝てるぞ」
ボクは慌てた。
そう、慌てたの。
こんな気持ちになるのは久しぶり。
師匠との訓練中以来だ。
まさか天井を開けた途端気づかれるとは……
これは速攻でヤらないとと思ったものの彼を殺してしまっては肝心なことを聞き出せなくなってしまう。
どうしようと思った途端、彼は自分は看守じゃないと言い出した。
本当?
……いや、確かに。
どう見ても看守には見えない。
無造作に伸び放題の髪の毛。
ヒゲも物凄い。
これが看守だと言うのならスラム街の人間はみんな看守に見えてしまう。
指差す先を見てみると、牢屋の扉が開いている。
……どうやって抜け出したのかわからないがそうなんだろう。
嘘なら彼を殺せばいい。
とにかく看守の男を確保しないと……
俺が言い終わらないうちにそいつは床に着地してあっという間に俺のいた牢屋に入っていた。
……はえェ……
気付かなかったら瞬殺されてたな……絶対。
すると、そいつは看守を牢屋から引きずり出し、俺の目の前で顔をペシペシと叩いている。
あぁ、なにか聞きたいことがあるのね。
おっと!
再度頭上にとてつもなく嫌な感じとちょっとだけ音がしたんで見上げると、さっきの穴から二本の足がぶら下がっていた。
しかも、穴ギリギリだ。
……
てことは、さっきのやつよりデカイのが降ってくるってことか!
思うまもなく上から巨体が飛び降りてきた。