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第70話 垂らしこんでました

 

 釧路での生活が始まって早1週間。


 最初こそこちらの学校に馴染めるのか、新たなクラスメイト達とは上手くやって行けるのかなど不安だらけだったが、蓋を開けてみれば想像以上に充実した日々を送れている。


 時は昼休み。いつものように自分の机に弁当を広げると隣の席から野崎がポニーテールを靡かせながら机をくっつけてきた。


「とっきにわくーん! 今日も一緒に食べていい?」

「あぁもちろん。でもいいのか? 俺が来て1週間、ずっと俺と昼食を一緒にしてるだろ?」

「え? 凄く楽しいから私は全然大丈夫だけど……もしかして迷惑だった?」

「いやいや! 迷惑だなんてとんでも無い! 野崎が初日から仲良くしてくれたおかげですぐに馴染めたし、これでも感謝してるんだ」

「そっか……良かった! じゃあ食べようか! いただきまーす!」


 食事を始めた彼女と共に俺も弁当の中身を口へ運び始めると、弁当を持ったクラスメイトの女子生徒数人が俺達の元へやってきた。


「今日も仲が良いねーお2人さん!」

「私達もご一緒させてよ」

「ごめんねー朝顔、お邪魔しちゃって!」

「え? 別に良いけど……大人数で食べた方が楽しいし! ねぇ時庭君?」

「そうだな……ん?」


 突如ポケットの辺りから振動を感じる。どうやらスマホに着信が入っているようだ。

 おもむろにスマホを取り出して確認すると、ビデオ通話の着信を知らせる画面が液晶に映る。着信の相手は……杏だった。


 杏の奴どうしたんだ……? もしかして何かあったのか?


 そう思い応答ボタンをタップすると、1週間ぶりに見る相変わらず芸能人顔負けの美女の顔が画面に映った。


『あっ豊! 急にごめんね?』

「杏? どうしたんだ?」

『あのね……昼休みいつも通り白花とご飯食べてたんだけど……豊の顔が見たいねって話になったからビデオ通話かけちゃった……』


 なんだそんな事かよ……心配して損した。


 とりあえず事件が起きたとかじゃなくて良かったと安堵していると画面の向こう側が何やら騒がしい。

 

『杏早く! 早く私も豊の顔が見たいよぉ!』


 スピーカーから杏ではない女性の声が聞こえる。きっと画面には映らないところに彼女もいるのだろうと考えていると、強引に杏のスマホを覗こうとする白花が画面の横から顔を出した。


『ゆたかっ! 豊だぁ!』

「よう白花。元気か?」

『豊がいなくて寂しくてちょっと落ち込んでたけど……豊の顔見たら元気になったよ!』

「そうか……」


 白花は相変わらずのようだ。

 そう思いながら杏と白花の2人が映る画面を見つめていると、自然と口角が上がってしまう。


「時庭君、誰と電話してるの?」


 野崎がスマホの画面を覗く。そして画面の向こう側にいる白花と杏を見ると驚きの表情を浮かべた。


「え……? 何この子達……」

「野崎……?」

「……なまら可愛いじゃん! えっ!? 可愛すぎる!」


 どうやら野崎は白花と杏の類稀な美貌に衝撃を受けたようだ。


「私、野崎朝顔! こんにちは!」

『『こ、こんにちは……』』

「ねぇ時庭君! この2人って時庭君のお友達?」

「ん? まぁそうだな。それよりも野崎、ちょっと近くないか?」


 ビデオ通話の画角に収まる為とはいえ、野崎と俺の体はほぼ密着状態。年頃の女の子にこうも接近されると緊張する。


『……豊、その人誰?』

「野崎朝顔。クラスメイトだよ」

『ふーん……そう、なんだ……』


 白花の表情が少し険しくなる。いや、彼女だけじゃない。杏も何やら冷ややかな表情をしている……なにか彼女達の気に触ったのだろうか?

 

「なになに? 朝顔、何が可愛いの?」

「私達にも見せてー!」


 野崎の反応を見て通話の相手が気になったのか、他のクラスメイト達も俺の後ろに回り画面を覗く。すると先程の野崎同様に全員が衝撃を受けたのか、白花と杏の可愛らしさに顔を綻ばせる。


「えっ何、この人達……かわいすぎない!?」

「凄い綺麗な白い髪と青い目!」

「黒髪の人もなまら美人! モデルさんみたい!」


 俺を囲む野崎を含んだ約5~6人の女子生徒が白花と杏の容姿に見とれて口々に感想を述べる。

 しかし、どういうわけか。一方の白花と杏の表情は……更に険しさを増していた。


『むむむむむ……』

「白花……? そんなに膨れてどうしたんだよ?」

『豊の周りに女の子がたくさん……むむむむ……」


 まるで頬袋に餌を詰め込んだリスのように膨れる白花。そして彼女のと共に画面に映る杏も眉間に皺を寄せながらまるでゴミを見るような目で俺を見ている。

 彼女と長い付き合いの俺にはわかる。これは本気で怒っている時の杏だ。

 

「杏……? なんでそんな怖い顔しているんだ?」

「豊? 帰ったらいろいろ聞きたいことがあるわ……いろいろとね……」


 その言葉を聞いて全身に悪寒が走った俺は少しだけ恵花市に帰るのが嫌になった。

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