第一話 神社に不思議な女の子がいました
人生に面白味を感じられない、時庭 豊は日課のランニング中、コースの途中にある神社で不思議な白い光を見つける。
誘われるかのように、光の元に向かった豊が目にしたものは、白い花を手にした月白色の髪の少女だった。
少女と出会い、過ごしていくことで豊の日常に変化が起きていく...。
これは北海道のとある小さな町で起きた不思議な物語である。
初めての投稿になります。
いかんせん、文章などお見苦しい点もあるかと思いますが読んでいただけると幸いです。
長い冬が終わり、大地を緑で覆った五月の北海道で自然豊かな花の町として有名な恵花市。この町で生まれ育った俺は日課である、ランニングの途中であった。
時刻は午後8時半、いつも走るお気に入りのコース。夜になると人はおろか、車も滅多に通らない。そのせいか、あたりは静寂に包まれ聴こえる音といえば、風の音や虫達の声だった。
その中で、俺は古くひび割れたアスファルトの上を駆ける。短い感覚で靴の裏で砂利と砂利が擦れる音、そして一定のテンポ保つ呼吸と鼓動。
まるで世界に人間は俺だけではないかと錯覚してしまう、この空間が俺は好きだ。
ランニングコースの折り返し地点でもある、恵幸神社に辿り着く。この神社は古くから建っているらしいが、あまり手入れがされていないのか、境内にある管理書のポストからは郵便物が溢れており、人がいるのを見たことなく、灯りも無いため、やや不気味な雰囲気を感じていた。
だが、この日は違った。本殿の周りも手入れされていないため雑草が自由に生い茂っているわけだが、そのあたりが白く光っている。
その光は誰かに見つけて欲しいのか、自身の存在を知らせるように感じた。
理由はない、だが自然と光の方へ向かって歩き始めている。光に吸い寄せられるかのように1歩、また1歩と生い茂った雑草の海を進む。自分はまるで街灯に集まる虫のようだと呆れながらも光との距離を縮め、そして光の元へと辿り着く。
そこには衣服を身に纏っていない少女が横たわっていた――。
日本人では考えらない程の透き通った白い肌に、月明かりに照らされこのような状況でも神秘的という言葉が出てきてしまうほど、長さにして腰まであろう美しい月白色の髪。
そして衣服すら着ていない彼女が唯一、手にしているのは夜でも街灯の明かりと大差ないほど輝く白い花だった。
「お、おい!あんた大丈夫か?! 」
俺の呼びかけに対し彼女はかすかに反応を見せ、最悪の事態ではないこと、そして目立った外傷もないことに安堵する。
それと共にわずかな冷静もを取り戻した俺は、高校生の自分には刺激の強すぎる目の前の光景に落ち着きかけた心臓が煩くなった。
目線をなるべく刺激のない部分までずらすと、肩が震えているのがわかった。
それは当たり前のことであって、五月の北海道は暖かくなったとはいえ、夜には気温が十度前半から、一桁台になる日もある。
幸いにもウインドブレーカーの下は半袖と短パンを着ていたおかげで、迷わず彼女にウインドブレーカーを被せることができた。
少しだけ落ち着きを取り戻せたことから次に取るべき行動を考える。
普通ならこの場で警察か救急車を呼ぶべきなのだろうがこの状況で警察が来ても疑われるのは俺ではないだろうか?
ひとけの無い場所で意識のない裸の女性のそばに男1人……。怪しまれるのは俺ではないだろうか?今年で高校2年、将来を決めかねない重要な分岐点である。
万が一、警察の厄介になろうことなら自分の未来に支障が出ないか?正直言うと面倒なことは御免被りたい。俺は高校卒業後、職につき、一刻も早く稼がなければいけない理由がある。
色々考えているうちに俺自身の体も冷えてきた。それに彼女もウインドブレーカーだけの防寒では不十分だ。
とりあえず、警察以外の誰かに迎えに来てもらうことにしよう......とはいえこの状況で自分が頼れるのは唯一の肉親である祖父だけだ、どうかまだ晩酌をしていないこと祈りながらスマホを開き、祖父の電話番号を呼び出す。
呼び出し音が1回目、2回目と続き、祖父が出るのを待つこの数秒が非常に焦ったい。
「……あっじいちゃん、あのさ、もう呑んじゃった?」
「おう、豊。どうした?外走りに行ったんじゃなかったのか?」
「そうなんだけどさ、ちょっとトラブルがあってさ……。車で迎えに来て欲しいんだよね」
「トラブルって、怪我でもしたのか?」
「いや、そういうわけではないんだ!実はね……」
そのまま、現状を話した。するとじいちゃんは、慌てた声で……。
「そんなことが……と、とりあえずわかった。すぐ向かう!で、場所は?」
「恵幸神社だよ。よろしくね」そう言って通話を終了した。
家から神社までは車だと十分程、さほど時間もかからないができるだけ早く来てくれと願いながらじいちゃんを待つ。
とりあえず家に着いて、彼女の意識が戻り次第、事情を聞いてやはり警察に行こう。
そう少しずつ考えがまとまり始めた頃……。
「あー」
言葉にならない声と共に、俺のTシャツの裾が背後から引っ張られ、驚きと共に振り返る。
そこには先程までの横たわっていたはずの彼女が、俺の裾を掴みながらこちらを見つめていた――
読んでいただきありがとうございました!!
これからちびちびと連載していこうと思います!
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