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転生者は、何故か皆んな、日本人?


『邪魔者には先に行ってもらったわ。……で? お主、何者じゃ?』


え? 何? 俺?……なんのことです?


『お主、その飛び抜けた魔素量と儂を恐れぬ心、もしや転生者か?』


……ご名答。

「わかります? おっしゃる通り、私は転生者です。多分」


『やはりな。儂と戦った勇者といい、先ほど召喚された者たちといい、皆、お主と同じような雰囲気を感じられたのじゃよ』


「そうですか……ということは、勇者も召喚者も俺の同郷ということですかね?」

俺は小さくため息をつく。

……なんで俺はここに転生したのか……

勇者も召喚者も俺も、こっちの都合で勝手に連れてこられた者たちってわけだ。

このグロウスさんを倒した勇者も、さっき召喚された者たち……たち? 複数来たの?

「……何人呼んだんですか? 今回は」


『五人じゃ。男一人に女四人じゃ』


……ハーレムじゃん!

羨ま……いやいやいや! 勝手に攫われて魔王と戦えって……あれ?

「今回の召喚理由はなんです?」


『ん? さて……理由までは知らんのぉ。儂もいきなり戦いを挑まれ首だけにされた挙句こんな地下に連れてこられた被害者じゃし!』

おっと、お怒りモードに……

それにしても、異世界となれば魔王いるんだろうね……あ、さっき言ってたわ。魔王を倒して解放されてみたいなこと。

いや、どうでもいいか。考えたところで今の時点では俺には関係なさそうだしね。

あぁ、それにしても……俺も早くここから出たいんですけど……


「さて、と。長居は無用ですって。さっさと脱出しないと……」

と言いかけたのがフラグになったのかどうか。


「何者だ!」

と突然背後から誰何された。

いやぁん……ピンチじゃん。



そぉっと振り返ってみると、そこには派手に着飾ったオッサン一人と皮鎧?っぽい軽装備で抜刀している兵士が二人が立っていた。

「通りすがりのオッサンですが……」

俺はそう言ってエヘヘと愛想笑いを浮かべ腰を折り頭を掻いた。


「馬鹿を言え!!!」

言うや否や兵士二人が剣を振りかざし……

「「!!!」」

……

一瞬の出来事でした。

剣を振りかざした兵士があっという間に下半身だけになって床に転がった。


『フン! 儂に剣を向けるとは身の程を知らぬ輩め』


「ヒッ!」


あーあ。

着飾りオジサン、右見て、左見て…

半分で血塗れの兵士の姿を見て腰抜かしちゃってるよ。

そりゃそうだわね。

……かくゆう俺もションベンちびりそうだわ。

いや、ちょっとちびったかも……

あ〜……死体からドクドク赤い血が流れ出てるよ……

上半身は……うわっ! 奥の壁にベットリと上半身だったものが……

リアルだわぁ……

これほどグロい死体は見たことないし、見たくなかったわ。

……吐きそう……


『さて貴様。生かしてやった理由は判るの?』


……


「グロウスさん、無理っぽいっすよ?」

ガクガク震えちゃっててなんも聞こえてないみたいっす。


『……チッ。儂に恥をかかせおって』


そうグロウスさんが一言文句を言うと、着飾りオジサンの頭上にデッカイ岩が現れた。

魔法? いきなり何もなかった空間にあんなデッカイ岩を生み出して……それを空に浮かべるって……

すげーな、ビズリー…いやいや魔法!


『さて質問じゃ。かの勇者の居所を教えよ。教えれば楽に死なせてやろう。教えねばゆっくりと殺してやろう』


うっわっ! 死ぬのは確定なんですね? それで喋りますか?

「ゆっくりってどうなるんです?」


『いい質問じゃ。上の石をゆっくりあやつに下ろしてやるんじゃよ。ゆっくりとな』


石? どう見ても岩っす。あぁ……ドラゴンから見ればこの大きさは石なんですね。

「逃げられません?」


『無理じゃよ。ちゃんと床に拘束してあるわ』


着飾りオジサン、俺らの会話が聞こえたのか、あわてて自分の頭上に視線を……

驚愕! まさに驚愕の二文字を体現した顔!

「……アカデミー賞、取れそうだね」


ま、この異世界じゃアカデミー賞は取れないし、これは演技じゃなくて現実だ。

……

着飾りオジサン、もう恐怖で声も出ないってやつですね?

「あれじゃ喋れないんじゃないですか?」


『フフ……』


あれ? どうでもいいの?

ってことは、ただの憂さ晴らし?


『……否定はせん。今のこの身体では勇者との再戦は無理じゃしの』


「じゃあもうさっさと行きましょうよ。こんなとこには居たくないでしょ?」


『お主の言う通りじゃの。いきなり斬りつけてきおったんでちょっと気が立ってしまったようじゃ』


グロウスさん、そう言うとバチリと瞼を上げ俺を見てきた。

おっと、初めまして。


『ふむ、お主に分けてもらった魔素のおかげで動けるようになった。礼を言おう』


「そんなことはいいですから、早く行きましょう」


『フフフ……すまんの。では参ろうか』



エファンゲーリウム聖教会エーレシュタート支部の司祭であるヴァルター・シェーシングは目の前で古龍と男が消え、ホッと一息ついた。

しかし……自分の両脇には下半身だけの護衛二人が無残な姿で横たわっている。

一体なにが起こったのか……


「……」


考えがまとまらない。

マテウス枢機卿から〝儀式の間〟の後始末を頼まれ、やってきただけなのに。

支持されたことは、並べられた魔晶石の回収と頭だけになっている古龍への〝拘束魔法〟の重ねがけだけだったはずだ。

しかし、古龍以外誰も居ないはずのこの部屋に……

と、ここまで思い出し身体を起こそうとしたのだが、まったく動かない。


「!!!」


慌てて頭上を見れば、もう手を伸ばせば触れるほどの距離に岩が迫っていた。

焦る気持ちとは裏腹に、両手両足は床に固定されて全く動かない。


「ヒィ!」


そうこうしているうちに岩が頭に触れ、思わず悲鳴が漏れる。

私が何をしたというのか!

神は! 神はなぜ私をお助けにならないのか?

やはり、今回の召喚に対する報いなのか!?

それなら私ではなく枢機卿が!

「う、ぐぇ!!!」


グロウスヴァイスハイトとクルツの消えた部屋に、くぐもった男のうめき声と何かが潰れていくような音が、した。

やがて声も音も収まると、巨大な岩はその役目を終え、微かな光を放ちながら魔素へと変換していき、やがて消えてしまった。

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