お腹がへりました。
俺は急いで気絶している男の服を剥ぎ取った。
そして自分の服を男に着せ、代わりに男の服を着てみた。
サイズはちょっと大きいが小さいよりはいい。
しかも臭い。
いや……臭いのは自分の身体の方か……
お? ポケットに何やら入って……
鍵か。
たぶん、ここの鍵だろう。
……
でも、目の前の扉は開いている。
鍵は必要ないな。
とりあえず、元のポケットに戻して辺りを窺う。
……
特になんの声も音もしない。
俺は、よしっと思い、スッと立ち上がるとクラっとした。
が、なんとか大丈夫そうだ。
こんなところからはサッサとおさらばしないと!
……って、ここはどこなんだ?
しかも、この格好で出て行っても入れ替わったことはバレバレだ。
んじゃどうする?
どうしようか、と思った瞬間、食べ物の匂いがしてきた。
ぐぅううぅぅぅ……・
盛大に胃袋が文句を言う。
ふぉぉおおぅ……腹へったぁ……
そう思った途端、身体から力が抜けていくような気がして、その場にひざまづいてしまった。
ポーション飲んでも腹は膨れない……
メシを! メシを食わねばっ!!
俺は四つん這いで牢屋の外に出た。
すると不思議な現象が起こった。
……
なにやら目の前でユラユラするものがあるのだ。
あぁ、飛蚊症だな……こんな暗い場所でも見えるようになってしま……
いや? 違う。
俺はその場にピタリと止まり顔の前で手を動かしてみた。
……
……
!!!!!!!!!!
こ……これはっ!!
髪の毛!!!
とうの昔に死に絶えたものだと思っていた、あの髪の毛がぁ!!!
俺の目の前で揺れてイルゥゥゥゥ!!!
……
はぁ……確かにあの恋い焦がれた髪の毛だが、半端ない長さと量だ。
しかも……ねっとりしてベットリしてる。
最悪だ……
『過ぎたるは及ばざるが如し』
昔の人は良いことを言ったね。
あれだけ欲しがっていたものだが、こう多くて汚いと……邪魔だわ。
俺の髪の毛によって発生した歓喜は一気に冷めてしまった。
途端に「ぐぅぅ」と胃袋が再び文句を言ってきた。