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第75話 訳がわかりませんでした


「はなた!? 今なんて言ったんだ!?」


 足早にはなたへ近づき、先程彼女が言い放った言葉を確認する。

 白花は白い花を持っていないか? 聞き間違いでなければ彼女はそう言った。しかし彼女が知っているはずないのだ。あの白い花が白花の所持品であるという事を知る人物は僅かで、俺とじいちゃんや杏くらいのはずなのだから。


「はなた? あの白い花の事、杏や白花から聞いたのか?」

「い、いえ……違います」


 彼女の返答に俺は更に驚く。今の彼女の言葉は俺達以外に白花の事を知る第三者の可能性を示唆している。ずっと不明だった白花の素性がわかるかもしれない、そう思うと落ち着いてはいられなかった。


「それなら、なんでその事を知っているんだ!?」

「ゆ、豊さん……怖い……」


 少し怯えた様子のはなたに、はっと我に帰る。

なにを興奮しているんだと反省し、深く息を吐いて心を落ち着けてもう1度はなたを見つめた。


「す、すまん」

「いえ……あの、長い話になるんですけど聞いてくれますか?」

「も、もちろん!」

「わかりました。じゃあ一緒に帰りながら話しますね。行きましょう」


  はなたと共に校舎を出て、民宿までの帰路を歩く。そして言っていたように彼女は話を始めた。


「私が白い花の事を知っているのはある人から聞いたからなんです」

「ある人? 一体誰だ?」


 最も重要な事だ。もしかしたら白花の本当の家族かもしれない。

 しかし俺の期待とは裏腹にはなたは首を横に振った。


「すいません……実は私もよく知らないんです。その人が私の家で家族と話していたのをたまたま見ただけですから。でも、その時の会話が()()()()()()()()()()()()()()()()()()の話だったんです」


 なんて事だ……まんま白花じゃないか。


「どんな話の内容だったかはわかるか?」

「えっと……その人は遠い昔に存在していたらしくて、なんでも不思議な白い花が咲いた場所に現れるらしいです。そして彼女を求めてあらゆる部族が争いを始めるほど特別な人だったんだとか……」

「……それだけか?」

「はい、私が聞いたのはそれだけです」

 

 ……だから? 拍子抜けのあまりそう言いかけた。どんな情報が手に入るかと思ったら昔話かよ……せっかく白花の手がかりが見つかったと思ったのに。


「でも特徴が白花先輩そのまんまだし、実は豊さんの家に泊まった時にリビングの鉢に植えられた白い花を見かけたのを思い出して、『まさか』って思ったんです。それにこの話は恵花市の伝承なんだとか」


 俺は首を横にかしげる。生まれてこの方、恵花市育ちだがそんな話は見た事も聞いた事も無い。じいちゃんなら知っているだろうか?


「ちなみに、はなたの家に来た人はどんな人だった?」

「えっと……男の人でした。髪の毛がボサボサでなーんか軽そうな……そんなイメージです」

「ふーん……あっ!」


 突如、頭にある人物の顔が浮かんだ。

 いる……あの花が白花の物だということを知っている人物が……もう1人。


「由良さん……?」


 思わずその名を呼ぶと、はなたが「あー!」と声を上げて反応する。


「そうです! そういえばそんな名前でした!」

「しかし……どうして由良さんがはなたの家に?」


 そう尋ねた瞬間、一瞬だが彼女の明るい表情が曇った気がした。しかし、そんなものは俺の気のせいだと錯覚してしまうほどすぐに元の笑顔に戻り、何事も無かったかのように彼女は口を開く。


「それは……先輩には関係無い事ですよ! 話を戻しますが白花先輩は豊さんの親戚ではないということでOKですね?」

「う……えーと……実はな……」

 

 誤魔化せる方法を頭の中で模索するがもう手遅れだろうと悟った俺は白花と出会い、現在に至るまでの経緯を話した。そして一通りの話を聞き終えた彼女は「むむむ」と難しい表情を浮かべた。


「そうなんですか……自分で聞いておいてあれですが、私にとっては良くない情報ですね……」

「どうしてだ?」

「だって白花先輩は豊さんが大好きじゃないですか! でも親戚だって言うから見て見ぬ振りをしてきましたけど……そうでないのであれば、私の中では彼女も恋のライバル認定です」


 何を言ってるんだこいつは……確かに白花は事あるごとに「大好き」などと好意を伝えてくるがそれはあくまでも親愛や憧れ、それこそ家族や親戚に抱くものと同じ類の感情であって決して恋愛感情ではない。


「あのな? 白花は確かに俺を好いてくれているが、あいつが俺に対して言う『好き』はお前と違うベクトルだぞ?」

「どうしてわかるんですか? 白花先輩が実際に言っていたんですか?」

「いや……そうではないけど……」


 そう言うとはなたは深く溜め息をついて、呆れた表情を浮かべた。


「同じ女として、豊さんに恋する者として言わせてもらいますが――白花先輩は豊さんに恋してます!」

「はぁ!? 白花が俺に恋を?」

「そうですよ! はぁ……また1人ライバルが増えてしまった……」

「……え?」

 

 肩を落とす彼女の言葉に違和感を覚える。


 ……また1人?


「おい、まるで他にも俺の事を好きな奴がいるような言い方だな?」

「はぁ!? あれだけアプローチされて気づかないんですか!?」


 信じられないと言った顔ではなたは俺を見る。そして先程よりも大きい、今日1番の溜め息をついて項垂うなれた。


「今時の漫画でもこんなに鈍い人いませんよ……敵ながらあの人には同情しちゃいますね……」

「なぁ誰なんだよ?」

「言いません! その人の名前を言って豊さんが変に意識し始めたら私にとっては不都合ですから! ほら帰りますよ!」

「あっ! 待てよはなた!」


 ツカツカと足早に歩き始めてしまったはなたの後を慌てて後を追うと、俺の視界には先日見かけた五重奏クインテット流星群のポスターが目に入る。


 数百年に一度の奇跡の夜はすぐそこまで迫っていた。

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