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第82話 何故かバレました


 白花を見送った俺はしんと静まり返った自室のベッドで仰向けになっていた。

 先程までこの部屋で、俺の隣で笑っていた白花の顔が脳裏に浮かぶ。僅かな時間だったものの彼女がこの部屋にいた事が嘘みたいだ。

 心無しか寂しさを感じていると、部屋の扉からコンコンとノックの音が聞こえた。


「はいどうぞ」


 ノックに答えると勢い良く扉が開く。姿を現したのは、はなただった。


「豊さーん! 2日間も会えなくて寂しかったですー! ……ん?」


 突如はなたは何かを感じたのかピタッと静止すると、険しい表情でくんくんと周囲を嗅ぎ始めた。


「はなた……? どうした?」

「……女の匂いがする」

「へ?」

「豊さん、私がいない間、この部屋に女の人を入れました?」

「え!? いや……その……」


 まずい……この2日間、白花が釧路に来てこの部屋で一緒に寝たと正直に言ったらきっとはなた(こいつ)はそれはもう取り乱すだろう。何とか誤魔化さないと……。


「さ、さぁ……俺がいない間に伊鈴さんが入ったんじゃないか?」


 咄嗟に思いついた嘘で場を凌ごうとするが、はなたは納得した素振りを見せない。


「んー違いますね……この匂いは……()()()()?」


 なんでわかるんだよ。

 思わず心の中でツッコミを入れてしまう。


「豊さん! もしかして白花先輩が釧路に来ていたんですか!?」

「……ま、まぁな」


 誤魔化しきれないと察し、はなたの質問に肯定の言葉を返すと彼女はわなわなと震え出した。


「そ、そんな……私がいない間に……ちなみに遊びに来ただけですよね? この部屋で寝たからと言って変なことしてないですよね!?」


 もちろんやましい事などしていない。そう言おうとした瞬間、白花とのキスを思い出してしまい一瞬だが言葉に詰まる。

 しかしこれがまずかった。この刹那の戸惑いをはなたは見逃さなかったのだ。


「……ッ!? まさか……豊さん……」

「な、何もないぞ!? お前が考えているような事は!」

「いや、何かありましたって顔してます! 豊さんはすぐ顔に出るんですから! ぐぬぬ……白花先輩め……この2日間で決定的な差を作られてしまった」


 動揺からか爪を噛み始めたはなたに俺はなんとか誤解を解こうとしていると、再び扉からもう1人、室内に入ってくる人物がいた。一ノ瀬会長だ。


「全く騒々しい……何かあったのか?」

「あっ会長、聞いてくださいよ! 豊さんが!」

「なんだ? 時庭豊がどうしたんだ?」

「豊さんが……豊さんが、私達がいない間にこの部屋に女性を連れ込んでは星降る聖なる夜に()()()()を楽しんでたんですよぉ!」

「……はぁ!?」


 その後、弁解の暇も無く、身に覚えのない罪で俺は2人の女性の目の前で正座をさせられた。


「さぁ、話を聞かせてもらおうか? 時庭豊」


 目の前で腕を組み、俺をゴミを見るような目つきで見下す一ノ瀬会長、その隣にはこの3人のなかで最も性夜(誤)の真相を知りたいであろうはなたは鼻息を荒くしていた。


「誤解です会長! 確かに白花はこの部屋に来ましたけど、やましいことなんてしてませんよ!」

「ほう……年頃の男女がロマンチックな夜に部屋で2人きりだというのに何も無かったと? もし、それが事実だと仮定したとして彼女がわざわざこの遠く離れた釧路に来た理由は?」

「それは……俺に会いたかったそうです……」


 誤解を解く為とはいえ、これを自分で言うのは少し恥ずかしい。それにまだ疑いが晴れたわけでは無さそうだ。俺の答えに納得がいかないのか、一ノ瀬会は相変わらず凄い剣幕、はなたはジト目でこちらを睨んでいる。

 しかし少しすると一ノ瀬会長が溜め息を1つ吐いて視線を俺からはなたへ移した。


「なぁ涼森はなた? 私は時波白花と直接話した事が無い。実際に彼女はどんな人物なんだ?」

「白花先輩はいっつも『豊! 豊!』ってとにかく豊さんラブなんですよ! 私にとって最強のライバルの一角です」

「ふむ……しかし時庭豊が釧路へ行った事でしばらく会えず、ついに我慢できなくなって来てしまったという事か……そういう事で間違いないのだな? 時庭豊」

「はい、その通りです」


 ようやく誤解が解けそうだとほっと一息つく。しかし俺への事情聴取はまだ終わっていない。


「さて、時庭豊……気になることがあるのだが、時波白花がお前に首ったけなのはわかった。しかし肝心のお前は彼女の事をどう思っているのだ?」

「それは……」


 正直言ってそれは俺が聞きたいくらいだ。俺にとって白花は大切な存在、それは言い切れる。しかし、異性として彼女の事をどう思っているのか……俺にとって白花は何なんだろうか?

 

「ストォォォォォッップー!」


 突如はなたが叫びだし、会話に割って入った。


「は、はなた!?」

「豊さん! 別に言わなくていいです! 豊さんと白花先輩は仲良しなだけでそれ以外はありません!」

「涼森はなた! お前に聞いているわけでは……時庭豊の口から直接聞けばいいじゃないか!」

「いいえ聞きたくありません! 豊さんは私だけを見ていればいいんです! さぁこの話は終わりです! 豊さんこの2日間会えなかった分たっぷり補給させてもらいますからね! さぁ行きましょ!」


 そう言ったはなたに俺は手を引かれ、そのまま部屋の外へ引っ張りだされてしまう。その後は「私と付き合ったらどんなメリットがあるか」というプレゼンを日暮れまで聞かされた。

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