73.Who are you?~新たな敵~
==========第二部========
・Who are you?:64話~74話
==========第一部========
・消失の章: 1話~12話
・悲哀の章:13話~26話
・裏切の章:27話~35話
・疑惑の章:36話~47話
・犠牲の章:48話~63話
ローマン『追跡チップのせいか?もうどこにも逃げ場はないのか。』
М『馬鹿か。』と呟いた。
あの追っ手の気配が消えたのだった。気配から4人組と接触し殺されたようだ。あれだけ殺気を放っている相手の気配が分からないようではどのみち裏社会では長生きできなかっただろう。
ローマンを見ると委縮していた。ローマンは自分に向けられた言葉だと思ったようだ。
М『逃げ場については、次の追っ手を片付けてから話し合おう。…できればここから離れた方がいいかもしれない。今度のはかなりやばそうな連中だ。』
ローマン『分かった。ここから南に行くと川がある。そこに行こう。』
М『そうか。1時間しても俺が行かなかったらどこかに逃げてくれ。』
ローマンは頷いて裏口から出て行った。それを見てからМは壊した扉の出入口から出た。
???『ローマンではなさそうだな。若いが護衛か。』
М『そんなところだ。提案だが、怪我をしたくないから戦いたくない。博士は逃げたからこのまま下がって欲しい。』
???『怪我をさせたくない、ではなく、したくない…か。賢明な判断だ。だが間違っているぞ。怪我の心配はしなくてもいい。死ぬのだから。』
М『はあ~。下手に出たのに。仕方がない。』
???『モラス、殺れ。』
モラスと思われる男が前に出る。武器は…素手だった。そもそも、4人ともレーザー銃を持っていないようだ。
モラス『じゃあ、まずは軽く準備運動を!』そういうとМに突進して行った。
М【速い】そう思ったときにはタックルされていた。初動が遅れた。相手がナイフを持っていたら刺されていただろう。それだけ速かった。Мはタックルを受け止めずに後方に倒れながら受け流すことにした。柔道の巴投げのように相手を投げ飛ばした。そして瞬時に立ち上がった。しかし、相手も早かった。相手が眼前にせまり蹴りをしてくるのが見えた。顔面をガードし、蹴りを受けてから反撃する。所謂教科書通りの戦い方だった。だが、相手が格上でなければ、Мが自身の力を慢心してなければ、それは回避できただろうか。相手が視界から消えた。そしてМの左膝に回し蹴りがあたり、Мが倒れる。顔面を狙おうとする動作はフェイクで、狙いは相手の膝だったのだった。蹴りの動作中に軸足を曲げて回転の威力を失わずに蹴りを入れる。何度も訓練された動きのようだった。
Мは立ち上がったが、左膝に力が入らない。折れてはいないようだ。
モラス『機動力を奪ったし、準備運動はそろそろ終わりにするか。さあバトろうぜ。』
機動力を無くしたМは、相手の攻撃をガードして受けるしかなかった。何発か被弾する。このモラスという男はボクシングをしていたのだろうか。左フックが厄介だった。左フックを貰い続けて、相手の意図に気付いた。レバーブロー。意識がそちらに向いたのが分かったのか、渾身の右ストレートを放った。Мはまともにそれを受けてしまった。崩れ落ちるМ。
モラス『その若さで、その打たれ強さ。殺すのが惜しいな。仲間にするか?』
???『逆に、その若さで、その打たれ強さは、どうして身に着いたと思う?』
モラス『残念だ。イーサン部隊長は反対だとさ。』
М『それは、困った。お前の相手の後にまだ3人も残ってると考えると逃げたくなるよ。』
イーサン【目は死んでないな。確かに仲間にしたいくらいだが、それは危険と感じる】『気をつけろ。何かするつもりかもしれないぞ。』
モラス『そうか。俺も本気をだそう。』右手にナックルダスターを嵌めた。
М【まだ3人いるから使いたくなかったが、しかたない】左脚をかばいながらモラスに突っ込んでいく。
モラス『自爆でもするつもりか。この一発で終わりにしてやるよ。』右ストレートを放った。
Мは左手をかざした。
それを見たモラスは、左手を骨折させ、そのまま顔面に当てようと更に力いっぱい踏み込んだ。そして、モラスが消えた。
イーサン『!これは。』初めて動揺したようだ。だが、すぐに冷静になる。その理由は。
М『ぐはっ。』苦鳴を上げて前方に倒れる。背が熱い。出血のせいだった。振り返るとそこにはナイフを持ったモラスが立っていた。
Мは驚いた。【時空間に放り込んだのに、なぜ】
モラス『びっくりしたぞ。まさか神の領域に飛ばされるとは思わなかった。部隊長、こいつは“オリジナル”かもしれないぞ。』
イーサン『………オリジナルか。予定変更だ。生け捕りにするぞ。ブライ、ラック、お前たちも行け。』
М『オリジナルだと。』【神の領域?時空間のことか、持っている武器にレーザー銃がない、まさか】
М『お前たちもダイバー、タイムトラベラーか。』
イーサンは、それには答えずにニヤリと笑う。それが答えだった。
М『ゲホッ。』血を吐く。【内臓には達してないと思うが、不利だな。ダイブして逃げるしかないか。だが、こいつらの正体を不明のままにしていくわけにはいかない。せめて一人でも捕まえれれば。一旦、距離を取りバラバラに行動させよう。】
瞬間移動するМ。だが横に吹き飛ばされるМ。
М『グハッ。』血を吐く。瞬間移動中に横から何かがぶつかった。それはブライの体当たりだった。
ブライ『瞬間移動か。直線移動しかできないからタイミングが分かれば邪魔するのは簡単なんだぜ。』倒れたМを蹴り上げる。Мは蹴られて転がる。時空孔も通じず、瞬間移動も防がれた。そして単純な戦闘力も相手が上だ。何よりも敵の人数が多い。
それでもМは、右手に小太刀、左手にアーミーナイフを持ち立ち上がる。
イーサン『ほお、まだ戦うのか。勝ち目はないのに。』
М『それはやってみなきゃわからない。窮鼠猫を嚙むだ。』リーダーのイーサンに小太刀を振る。イーサンが目の前から消えた。瞬間移動かと思ったが、左側から出現して平手で“トン”と押された。よろめくМ。
イーサン『絶望は絶望だ。それにお前は臆病者じゃないだろ。』
М【いちいち、癇に障る。それに今のは瞬間移動じゃない。一瞬でダイブしたのか。座標を設定したように見えなかったんだが。】
その疑問を考える余裕は無かった。Мが攻撃するたびに消え、そして別の角度から現れる。
こっちの攻撃が当たらず、相手は攻撃もせず遊んでいる。さすがのМも肉体的疲労に加えて精神的疲労が出て遂に攻撃が空振ったまま倒れてしまった。完全に息が上がっていた。そして四方を4人に囲まれたのだった。
次回は02/08の予定
『Who are you?』の章 完結編です。




