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第4話 幼馴染が助けてくれました

急遽、謎の少女を家に連れて行くことになった豊。


言葉が通じず、ドタバタしている間に幼馴染の少女が豊の家を訪問する。


半分裸の謎の少女を、見られてしまい豊は変態のレッテルを貼られる??

 

「つまり、この子が寒さで震えていたからとりあえず家に連れてきたってわけね?」


「「はい、その通りです」」


 俺とじいちゃんの言葉が見事に重なる。


 一連の流れから、茶の間で幼馴染から正座させられた俺とじいちゃんは、虫を見るような目でこちらを見ている彼女に対してこれまでの事情を説明した。


「まったく……最初見た時は驚いたよ?」

 

 幼馴染はため息をつきながらこの問題の原因である彼女を見た。


「日本語が通じないのは置いといて、言葉すら話さないのはどうしてなのかな?」


「俺が聞きたいくらいだよ」

 

「まぁ伝わらなくても自己紹介させてもらおうかな」


 そう言いながら幼馴染は左手を胸に当て、月白色の髪の彼女を見つめ浅い深呼吸をする。

 

「こんばんは! 私、波里(なみさと) あんず! えーと誰かさん?」

 

 杏の言葉を真剣に聞いていたように見えたが、やはり意味が理解できないのか、首を横に傾げた。


「うーん、やっぱり伝わらないよね……」


「だろ? 俺だって何度も話しかけてみたけど、全然駄目だったんだよ」


 当の彼女は相変わらず俺と杏のやり取りを観察しているかのように見つめている。


「豊、ちょっと思いついたんだがよ」

 

 俺と杏がやり取りしている中、正座を崩したじいちゃんが口を開いた。


「ちょうど杏ちゃんが来てくれたし、この嬢ちゃんの着替えは杏ちゃんにお願いできねぇかな?」

   

 名案だ。女性同士なら俺も引け目を感じない。


「確かに俺達じゃ、流石に色々と問題があるし……杏、頼んでもいいか?」


 杏は俺達と彼女を交互に見て、少々考える素振りを見せてから返事をした。

 

「……男2人に着替えさせるわけにもいかないし、しょうがないね」


 杏は早速着替えを持って、彼女の手を引く。


「ほら、伝わらないと思うけどこっち来て!」


 彼女は手を引かれるまま、キョトンした顔で杏に2階へと連れられて行った。


 見張られているのかと思うほどの目線が無くなり、ふーっと息を吐いて、彼女の今後を、再びじいちゃんに確認することにした。


「じいちゃん、あのの着替えが終わったらどうしようか?」


「そりゃあ、警察に連れて行くでいいんじゃないか? 黙っていつまでも家に居させるわけにもいかねぇしな」


 それもそうだなと納得し、ソファに横たわり天井を眺めながら待っていると、しばらくして、杏が2階から降りてきた。


「お待たせ〜!」

 

 杏の後ろには先程じいちゃんが持ってきた白いワンピースを着た彼女がいた。非の打ち所のないであろう容姿に、綺麗な白いワンピースを身に纏った彼女の姿に思わず見とれてしまう。


「おー! これはまた似合ってるなぁ!」

 

「そうでしょ? めちゃくちゃ可愛い!」

 

 じいちゃんと杏が盛り上がっている中、俺はソファから立ち上がり、体を伸ばすしながら再び外へ出る準備を始める。

 

「じゃあ、着替えも終わったことだし、そろそろ警察に行こうか」


「わかったよ。私も帰るかな」


「助かったよ杏。今度お礼は必ずするから」


「おっ! その言葉忘れないからね〜」


 そして杏は家に出る前に月白色の髪の彼女を見て、ニコリと笑う。


「それじゃあ元気でね!」


 キョトンしている彼女に杏は別れを告げ、家に帰っていった。直後に俺達も彼女の身柄を警察に引き渡すため、捨てる予定だったサンダルをなんとか彼女に履かせてから、車に乗せて交番に向かった。


 ――数時間後、交番から帰ってきた俺達はいつものように「ただいま」と言いながら、玄関で靴を脱ぐ。


 脱いだ靴を綺麗に揃える、俺は溜め息を吐いてこう言った。


「はぁ……ほら、こっちこいよ。サンダル脱がせてやるから」


本来ならば住人は2人だけであるこの家の玄関に3足目の履物が並べられる。

 

 ――家に帰ったきた俺の後ろをついて歩くのは、白い花を持ち、相変わらず言葉を喋らない白い髪の彼女だった。

 

 そう、今でも覚えている。


 5月8日、この日から俺と君が同じ屋根の下で一緒に暮らすようになったのだから。

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