王子といえば、金髪・イケメンですよね。
……ふぅ……
全くもって不甲斐ない。
こうも簡単に幽閉されるとは……
そもそも私は王様になりたいだなんて一言も言った覚えはないのに……
そう、ハイデッガー伯父を頼った頃から話が変な方向に進んでいってしまったようだ。
死んだルドルフ兄さんの弔いだ!とか言って周りの貴族たちが騒ぎ始めたと思ったら、
「是非ともここはワルター様が先頭に立って皆を導いてください」
なんてことに。
そんなこんなで伯父を頼って相談を持ちかけたところ、伯父が勝手に第一王子と第三王子の王位継承権争いという話を進めてしまった。
最初から伯父はその気だったのだろうか?
いや、私としては全くもって受け入れることのできない話だ。
だが、あれほど否定したにもかかわらず、親父殿まで「そういうのも仕方のないことだ」と言いだす始末だ。
あげく、最初は笑っていた兄貴まで急によそよそしくなった。
いや、兄貴だけじゃない。
王妃や一部の執事、メイドまでもが俺を敵を見るのような目を向けてくるようになったんだ。
……なんなんだ。
「人生ってやつは思い通りにいかないように出来ている」とよく愚痴る親父殿の気持ちが痛いほどわかる。
もうどうしていいのやら……
いっそ、彼らの望み通り、王位とやらを狙ってみてもいいのかもしれないな。
「王子!」
私は興奮のあまり、大声を上げてしまった。
「メアか?」
あぁ……あの美しかった王子が、無精髭を蓄え髪も乱れたままベッドに腰掛けている。
弱々しい……ジュルリ
……これはこれでいいかも……
「救出に来ました」
王子は驚いているようだが当然だろう。
これは私たちの独断で行なっていることだからだ。
派閥の重鎮たちには相談すらしていない。
実行部隊の僕らと脱出先で待機する三人での救出作戦だ。
ただ、穴掘りを頼んだのは裏稼業の魔導師だ。
彼らからこの話が漏れてしまうことはしょうがない。
何せ敵がなんらかの行動を起こす前に王子を救出してしまおうという作戦だから。
「ハイデッガーが許可したのか?」
「いえ、独断で」
私の言葉を聞いて王子はニヤリと笑う。
が、笑いながら眉間に皺が……。
「ありがたい……が、困ったな」
「すみません。ですが地下牢に軟禁されたと聞いて我慢できませんでした」
私は王子の横で片膝をつけ床を見つめた状態で応える。
「それに……」
私は言うべきか迷う。
「ティリッヒのことか?」
「それだけではありません。すでに切り崩しが激しく……時間的に猶予がありません」
そう、派閥の重鎮の一人、ウィリアム・ティリッヒ伯爵が第一王子派に取り込まれたという話だ。
そのため、王子の潜伏先がバレ、中立である教会を頼り、王子はここに身を隠したのだ。
ところが教会も一枚岩ではないようで、第三王子の身柄の扱いで色々と揉めてしまい、一時的にではあるが我々の許可なく王子の身柄をどこかに移動してしまったのだ。
信用していた教会が、実は第一王子派だったのか?と大騒ぎになり、第三王子派の主だった人々は恐慌状態になってしまった。
しかし、調べてみると教会側も困ったいるようだったのだ。
内部では第一王子派と第三王子派と無関係派と両方に取り入ろう派など、バラバラであったのだ。
なので交渉次第ではなんとかなるかもしれないのに、ウチの連中は強大な権力を有する教会相手に皆、及び腰になってしまっており今後の方針が全然まとまらなかった。
しかも数日間ほど揉めているうちに一人、二人と第三王子派から第一王子派に人が流れ始めてしまい、さらに収集がつかなくなってしまった。
そこで、意を決した我々が実力行使に出たというわけ。
「ふぅ……そこまで状況は悪化しておるのか……」
「このままでは第二王子の二の舞に」
そう。
数年前。
現王が「後継者は三人の王子の中で一番優秀な者を指名する」と宣言した。
現王の思惑としては、第一王子の優秀さを喧伝し名実ともに彼(第一王子)を次期王に指名するつもりだったのだ。
ところが、第二王子のルドルフ様がとんでもない行動に出たのだ。
第一王子は王に相応しくないと子飼いの新聞屋を使い、彼の悪事を上げ連ねた。
『第一王子は酒場に行ってはタダ酒を強要する』とか
『有名な鍛治師に剣をタダで作らせようとしたが断られたので鍛治師を国外に追放した』とか
『街中で取り巻きの魔導師に魔術の実験と称し魔術を行使させ幾つもの建物を破壊した』とか
『自分のことを知らないと言った子供を蹴り飛ばした』とか
『街で噂の美人がいれば必ず伽を強要する』とか
……
ただ、第一王子は王位継承権第一位。
そして現国王も彼を王位に就かせたい。
しかも、第一王子は現王妃の第一子だ。
噂では現王ですら王妃には頭が上がらないらしい。
彼女はものすごい魔導師だそうで、その魔力で現王も取り巻きも魅了して逆らえないのだそうだ。
……ホントかどうかはわからないが……
しかし、そんな第一王子に、王妃に、現王に、第二王子は逆らった。
そんなある日、第二王子は城の廊下で警備の衛兵に背後から刺され、命を落とす。
刺した衛兵は駆けつけた衛兵にその場で斬殺され、この事件は不慮の事故として終わってしまった。
第一王子派以外の者たちは混乱した。
簡単に王子が殺されてしまったのだ。
逆らったら殺される。
皆、疑心暗鬼に陥り、王城内は更にきな臭くなっていった。
そこで、第三王子は身の危険を感じ王位継承権の放棄を宣言しようとした。
で、第三王子は伯父にあたるハイデッガー公爵とその話をするために屋敷を訪れたのであるが、そこではまさに第三王子派が結束を固めようと集まっていたのだ。
そして王子を言葉巧みに祭り上げ、勉強と称して支援してくれる貴族たちの領地を転々と移動させたのだ。
しかし、この行動が第一王子派の目には反逆行為と取られてしまった。
そう、その時からはどこに行っても刺客に命を狙われた。
死にかけたことなど一度や二度ではなかった。
もう誰も信用できない。
王位の継承も放棄したい。
しかし……周りがそれを認めなかった。
ハインリヒ・フォン・ハイデッガー公爵やウィリアム・ティリッヒ伯爵が第三王子派を名乗り第一王子に対抗したのだ。
第三王子はなにも言っていないのに……
ただ、身の危険を感じ、親しかったハイデッガー伯父に相談しに行っただけだったのだ。
しかし、いいように政権争いの駒にされてしまった。
しかも今現在、勝手に祭り上げておきながら勝手に梯子を外そうとしている。
ふざけるなと言いたい。
「王子、とりあえずここを出ましょう」
私は考え悩む王子に言葉をかけた。




