僕っこ忍者メアさんは、人使いが荒いです。
俺は意を決して床の穴に降りていった。
狭い階段を一歩一歩ゆっくりと降りていった。
彼女、メアっていうのか……
なんて思いながらちょっと長めの階段を降りると、そこは行き止まりだった。
が、目の前の壁にドアノブがポツンとひとつ、生えていた。
一応、壁に耳を当て、壁の向こうの様子と探ろうと……
あ、ここで俺の魔法を炸裂させてやれ!
……使える魔法は……ないかな?
ありました。
目をつぶりドアに手を当て『透視』をかけてみると……見えない。
なんか魔法を通さないようにしているような感じだ。
『無駄無駄。ここは魔法無効化の設定がしてあるのさ』
おっと。
バッグの精霊くん、また急に喋り出したよ?
『なんだ急に。今まで静かだったのに』
『そりゃね。他の人がいるところで喋ったりして、聞かれたりしたらマズイっしょ? あ、喋ってるって言ったっていわゆる「念話」ってやつだから、普通の人族には聞こえないんだけどさ。こういうのは念には念をっていうじゃない? 獣人とか森人とか王族とか魔道士とか裏の稼業のやつとか転生者とかの中にはそう言う念話に長けたやつが多いのも事実なんだよね。だってだってそれでバレて取り上げられたらまたつまんない奴にこき使われたり、家宝だとか言われて倉庫にしまわれちゃってりしてさぁ……僕、君のこと信用してるんだよ? 何故かって? それはね? なんとなく波長が合うっぽいからなんだよね。わかる? 波長。きっとうまくいくって思ったから声をかけたんだ! だって君もこう思うでしょ? バッグなんて使ってなんぼ! 飾って眺めたってなんの役にも立たないって! なにせ僕は超精霊魔法の魔導具! まさに国宝級のバッグなんだからっ!』
『はいはい』
……国宝級なら飾っちゃう人、多そうだなと思ったが気持ちに出ないようにしてみた……なんとかイケたようだ。
『もっとみんな僕のことを崇め奉れ……とは言わないけどさ! 凄い!とか最高!とか言ってもいいと思うんだよねぇ』
『……さいこう……』
『でしょ? でしょ? もっと褒めて褒めて! で、使って使って!』
一抹の不安を感じつつ、俺はそっとドアノブを押し中を覗いた。
そこは……地獄だった。
「う……げ」
『うわっ!!! さいてーーーー!!!』
扉の向こうにはちょっと広めの四角い部屋があった。
広さは……20畳ほどか?
壁にはランタンのような灯りの道具が複数備え付けられていて部屋の中はそこそこに明るい。
そして、中はひんやりしていた。
まるで冷蔵庫の中のように。
……
いや、そんな細かいことはどうでもいい。
目の前の壁や床、テーブルや椅子、そして天井に至るまでおびただしい量の血糊が飛び散っている。
さらに鼻を突く生臭い匂い。併せて臭う鉄っぽい感じは多分血の匂いだろう。
そして床やテーブルの上には人?の身体の一部だと思われる腕や足、内臓などがガラスの箱や器に入れられた状態であちこちに置かれている。
どす黒い赤っぽい液体の……って絶対「血」だろう。
その血がたっぷりと入っているガラスの瓶も何十本と並べられている。
なかには青いのやら緑のものまである。
これも血なのか? それとも何かの体液とか……か?
あれ? テーブルとか石の台とかいくつかあるけど、そこにはビッシリと何やら複雑な魔法陣が書き込まれてるし……これって……血で書いてるよね。絶対。
うわぁ……怖い怖い……
左のほうには……暖炉? いや、鍛治に使うカマドだろうか。なんかテレビで見たことある感じのヤツだ。
横っちょのは石が入った木箱がいくつもある。さらに槌やら金床やらがあり、数本の剣やら盾やらが無造作に置かれている。
なんだ? ここは……
「……」
言葉にならない。
何か「儀式」とかの部屋か? それとも何か魔法的な鍛治作業をする部屋か?
『こ、ここって……うぇっ! 気持ち悪っ』
……吐くならバッグの中にお願いします。
俺にも吐き気が襲ってくるが、持ち前の貧乏性でなんとか堪える。
なにせ食事をしたのが久しぶりだったんで。
もういいだろうと思い、踵を返して階段を戻ろうとした瞬間、目の前の壁の一部から何やら気配がして……壁が動いた。
ギィ……ィィ
「!」
いきなり目の前の壁に切れ目ができ、鈍い音とともに内側に開き始める。




