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久しぶりの入浴は、極楽でした。


はぁ… 俺も貴族なんぞになっちまうんかぁ…


こっちの世界に転生して目が覚めたらあの地獄!

もうね、何もかも違うんで逆に冷静になれたわ。

で、運よく牢屋から出られて、侵入してきたリックくんたちに救われて…

あ、グロゥスさんにもお世話になったっけ。

…いやあれは俺の方がグロゥスさんのお世話をしてあげたって方が正解じゃないか?

んで、あの地獄からやっと出られても記憶が消されていたせいか、頭真っ白だったわ。

っていうか、あんなとこから出ることだけを考えてたんで他のことなんか何にも考えられんかったわ。

そう、当然、出た後のことなんか…無理無理。

で、昨日の夢の中で、ようやく色々な謎が明るみになって、色々考えるようになったんだけどさ。

考えられる時間って、師匠のしごきに耐えている間という、特殊な環境下での思考なんだよね。

盗賊から掻っ払った財宝を元手に、何か商売をしようとか、確か錬金術が使えるんでそういう…工房? みたいのをやろうかとか。

そんなことを考えてると師匠から「隙あり!」って致命傷寸前の一撃をいただくことになるんですけどね。

そんなこんなでまともに考えがまとまるわけもなく、結局頭真っ白状態ってのが現状です。


そんな中、急に貴族やれって…

言われた瞬間は「え? 何? 貴族ってそんな感じでなれんの?」って思ったけど、王子の話を聞くと意外と「アリ」かもって思う要素があったりして。

王子曰く

「なれると言っても最下位の〝男爵〟で、最下位層には治める領土は与えられない」らしい。

それに

「その上、特に決まった役職もない」そうだ。

ちなみに

「王国貴族なので王の命令は絶対!」だそうだ。

死ねと言われることは滅多にないそうだが、結構な無理難題を課せられることもあるとかないとか…

とはいえ、拒否権もあるにはあるそうで、過去に変な命令を拒否した貴族は結構いるらしい。

でもそういう貴族は当然〝あいつは俺の命令に逆らった〟という印象が王様の中に残るので、その後の出世は見込めないそうだ。

そりゃそうだ。

王国だもんね。民主主義国家じゃないんだから。

絶対君主に逆らったら〝死〟もあり得るって考えなきゃね。

だから俺も、って感じではないんだけど…

貴族になるってのも面白いかもって思えるようにはなってきたよ、この短い時間で。


で、今、俺は入浴中だ。

貴族の、しかもお城のお風呂だからさぞかし豪華絢爛な…

って想像してたんだけど、俺が案内されたのはこぢんまりとした一人用の浴室だった。

なんでも緊急用のお風呂だそうで、城内で何かのトラブルに巻き込まれたりした時に使うものだそうだ。

急に位の高い相手に会わなければならなくなったのに何日もお風呂に入ってなかった時とか、城内で滅多にない刃傷沙汰に遭い返り血を浴びたのでそれを洗い流したり…

過去の事例をいくつか並べて説明されたけどさ、刃傷沙汰なんてあるんだね。

王子の関係者では、城に侵入してきた族との交戦で返り血を浴び、その報告を上司にするために体を洗って…ていうのがあったそうな。

そんな浴室での一人身体洗浄作業中です。

いやぁ…

凄いんですよ、垢が!

見習いくんの話だとハンスさんって、投獄されてから約20年、正確には19年くらいだそうだけど、その間、一回もお風呂には入ってないそうな。

…当たり前か。

地下牢の囚人にお風呂を振る舞う奴がいるとは思えないわ。

で、この身体、中身は俺だけどガワはハンスさんのものを素材に…顔や形は変えてるらしい。

ただ、髪の長さや髭の濃さ、こびり付いた垢は是正できなかったんだと。

ホントかね? めんどくさかったのか?

顔や形が変えられるんならそっちも出来そうな気もするけどね。


と思いながらもう15回目の垢落としです。


最初に湯船から汲んだお湯を頭からかぶり、石鹸でガシガシと擦ったんだけど、全く泡が立たなかった。

代わりに髪の毛から真っ黒いお湯が流れ出てきただけだった。

しょうがないんで、何度かお湯をかぶり黒いお湯を流すを繰り返し、なんとか髪の毛から泡が立つくらいにはなった。

ついでに顔を擦ってみたらこれがまた大変。

黒い垢がボロボロと溢れ出てきて止まることがない。

置いてあった柄のついたタワシみたいなヤツで全身をゴシゴシ擦る。

石鹸でワシャワシャする。

頭を洗いつつ顔を擦り、髭、腕、胸、腹と洗っていく。

不思議なことに、湯船は減った分のお湯が自動で補給されるようだ。

思いっきりザバザバと大盤振る舞いのお湯かけ作業をしてもお湯が全然なくならない。

どういう仕組みか後で聞いてみようっと。


…なんとか黒いお湯も垢も出なくなったんでゆっくりと湯船に浸かる。


………………


はぁ…極楽極楽。

こぢんまりとした一人用の浴室って言ってもお城にある貴族様用ですから、ウチの浴室とは違うんですよね。

湯船は当然、足を伸ばして座れるし、3人くらいは余裕で入れそう。

洗い場なんかも広々としていて、普通は使用する人一人に対して頭を洗う係の人、身体を洗う人、足を洗う人と三人の三助さんがつくそうな。

俺には? と思ったけど、俺はまだ貴族じゃないし急な入浴だったんで係の人を呼ぶ時間がなかったんですって。

…ま、知らない人に身体を洗われるのってちょっと嫌かも。

そういうお風呂に行ったことはあるけどさ、あれとはまた違うしね。

そんなこんなで浴室から出て脱衣所に戻るとリックくんと知らない女の人が二人、待ち構えていました。

「さっぱりしたか?」

というリックくんの問いかけに

「あぁ、久しぶりすぎて時間がかかっちゃったよ」

と答え

「で? その方たちは?」

と聞いてみた。

「王様に会うんだ。きれいにしないとな」

と言ってリックくんが俺の目の前に椅子を置く。

そしてここへ座れという感じで指をさすので言われるままに椅子に座った。

するとすかさず女性二人が俺の後ろと前に移動し床に持っていた何かを置きそれを広げた。

あ、ハサミとか櫛とかガラスの瓶とかが入ってます。

多分…髪の毛と髭を整えてくれる人たちってことですかね?


あ…すみません、私、今、タオルであそこを隠しただけの状態ですけど…

大丈夫でしょうか?

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