自分の服を見つけました。
考えてもしょうがないんで、俺はスッとその場を離れ、他のドアの中を覗いてみた。
……4つ目は空っぽだ。
……
さて、この小窓のない扉だが、どうも気になる。
とにかくデカイ。
他のドアは標準的な幅の扉であるのに、この扉だけがデカイのだ。
幅は2間の扉が観音開きで合わせて4間。
あ、1間は約180センチメートルだよ。
そして高さも天井まで目一杯ある。
……
これはどう考えても倉庫っぽい。
振り返ると彼女はまだ扉の向こうだ。
……
うーん……どうしようか……
完全に泥棒になってしまう……
いや……今更か。
マルクの服を着ている時点で服泥棒だし、ここにいる時点で脱獄犯だしね。
鍵箱から失敬した中の一つを扉の鍵穴に差し込みクリッとひねる。
で、取っ手を引くと白いドアがゆっくりと横に開く。
……観音開きじゃないんかーい!
俺はそぉっと中に入ると上下左右を確認する。
ビクッ!!!
身体を室内に滑り込ませた途端、部屋の明かりが点いた!
……びっくりした……
……
誰もいないし監視カメラもない。
……あるわきゃないか……カメラ。
中は……カビ臭い。
……それにしても……なんだこれ?
だだっ広い空間の中にいろんなものが入っていた。
正面には槍、剣、盾、鎧……宝箱っぽいのから、ただの木箱もある。
何となくの既視感はある。
……あぁ、これって「蔵」っぽい。
テレビのお宝発見!みたいな番組で出てくる昔ながらの屋敷にある「蔵」。
雑然としていて埃っぽい。
それでも置いてある物はお宝。
……お宝?
確かに部屋の左右には、天井まである棚の中に本やら紙束やら丸い玉やら四角い箱やらなにやら煌びやかな物たちが並んでいる。
そして、左側の棚の前には服。
大きめのハンガーラックが数種類、ずらりと並び貴族っぽい服やら魔法使いっぽいローブとかがビッシリと掛けられている。
……しめしめ、ここで着替えてしまえばいいか。
ざっと見てみたが、特に種類に偏りはなかった。
むしろ色々ありすぎて怖い。
さっきのマルクの着ていた服っぽいのから立派な装束の施された分厚いローブやら上着やら……
あれ? このシミ、血じゃね?
これは、どうゆうことだ?
……
あ、そっか、牢獄の奴らが連れてこられる前に着てた服もあるってことかも。
じゃあ、前の俺の服もあるのか?
これは……
王子様の服っぽいなぁ……
……
あ! これいいかも!
見窄らしい擦り切れたローブ!
一見グレーっぽいけど元々は黒いローブだったっぽいね。
一緒になんか靴やら上着やらズボンやら……シャツまである。
そうそうこれって修道院でお勤めをすることになってから揃えたんだっけ……
あれ? 俺、何でそんなこと覚えてるんだ?
……
あっ! そういうことか!
以前の記憶ってことか!
……ってことはだ……
これ、きっと前の俺の服だわ!
ラッキー!
……
まてよ……もしそうなら逆にマズくねぇか?
一発で俺ってことがバレちまうぞ。
……ん?
でもなんだ? この感じは……
妙にこのローブたちに気持ちが引っ張られる。
なんとなくこれを使わないといけないような感じが……する。
…………
……なにかの魔法を掛けられたかのように……
流れ作業のように袖を通し……
ヤベッ!
気づいたら着替え終わってる?
このローブか? この服にかけられた魔法に……
いやいやいや、んなことあるわけないって。
……
でもなんかしっくり来るんだよねぇ。
違和感ないわ。
ちょっとブカブカするけどね。
……この感じは……
完全に俺のものだ!
もういいや。
どうせいつかはバレるんだ。
いい感じだ。
やっぱり着慣れた服はいいいね。
そう言って俺は俺自身を納得させた。
王子の部屋ではまだ話をしているようだ。
声は…微かに聞こえる、が出てくる気配はしない。
なので何気なく振り返り、倉庫の中を再び見回してみた。
『……ぉ』
え?
誰?
なんか声が聞こえたような?




