新キャラは「神様」改め「土下座君」です。
2024年もよろしくお願いいたしまっす。
真っ白な世界で固まる二人。
ショック死寸前の俺に、土下座を続ける神。
この世の混沌の全てが集められたかのような心境に襲われ、頭の中が真っ白に……
本当に真っ白になったが、意外と早めに我に帰る。
うーーーーん……こりゃ困ったぞ。
どう言ったところでどうせ元には戻らないだろう。
戻ったところで…って感じだしね。
ハンスの本当の身代わりさんは誰で今どうしてるのか?というのはもうどうでもいい。
俺の本当の人生ってどうなってたのか?とかいう『if』のことも意味のない話だ。
で、そうなると、前に進むしか道はない。
スタートしてしまった俺の第二の人生。
これをどう充実させていくか、俺の思い通りに進めていけるか、だ。
だってこの土下座神様がいろいろやってくれるんだろ?
このボンクラ神のおかげでこういう事態になってるんだからね。
あぁ、それに、いろいろややこしいことを言ったらまたつまらないミスが起こりそう。
下手したらドッペルさんとゲンガーさんが更に分裂してドツさんとペルさんとゲンさんとガーさんになっちゃうかも知れん!!!
…いや…面白そう…かも…
…じゃねぇ!! アホか!
ヤバイ! 思考がヤバイ方向に!
分裂は、ないか。
ドッペルさんとゲンガーさんの自我が入れ替わって…いや、どっちも俺なんだから入れ替わる必要はないのか…
となると… やっぱこのままか。
よしっ!
俺は意を決し、すっくと立ち上がる。
「おや、心を決めたようだね」
おっと、そういえばもう一人いたっけ。
そう思いながら、クウちゃんを見下ろす。
「まぁね、このまま君たちの世界にお世話になるしかなさそうだしね」
「そうそう♪ 諦めが肝心だって。僕が関わった勇者とか転生者とかも結局はなるようにしかならないんだって諦めの境地に至ってたよ」
「諦めの境地に至る勇者ってどうなの?」
「いやいや、そういう方が生き物的には強いんじゃない?」
「…そうかもね、いや、どうだろう」
俺はそう言ってニヤリと笑い、土下座神様の方に顔を向けた。
…ピクリとも動かない。
綺麗な土下座だ。
そんな神様の後頭部を軽く踏みつける。
「で?」
「おー、アイツが来たって?」
唐突に背後から聞きなれたヤツの声が響く。
急な悪寒に襲われながら、ゆっくりと首だけで振り返ってみる。
ゲッ! 剣の神様!!
「おう! 元気そうじゃねぇか!」
そこには、にこやかにいやらしく笑う剣の神がいた。
「お?」
剣の神様、俺の顔を見てから足元に視線を落とし、意外そうな表情を浮かべて土下座神を指差した。
「プッ! まーたなんかやらかしちまったんか?」
剣の神様はそう言ってスタスタと近づいてきた。
「あぁ、じゃあなきゃお前をここにまた呼ぶわけねぇか」
その通りです。
神様の言う通り。
「宿で寝てたらいつの間にかここに呼ばれてましたよ」
俺は神様の後頭部に乗せた足をグリグリしながら、剣の神様に愚痴ってみた。
あの修行中もこんな感じのやりとりが多かったような気がする。
「ガッハハハ。まったくこいつはまだまだだな! ま、まだ見習いってこともあるしな」
「…………み、な、ら、い?」
俺は剣の神様のある言葉に反応し、半笑いの表情を貼り付けたまま横に顔をゆっくりと振り向けた。
「おっと…」
剣の神様、慌てて太い両手で口を塞いでいる、が、もう遅いですよ。
「師匠。この神様が見習いだっていうの、初耳なんですけど?」
「そりゃそうだ! 今、初めてお前に言ったんだからな!」
「なんでずっと黙ってたんですか!」
「んなのは決まってんだろーが! 言わないでくれって言われたからに決まってんじゃねぇか!」
……俺は再び絶句。
……
なに? 神様ってみんなこんな感じなの?
バカなの? 剣の神様だと剣しかすごくないの?
他のことはなにもできないの?
人の気持ちを察するとか、嘘をついちゃいけないとか、そういう普通のこと、できないの?
…いや、気づいていたはずだ、俺自身も。
こいつらはバカだと。
剣の神ではなく、剣のバカだと。
じゃあこいつはなんのバカだ?
…なにひとつうまくできない…ってことは…ただのバカじゃねぇの?
いやいや、そんなはずはない!
この白い空間を維持するのもこの土下座くんの能力のひとつだそうだし、俺の魂やいろんな人の魂を呼んだりすることもできてるしなぁ。
…
とにかく!
「これから、どうするの?」
土下座君に聞いてみた。
「間違った配置になってしまったので、配置の修正をし、三畑さんがハンスの後継ということで登録し直しました」
「……」
「そのペナルティとして、私の神格がひとつ、下がりました」
「……」
「それを含めての再度のお願いです。ハンスの後継として第二の人生を生きてください!」
「…了解」
「え!?」
土下座君が驚いたのか、思いっきり顔を上げた。
「……嫌じゃないんですか?」
「フン」
俺は土下座君を鼻で笑い
「嫌に決まってんだろ。ていうか、嫌ならやらなくていいの?」
「……」
「やらなきゃいけないんだろ?」
彼が顔を上げたため、目が合う。
俺は居住まいを直し、彼の前に正座をする。
「なんのためのハンスの後継者だかは問わない。どうせ教えてくれないんだろうし。だったら甘んじてこの状況を受け入れるしかないじゃん」
土下座君、なんか目がウルウルしてる。
ここは感動の…
「ってことで! それ相応の見返りはあるんだろうな」
俺はそう言ってニヤリを笑う。
あ、一瞬で土下座君の涙が引いたよ。




