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執事はセバスチャン、とは限らない。


さっきの部屋に戻ると、何やら人数が増えていた。

見事な装飾が施された軍服?を身に纏った男性が二人と黒っぽいスーツのような服を着た白髪白髭の壮年の男性。

「では、叙爵の儀式について説明させていただきます」

そう言って恭しく頭を下げる壮年の男性。

「ヘルマン・グラーフ。ウチの執事長だ」

王子がソファに座ったままそう言ってニコリと笑う。

???

なんでしょう、その笑顔は。

なんか…深い意味があるような、ないような…

「よろしくお願いします」

そう思いながらヘルマンさんに頭を下げる。

「いけません。貴族たるもの執事に頭を下げるなど。最もやってはいけない行為です」


ビクッ!


いきなり怒られてしまいました。

そうは言ってもこちとら貴族なんぞになるのは生まれて初めてなんですよねぇ。


その後もお辞儀の角度やら歩き方の指導やら事細かく教えていただきました…

学生時代、俺の作品をクラスのみんなの前で先生に酷評された時の感覚が蘇ってきたわ。

言われても出来ないんですって!

見た通りに描けばいいじゃないかって言われても、俺は見た通りに描いてるっての!

いやもう、わかんないですって!

歩幅だの言われたってさ!

あんたらと違うんだって、俺の身長!

見てわかんないかな?

どう見てもあんたより20センチくらい小さいでしょうが!

だ・か・ら!

歩幅も自ずと違うでしょ!

あーもー、パンパン手を叩くなって!

何? これって俺の陞爵をやめさせようってことですか?

いーよ、いーですよ? 俺が頼んだわけでもないしね。

貴族なんぞになりたいだなんて、これっっっぽっちも思ってないんですからっ!


「王子、俺、帰ってもいいですか?」


俺は肩で息をしながら真顔でそう言った。


すると王子、それまでちょっとニヤけてこっちを見てたのに、慌てて立ち上がって

「悪い悪い、ちょっとおふざけが過ぎたようだね」

と言って近づいてきた。


え? これ、ふざけてたの? 何故?


「…ふざけてたんですか?…」


「あ、いや…ふざけたわけじゃないくて…なんて言うか…仲間が欲しかったっていうか…」


あー、そーゆーことっすか。

つまり、昔、自分が受けた理不尽な指導を他の人にも味わって貰って傷を分かち合いたかったんですね…

「…王子… そういうのって良くないですよ?」

俺はそう言ってジト目で王子を睨む。


「うぉっほん」

と、わざとらしくヘルマンさんが咳払いをする。

「王子、ぜひこの後作法のおさらいをいたしましょう。いえ、時間は取らせません、王子が覚えておればですが」

おっと、王子にまで飛び火しちゃったよ。

あーあ王子、急に顔色が…


「っと、そろそろ時間ですな」

ヘルマンさん、懐から何やら取り出しそれを見る。

「あと25分後です」


…時計、ですか?

懐中時計があるんですか?

動力はなんですか?

ゼンマイですか? 電池…はないから魔晶石とかの魔素とかですか?

…あとで聞こうっと。


ま、何か失礼があったらしょうがない。

俺は貴族じゃないんだしね。

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