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叙爵は、サクッと終わっちゃいました。


「…クルツ・ドライフェルト。汝がエーレシュタート王国の男爵位につくことを認める事とする」

「は。ありがたき幸せ。王国のため、この身を捧げる事を誓います」


終わりました。

叙爵。

ああは言ったけどさ、身を捧げるなんて、しないよね。

いざとなったらさっさと逃げるよ。俺。

でもさぁ、聞いてたんと違ったんだよね、かなり。

俺はさ、謁見の間みたいなだだっ広い部屋で赤い絨毯の上、王様の前にひざまづいて…ってのを想像してたのにさ。

だからあんな理不尽な特訓にも耐えたのに…

王様じゃなかったんだよね、俺がひざまづいた人。

王族ですらないってさ。

なんでも任命式を取り仕切ったのって執政官の偉い人、それもそこそこの、らしい。

そこそこの執政官なんかにひざまづいて…なんか損した気分だわ。

しかも偉そうに

「お前の名は」

とか聞いてきやがって!

しかもさっきの王子の部屋より狭い部屋でしたよ。

机があって椅子があって棚やら整然と並んでいる4畳くらいの部屋ですよ。

多分この部屋、その執政官の事務室でしょ?

一応証明書のような巻物をいただきましたよ。

歩きながら広げてみても卒業証書みたいな感じで俺の名前と〝国に対して良い事したから貴族にしてあげる〟みたいなことが書いてある。

その続きには国王?の名前を判子?っぽいのがある。

周りは蔦が絡まったような模様と花と鳥が描かれてある。

なんか外国の台所にあったパンとかを潰して伸ばす取手の付いた棒2本が上下についたB4サイズくらいの羊皮紙だ。

「無くさないように」って言われたけどさ、嵩張るわ重いわで邪魔でしょうがないっす。

あ、こういうものこそ鞄に入れちゃえばいいわけね。

…そういやぁ鞄の精くん、お城の中だと流石に喋らない。

ここに来る前に

『お城とかじゃ迂闊に喋れないんだよねー、どこに精霊の話を聞ける輩がいるかわかんないからぁ』

って言ってたっけ。

あれだけのおしゃべり精霊がこんなに静かだと逆に話しかけそうで怖いわ。

それにしても…なんか役所の事務手続きみたいでつまんなかったわ。

せっかくお風呂で身を清めたってのに!

いやいやお風呂は嬉しかったけどさ。

ま、男爵程度じゃこんな扱いなんでしょうよ。


「まぁ、そんなに怒んなって」


王子の後ろをブツブツ文句言いながら歩いている俺をリックくんが宥めてくれる。

うぅ、リックくん、いい奴だなぁ。

なんて思いながら王子の部屋に戻るため、お城の長ーい廊下を歩いていると、急に脇の廊下から声がかかる。


「王子、少し宜しいでしょうか」


見ると頭の禿げ上がった小柄な老人が立っていた。

長く白い顎髭を垂らし、痩せた身体と鋭い視線を王子に向けて立っていた。


「なんだい?宰相殿」


宰相? 怖い怖い。

顔つきといい、目つきをいい、まさに悪役!

きっと王に隠れて私服を肥やしているに違いない!


「はい、実は王が男爵に興味があると言うので」


ピクリと王子の表情が歪んだ。


おや? 何か気になることでも?

うーん…なんだ? 俺に興味があるって。

だったら陞爵の時に出てくればいいじゃん!

あ、きっとあれだ、なんか怪しい頼み事とかがあるのかも…

だからこういう裏で声をかけて秘密の会合とかで…って感じですか?


「お急ぎなのでしょうか?」


王子はそう丁寧に尋ねる。

うーん…自分のお父さんなのに他人行儀なこと。

ま、お父さんと言ってもこの国の王様、君主制の最高権力者だからなぁ、あまりフランクには話せないか。


「いえ…ただ、王は何かとお忙しい身。今なら時間があるとのことです」

宰相はそう言って柔らかく口の端をあげる。


もうこれは完全に〝今すぐ連れてこい〟ってことだよね!

〝息子といえど、王の命令に逆らうことは罷りならん!〟ってことだよね?

宰相、口元がニヤついてますよ?

嫌な感じだわぁ。

まさに虎の威を借る狐じゃん!


「承りました。このまま王の元へ向かいましょう。宰相殿、案内を頼みます」


王子はそう言ってニッコリと笑った。

そして俺の方に振り向き

「すまんが王のご所望だ。ついてきてくれ」

と言い片眉を少しだけ上げた。

「わかりました。王様にお会いできるだなんて光栄の極み。よろしくお願いいたします」

なんて答えたけど……会いたくねぇぇぇぇ!!!!


やっぱり第三王子派の貴族が増えるのが気に入らないんですかね?

増えたって言ったってたかが男爵一人ですよ?

さっき執事さんに聞いた話だけど、この国の貴族の順位って男爵が最下位で順に子爵、伯爵、侯爵、公爵となってるそうで、一国の王が気にするようなことじゃあないんですって。

あ、でも男爵の下に士爵ってのがあるそうだけど、これって国とかにすごい貢献した人に贈られる爵位だそうで、いわゆる貴族ではないらしい。

あれ? 俺、そっちじゃね?

そっちのが面倒くさくなくて良いっぽいぞ?

今からそっちに変えてもらえないかなぁ…

あ、こいつには男爵なんてもったいないから士爵にしろってことかも?

いやいやいや、もう貰っちゃったんだし、んな簡単に変えたり出来たら権威もクソもないもんね。

うーん…じゃあやっぱり何か他の話ですよね?

なんにせよ、話を聞かないことには、ねぇ。


なんて思いながら王子と俺は宰相の後についてお城の中を進んで行った。

あ、リックくんは呼ばれていないみたいで、そのまま王子の部屋に戻りました。

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