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王子様ったら、無茶振りをする。


扉を潜り短い廊下を過ぎると、そこは太陽の光が燦々と降り注ぐ真っ白な部屋でした。

壁も天井も真っ白。

床は青を基調とした複雑な模様が描かれた高級そうな絨毯。

その上にはどっしりとした造りの小さめのテーブルが一つ。

その周りにはこれまた重厚な造りの椅子が数脚。

左側にも右側にもさっきと似たような木の扉があり、そのどちらの横にもアンティークっぽい食器棚がある。

おっと、俺が入ってきた側の壁にもちょっと小さめの扉がある。

これは…使用人用とかだろうか?

窓の外には向こう側の建物の壁が見える。

その窓のところには革張りっぽい二人掛けのソファがあり、そこに王子が脚を組んで座っている。

「やあ、いらっしゃい」

そういって左手をあげニッコリと笑顔を向けてくる。

…はぁ…これは、すごい破壊力だ。

こんなイケメン見たら、女子はイチコロだわ。

かくゆう俺も惚れてしまうかもしれん…

「いえ、遅くなりました」

なんて心にもないことを口から吐き出しながら更に部屋の様子を眺める。

天井には無骨な鉄製っぽい大きな室内灯がぶら下がっている。

あ、その天井、何やら彫刻っぽいものが一面に…

「あぁ、それは我が家の家紋にも描かれている龍だよ」

馬鹿面下げて天井を見上げていた俺に、王子がそう答える。

「古龍ですか?」

何気なくそう返したが

「うーん…それがさ、初代が龍退治にいったけど逆にやられて…それが縁で仲良くなったっていう伝説を元にした彫刻なんだけど…」

「けど?」

「口伝だけで、何も証拠が残っていないんだ。三代目まではその龍と交流があったそうなんだけどね」

え? そんな大事なことを記録してなかったんですか?

「しかも四代目くらいの人が『龍が怖い』とか言って交流を絶っちゃったらしいんだ」

マジですか?

そんな大事な縁、切っちゃったんですか?

えらい勿体無いと思うんですけど!

「全然、何にも残ってないんですか?」

「うん。何にも」

そういって王子は肩をすくめる。

「じゃあ、本当かどうかも怪しいじゃないですか」

王子は俺の言葉を聞いてクスッと笑い

「そうなんだよ。今じゃ僕も含めて王家の人たちはほぼ嘘じゃないかと思ってるんだ」

「あ! 昨日、グロゥスさんに聞いておけばよかったですね」

「あぁ…そうだねぇ」

…あれ? なんか反応が悪いな。

「でも…嘘だってわかっちゃうのも夢がないしね」

…なんだろう…そう、か、あの時もすごい恐れ多いって感じだったわ。

「…そうですね」

ま、特に実害もないからね。

伝説のままでいいんだろうね、きっと。

「ところで、君に来てもらったのは他でもない」

そう言いながら王子がソファから立ち上がる。

「今日、僕の父親に会って欲しいんだ」


……へ?

…思ってたんと違うんですけど…


「あれ? 王子様? 確かお宝の配分を決めるってことじゃ…?」

想定外の言葉に多少混乱するが、なんとか最初に頭にあった言葉を吐き出す。

「お宝の配分を決めるのは当然のことなんだがね」

とここまで言って王子がちょっとだけ口籠った。

「…昨日のことがどうやら父の耳に入ってしまったようで…」

昨日のこと? えーと…それってどれのこと?

「グロゥスさんのことですか?」

「いやいや、古龍様のことは誰も話してはいないよ」

グロゥスさんの話をしたら、なんかまた王子の顔色が…

そういえばグロゥスさんに会った時にえらい汗かいてたっけ。

すんごいビビってたし…

やっぱりアンタッチャブルなんですかね? 古龍様のことは。

「じゃあなんですか? まさか俺の脱獄の話ですか?」

それだとまたヤバイ!

何せ王子と一緒に教会の地下牢から脱獄しちゃったんだし!

まぁ、王子はバックに国が付いてるからそれなりに隠蔽とかできちゃうんだろうけど、俺の場合は完全な〝脱獄〟!

普通なら捕まってまた投獄されるか…死刑?

「いやいやいや、そっちでもないよ」

「え? じゃあなんですか?」

「……」

おっと、王子が下向いちゃったよ。

よっぽど言いにくいことなんだろうか…

「君の治癒…白魔法の件なんだ」

「え?」

そっち?

「白魔法…ですか?」

「そう」

俺はなんともいえない顔になり

「ただの治癒魔法ですけど?」

と首を傾げながら小さく呟いた。

「いやいやいや! あんなスゲーの見たことねぇって!!!」

ここで急にリックくんが話に参加してきた。

横でメアさんがうんうんと大きくうなづいている。

「でも、教会の最上位クラスの治癒士なら欠損でも修復できるって聞きましたけど…」

…って言ってたのは神様かっこ見習いの人ですけど…

「とんでもない! あんなにキレイにしかも素早くできる治癒士は枢機卿クラスでも数えるほどだよ!」

…あれ? これってやっぱりヤッチマッタってやつ?

でもアイツ、欠損修復するのはそれほど珍しいことじゃないって…言ってたはず…ですよ…ね…

「実は王国では、教会関係者以外で欠損修復ができる白魔導師はいないんだよ」

……な、なんですとぉぉぉ……

目立つことだけは避けようと考えてたのに…

初っ端からですか?

でもさぁ、助けてくれた人が目の前で瀕死になってたら助けるでしょう? 普通。

…やっぱりダメだったかぁ。

もういっそ〝治療院〟でも始めるか。

いや待て。

白魔法がすごいんで王様に会うんだよね。

それって…

「父曰く、そんなすごい白魔道士なら是非とも王国の貴族になって貰いたいって…」

貴族? マジですか?

「いやいやいや!!! 無理っす!!! 完っ全にお断りしますっ!!!」

俺は全力で、体全体を使い否定したっ!!

そして徐々に後ずさる。

すると、王子が苦笑いを浮かべながら右手を差し出しながら近づいてくる。

「申し訳ないが、これは国王の決定だ。覆ることはい」

……終わった……

俺の夢の転生生活…

……あれ? よく考えたら俺、こっちの生活、なんの計画も立ててなかったわ…

来る日も来る日も剣の修行と白魔法などの練習に明け暮れてた…よ。

おかげで転生後のことなんて何にも考えてなかったわ。

…とはいえ…

貴族はないわぁ。

何にも考えてなかったけどさぁ。

…でも、拒否権はないんだ…

……

んじゃぁ、しょうがないか…


「すみません、とりあえず、お風呂に入りたいんですけど」

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