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72.Who are you?~研究者Part2~

==========第二部========

・Who are you?:64話~74話



==========第一部========

・消失の章: 1話~12話

・悲哀の章:13話~26話

・裏切の章:27話~35話

・疑惑の章:36話~47話

・犠牲の章:48話~63話


マスター『死にたくなかったらそのまま出て行くんだ。』

Мは、無言で動かずにいた。両手は下げたまま、敵意はないとの意思表示のつもりだった。

アーラ『みんな、落ち着いて。この人は大丈夫だと思うわ。』

マスター『アーラがそう言うなら…まあ、とりあえず話を聞こうか。』

М『ずいぶん信用されているんだな。子供なのに。』

アーラ『子供は余計よ。』Мの脛を蹴った…が。Мが脚を引いて空振りだった。

アーラ『ムカつく~!』

М『ワルい。助かったよ。実は………。』と博士を探している理由を話し始めた。それを黙って聞いていた村人たちやマスター、そしてアーラ。聞き終わると全員が銃を下ろした。

30代ぐらいの男『半分は信じてやるよ。』と言ったが、真顔だった。

М『それで、この旧ロシア領土にいるらしいと聞いているんだが、広すぎて全然分からない。もっと詳細な情報があればと思ってここに来たんだけど。あっ、サンドイッチとホットミルクを頼む。』

しばらく沈黙が流れたが

マスター『ウェン、お前何か知ってるか。ホットミルク!』苦笑いしている。

ウェン『1カ月ほど前にここから東に500km程行ったところに湖があるんだがその近くで目撃されたと聞いたかな。追われてるからもういないかもしれないけど、あそこには小屋もあるし、村ではないから地元の者じゃないと見逃される可能性が高いからもしかしたらまだいるかもしれないな。ホットミルクって…』こちらも苦笑いしている。

M『じゃあ、そこに行ってみるよ。』

アーラ『どうやって?移動手段は?』

Mは、無言で脚を叩いた。歩くという意味だ。

マスター『ほら、サンドイッチとホットミルクだ。アーラにもホットミルクだ。この男のおごりだ。』

アーラ『ありがとう。ホットココアミルクにしてちょうだい。』

マスター『道中ならず者がいると思うから、歩きは感心しないな。ホットココアミルクにしたぞ。』

M【東へ500kmなら座標設定してダイブで一瞬なんだが、なんて言えばいいんだ?】

アーラ『あー美味しい。玉子サンドもお願い。』

マスター『おごりだよな。』

M『………ああ。』換金率が分からないから若干不安だった。

M『ヒッチハイクしながら歩いて行くさ。お金はこれだけで足りるかな。』

マスター『ああ…十分だ。アーラ、玉子サンドだ。』

ウェン『いなくても恨むなよ。』

M『ありがとう。アーラもありがとう。』そう言って出て行こうとした。

アーラ『ご馳走様。あー美味しかった。私も帰る。M、元気でね。』

Mは、陽気な少女に出会えたことで気分が良かった。

アーラ『もう会うことはないし、最後に忠告よ。辛い時やどうしようもない時はね、故郷に帰るのがいいんだって。私も将来辛くなったらここに帰ってくるつもりよ。じゃあね。』手を振って行ってしまった。

M【ませたことを言うなあ。本当に10歳なのか。いやあの背丈は10歳だな。それにしてもあっさりと行ってしまったな。付いて行くといいそうな感じだったが…】

Mはしばらく歩いて、誰もいないことを確認して500km先へ移動するためにダイブした。


ローマン博士:微生物工学を専攻しており、その才能は極めて普通だった。どの分野にも興味がなかった。単に微生物そのものを可愛いと思ったからこの分野に入ったと言っていたらしい。だからどの微生物に対しても分け隔てなく接することでほとんどの微生物への知識を持つほどになった。別名、“歩く微生物図鑑”と呼ばれるようになった。だが博士号を取るためには論文発表が必須だ。そのためには研究する必要がある。毎日顕微鏡から眺めるだけで十分の彼には、研究テーマが思いつかなかった。いくら歩く微生物図鑑と呼ばれても検索すれば閲覧できる知識だからいなくても問題ない。だからこのままでは研究室を追い出される=微生物たちに会えなくなる=家に持ち帰ればずーっと会える=それがバレたら逮捕=逮捕されたら微生物たちに会えなくなる=バレなくするには………増殖して増えた分だけ持ち帰ればいい=そうだ、様々な微生物を増殖させる培養液を作ろう。そういう発想でオールマイティーな触媒を作ってしまったのだった。同じ培養液で全く異なる配列をしている微生物を増殖することは困難だったが、それに触媒を加えることでそれを簡単にできることを可能にしてしまったのだった。ほとんどの微生物の知識を持つローマンだから可能だったのだろう。微生物工学の様々な分野に衝撃を与えた。それはテロ組織に対しても同じだった。生物兵器が作りやすくなるからだ。そして彼に嫉妬する者たちはそのことで非難しつづけ、最後に、その触媒はフェイクだったと言わせることに成功した。更に非難を浴びた彼は、研究データを破棄し、姿を消した。表社会の人間たちには都合のいい話で決着が着いた。しかし、裏社会の組織は、その論文を真とし、彼を懐柔しようと懸賞金をつけて探し始めた。その追跡を逃れ、旧ロシア領土にいたと記録に残っていた。

