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楽しい実験だ。

俺は急いで屋敷に戻った。

途中で食い物をたくさん買い込んで。


使用人館に入るとすぐ、俺は地下室へと降りていき中を確認した。

そこは8帖ほどの広さしかないただの物置部屋だった。

中には椅子やらテーブルやらが積み上げられており、埃と蜘蛛の巣だらけの真っ暗な空間だ。

俺は乱雑に置かれている家具類を壁際に纏めちょっとした空間を作った。

その出来たばかりの空間の床に手を当てイメージを頭に浮かべ魔素の流れを手のひらへと進めた。

すると徐々に床の一部が沈んでゆき人一人分の四角い穴ができた。

さらに魔素を流し込み穴をドンドン斜め下前方へと深く進めていった。

ついでに手前側の斜面を階段状にし、底まで階段が達した時点で魔素の流れを止めた。


…ま、深さはこんなもんでいいだろ。


俺はそう思いながら自分で作った階段を降りていく。

大体2階分くらい地下に降りたところで穴は止まっていたので目の前の土に手を当て更に前方へと穴を広げた。

続いて右、左、上へと空間を広げ20帖ほどの正方形の地下空間が出来上がった。

魔法で土を圧縮しただけの壁や床やツルツルではあるが、ただの土壁と土床なので殺風景だ。

なのでグロゥスさんに教えて貰った土魔法の一つで〝真っ白な石〟を生み出すのがあったんでそれを使って白い壁にしてみた。

こんな魔法、いつ使うんだ?

そして土魔法でランプをいくつか作り天井から吊るしたり壁に窪みを作ってそこに嵌め込んだりした。

ランプの中には教会から持ってきた蝋燭をさし火をつけて明るい部屋にした。

ここで一旦作業を止めて部屋を見渡してみる。

……

ま、こんなもんでしょ。


俺は階段を上りそこにあったテーブルなどをバラして分厚い木の扉を作って地下2階の出入り口に嵌め込んだ。

蝶番は椅子やテーブルの釘を纏めて錬金術で作ってみた。

溶解、形成などでなんとか出来た。

あ、ドアノブ。

仕組みは知ってても作るとなるとマジ面倒だったわ。

なんとか出来たけどさ、バネとかって結構大変なんだね。作んの。

さらに地下1階側の出入り口も床に見えるような扉にし、周りに椅子なんかを配置してここに扉があることが分からないようにしてみた。

ただ、その扉を開くためにいちいちしゃがんで隠し扉の取手を跳ね上げてから開かなくてはならないのは面倒だ。

でも他にいいアイデアが浮かばなかったんでしょうがないね。


ここまでやったところで俺の腹の虫が〝グゥ~〟と鳴いた。

なのでそこにあったテーブルと椅子を並べちゃんと卓面を拭いてから買っておいた食べ物を広げ一人で飯にした。

一応、執事やメイドたちには今日はこっちで作業をするし、飯も食うという旨を伝えてはある。

特に反対はされなかったが、皆訝しげな顔を俺に向けてきたんだが…いいじゃん、少しぐらい勝手にやらせてよ。

何せ王様から、直々に、この屋敷を譲り受けたんだからね、俺が。


ふぅ…

空間を司るバッグのおかげでスープは暖かいままだし、肉串もソーセージも熱々で美味かったわ。

さて続きの作業も頑張りますか。


俺は再び地下2階へと降り、床に手を当てイメージを膨らます。

そのイメージは、床に半分埋まった形のデカいビーカー…いや、ドラム缶だ。

直径は1メートルくらいで深さは3メートルほど。

ガラスで作ろうと思ったんだけど、原材料がないしガラスを作り出す魔法もなかったんで土を圧縮して陶器っぽい感じの器にしてみた。

それを7つほど作り、それぞれの器の底に魔法陣を書き込んだ。

この魔法陣はいくつかの連想式にした。

中心のものは〝再生〟の魔法陣だ。

それを囲むように〝加速〟の魔法陣を描く。

次にまた〝治癒〟の魔法陣を描き、その外側に〝加速〟を描く。

この作業だけで5時間ほどかかってしまった。

そしてその器に生成した高濃度の魔素水を注ぎ込んだ。


俺は地下から廊下に出て窓の外に目をやる。

やべっ! 東の空が白み始めてやがる。

慌ててメイドたちの寝室や執事の部屋などを回って骨だけになっている遺体を布団や絨毯ごと回収。

血の跡などの残っているベッドや床などもちゃんとバラしてバッグに詰め込んだ。

うおっ!!

もう辺りは明るくなってきてしまったようだ。

俺は急いで本館の方へと向かう。


「おはよう」

あからさまにどんよりとした目で執事たちに朝の挨拶をする。

「おはようございます。新しいご主人様」

メイドたちが声を合わせてそう挨拶をしてくる。

彼女らは挨拶が終わるとスッと消え各自の作業へと戻っていく。


「…昨夜はお忙しかったようですね」

執事が紅茶を注ぎながらそう言って俺の顔を覗き込んできた。

俺はそんな執事を見ることもなく、テーブルの上に食い切れなかった食い物を並べ

「…いやね、昨日、奴隷を買いにいったら奴隷じゃないけどウチで働いてくれそうな人たちを見つけたんで急遽使用人館の掃除をしてたんだよね」

と言ってなんかの肉と玉ねぎっぽいのが挟まってるゴツいサンドイッチを齧った。


執事は俺の顔をじっと見つめ、しばらく経ってから

「ほう、それはそれは」

と言ってにっこりと笑って見せる。

…ん? 信じてない?

「でもね。俺が貴族ってことも、働く屋敷が幽霊屋敷だってことも信じてくれないんだよね」

…執事の笑顔は動かない。

「だもんで、今日、直接ここに連れてきちゃうから、よろしくね」

…執事の笑顔が張り付いたように動かない。

「あ、あとついでに君たちのホムンクルスを作ろうと思っているんだ」

執事の表情が劇的に変わった。

目を見開き鼻の穴をやや広げ口を開いた。

「私たちのホムンクルス…ですか?」

「うん。君たちの、だ。これは実験だから期待しないでくれ」

おっとぉ!! いつの間にかメイドやメイド長、調理師までもがテーブルを囲む形でその姿を顕現させている。


「だだ男爵様! そ、それは私たちが生き返るということでしょうか?」

「ホホホホムンクルスって…ももう一人の自分を作る魔法だって、き聞いたことがあるんですけど…」

「……黒魔法? ですか?」


「いや、黒魔法じゃない。これは白魔法の一種で、素材…今回は骨と血に〝再生〟を掛けることによって本当に元の肉体が再生するか?という実験だ」


「成功しそうですか?」

メイド長が真剣な表情で俺に聞いてきた。

「分からん。何せ初めての試みだしね」

俺の言葉を聞いて、皆があからさまにガッカリフェイスになった。

「でもまあ、今回の実験で期待できる点が一つあってね。それは、君たちはまだ〝死んでいない〟ってことなんだ」


お? みんなの頭の上に〝?〟が浮かんだかな?

「君たちの肉体は朽ちてしまっているものの魂はまだこの世に存在している」

俺はそこまで言うとみんなの顔をぐるりと見渡しニッコリと笑った。

「つまり、朽ち果てた肉体を戻す〝再生〟を行使し、戻った肉体に〝憑依〟してもらう!」

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