俺は変態ではない…はず…
!!!!
俺は後ろに人の気配を感じ、慌てて振り返った!
見ると黒装束の彼女と金髪男前男子が立っていた。
……
……
無言で相対していたが、彼女が声をあげる。
「そのローブ」
おっと。
バッグの話か独り言をブツブツ言ってたことかと思ったら、服の方か。
「多分だが、俺の服のはずだ。そこに掛けてあったんで返してもらった」
そう言って俺は服がたくさん掛かっている場所を指差した。
彼女は俺の指差した方を見ると目を見開いた。
「王子の服もありますね」
すげーな、一発でわかるのか?
「そうかい? じゃ、遠慮なく僕の服も返してもらおうか」
おぉ……イケメン王子……声の音色もイケメンだぁ……
「ところで君は?」
そうか、まだ挨拶もしてなかったっけ。
「え、っと、わたくしクルトと申します……投獄されておりました、しがない魔導師でございます」
そう言って片膝をつき右手を胸に当て首を垂れた。
確か、こんな感じにするのが礼儀だったような……
「おや、丁寧な挨拶だね。ありがとう。僕はこの国の第三王子ワルター・ヨヒアム・ドライスだ。よろしく」
と応えてくれる。
なんともいえない人懐っこさを感じる。
いい人なんだろうけど、王族としてはどうなんだろうか。
「王子、着替えを」
忍者女に急かされて、彼はそそくさと囚人服のような服を脱ぎ始めた。
お?……それなりに鍛えられた身体っぽい、かな?
なんて思いながら王子の着替えを眺めていたらスッと人影が目の前に現れ、大きめのマントのようなもので視界を遮り始めた。
「貴いお方の裸なので見てはいけない」
?
いいじゃん。男同士だし。
と思ったが彼女の顔が微かに赤い。
しかも俺を見る目つきが厳しい。
はっ! これは……王子に惚れてるな。
俺は彼女の態度についニヤケてしまったのだが、彼女はそう取らなかったようで
「だ、男性の裸を見てニヤけるなんてっ!」
(ま、まさかっ! これが!)
え? いやいやいや! そっちじゃないって! 俺はストレートだって!
「いやいや、俺は普通だ。そもそも俺が笑ったのは君が想像しているような事とは違うぞ?」
と一応断りを入れてみたが
「変態はみんなそう言う」
(変態っ!)
と言ってきた。
いけない!
こんな汚いおっさんに王子の裸を見せるなんて!
……
え? 凝視している?
ま、まさか!
これが噂のBL !?
ゴクリ……
ダメダメダメ!!!
高貴な王子とこんな汚いおっさん…と…ゴクリっ!
それはそれで…逆に……
な? なぜニヤニヤしてる?
こ、これは……まさしくっ!
へ、変態!!!!
射殺すような視線で俺を見ないでほしいわ。
いやいや、俺はストレートだぞ。多分。
なんて思っていたら王子の着替えが終わったようだ。
「おまたせ。さて、どうやってここから抜け出すんだい?」
よかったぁ。
話題が変わりそうだ。
「それより、この床の扉、怪しい」
え? とびら?
……すみません……バッグに気を取られてすぐ脇の扉に気づきませんでした。
……?
ん? なんだ? なんか気になるね、この下。
忍者女はスッとしゃがみこむと、床の取っ手っぽい輪っかに指をかけ、ゆっくりと扉を開けた。
なんか既視感がある……あぁ、台所にある床下収納の扉っぽいわ。
お酒とか梅干しの入った壺とかあったりして……
そんなことを思いながら…脇から覗き込んでみたが仄暗い空間が…あるだけ…
あ、階段がある。
「外に行けそうかい?」
怪訝な顔の王子の問いに馬乗り女は
「嫌な気配はしますが……人の気配がありません」
あ、こいつ、王子には敬語だわ。
……あ、いや、普通か。
にしても、下に向かって続いてる階段見れば、外に出られそうだとは思えないけどねぇ。
「下、見てみますか?」
俺は一応、本当に一応、だったんだけどね。
この中では一番えらいであろう王子に尋ねた。
「うーん……正直な話、僕としてはこんなところからはさっさとお暇したいんだけど……外に繋がってたらラッキーだよね」
うーん……王子様、ここが地下だってこと、知らないんですか?
地下の下は更に地下ですって。
「わかりました。変態魔導師。見てきて」
「え? 俺?」
驚いた!
行くのかよ!?
しかも俺かよ。
てか、変態魔導師になったの? 俺の呼び名。
「うん。お願い。私と王子はここで待ってるから」
何そんな小首を傾げて可愛娘ぶって言ったって俺には効かんぞ。
チラリと王子に視線を向けると王子、苦笑いしてる。
うーむ、これは……行かざるを得んか。
「置いてきぼりは嫌だぞ」
一瞬、馬乗り女の眉がピクリと動く。
あっ! ヤベッ! こいつ、ここで俺を置いていくつもりだったな。
アブねぇアブねぇ、一応探りを入れておいて良かったわ。
さらに釘を刺しておくか。
「王子様、ここでお会いしたのも何かの縁。是非、お供させてください」
俺は再び片膝をつき深々と頭を垂れた。
「ふふっ。大丈夫だよ。メアからも『役に立ちそうだ』と言われてるからね」
「チッ」
聞こえないくらいの舌打ちが彼女の口から漏れる。
「わかりました。では、行ってまいります」