もし発電胎バクテリアの増殖をも可能にするならば、彼を仲間にしたほうがいいだろう。


М『湖って干上がってほとんど池だな。小屋は見当たらないな。』そして目を閉じる。

М【右側に人の気配。……6人かな。…うん、多分6人だ。護衛か?違うな、闇からの追っ手だな】

気配を隠して近づいて行く。小屋が見えた。入り口に2人立っている。見張りらしい。手にはレーザー銃を持っている。

М【はあ~。どいつもこいつもレーザー銃か。バクタ―セル開発前だから大型だし、俺は銃弾タイプが好きだな。ロキさんもレーザーはイマイチと言ってたしな。】

Мはどうしようかと考えていた。一つは、追っ手を倒す。もう一つは、1日前のここにダイブして戦わない。

М【俺が戦わないという選択はありえん】

そう思いМは、見張りとの距離を測り始めた。

М『50m。ここだな。』両手にそれぞれ小太刀とアーミーナイフを持ち瞬間移動した。

見張り2人は心臓を刺され絶命した。おそらく何が起こったのか分からずに死んだだろう。

50m、それは瞬間移動の限界距離だった。障害物が無ければ50m先に瞬間移動でき、障害物があればそこにぶつかることで移動先を調整していたのだ。だから天井に移動してから真下に移動するルートになることもある。

М『あと4人。うち1人は博士なら、あと3人。』とつぶやく。左手で穴を開けようかと思ったが、扉を蹴破ることにした。それで博士が死んだら前日に行こうと思ったのだ。会ったことのない人間だし、思い入れは全くない。

扉を蹴破り中に入る。追っ手と思われる3人が振り返る。そのうち2人は首を斬られ絶命した。残る1人を殺そうとすると武器を捨て両手を上げている。

М『降伏か。戦わないのか?』と聞く。

追っ手『命だけは…。』震えている。

М『こういう仕事をしてどのくらいだ。』

追っ手『さん』

М『三年か。』裏社会に染まるには短いような十分なような期間だ。

追っ手『三週間。』

М『はあ?こいつらもか。』

追っ手が頷く。

М【やけにあっさりと殺れたと思ったら、素人か】

М『これが初仕事か。』

追っ手『いえ…死体の処理の仕事をしたら思ったより簡単に大金が入ったので、仲間とこの懸賞金なら安全だろうと思って…。』

М『どうやって、見つけた?』【そんなに簡単に見つけられないはずだ。情報があるのか】

追っ手『ICを追跡して。』

40代の男『ICはもう壊した。それはあり得ない。』

М『だそうだ。もっとうまい嘘をつくんだな。』小太刀を追っ手の目前に持ってきた。

追っ手『ICを壊しても追跡できるんです。ICが壊れても管理できるようにICを埋め込んだ際に同時に人間体内の微弱な電気で動く追跡チップが一緒に埋め込まれているんです。』

40代の男『それは初耳だ。』

追っ手『本当です。』

М『誰でも追跡できるのか。警察や政府関係だけか。』

追っ手『チップを解析すれば簡単に追跡アプリは作れます。でもそのチップは、死体処理の仕事をしたときに偶然、死体の傷口から見たことのないチップが出てきていたので、それで知ったんです。』

40代の男『そのチップは、どこにあるか分かるのか。』

追っ手は自分の額を指した。

40代の男『そこか。取り出せそうにないな。』

Мは40代の男の方を向き『ローマン博士ですね。Мと言います。』

ローマン『ローマンだ。助けてくれてありがとうと言いたいが、君も敵なのかもしれないな。』

М『敵かどうかは、俺の話を聞いてから判断してくれ。無理強いはしない。その前に。ここのことを誰にも言わないのなら見逃してやるが。』

追っ手は頷いて出て行った。

М『口封じしたほうがよかったか?』

ローマン『…いや、私が拠点を移動すればいいだけだ。話を聞きたいが何か飲みたいな。リクエストはあるか?』

Мからの返事は無かった。

М『4人。新たな追っ手だな。』気配を隠さずに近づいてきていた。

気配を隠せない低レベルなのか、それとも隠す必要がない高戦闘力の持ち主なのか。

Мにはどちらなのか分かってるようだった。バッテリーを交換し始めた。


次回は02/01の予定


『Who are you?』

新たな敵です。

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