69.Who are you?~暗殺者Part4~
明けましておめでとうございます。
本年もご愛読を宜しくお願い致します。
==========第二部========
・Who are you?:64話~
==========第一部========
・消失の章: 1話~12話
・悲哀の章:13話~26話
・裏切の章:27話~35話
・疑惑の章:36話~47話
・犠牲の章:48話~63話
部屋には、屈強な男が6人椅子に座って何かをしていた。テーブルにお金が置いてあるので賭け事のようだった。
その近くに男がもう1人いた。その男の下に女がいた。ポーラだった。
男『もう無反応だぞ。お前らが姦りすぎるからだ。人形と姦ってる気分だ。』
別の男『順番は公平に決めたんだ。文句を言うなら替わろうか。』
ポーラがどういう扱いを受けたのかは一目瞭然だった。
М『くそっ。』と小さい声で呟いた。しかし、これはポーラが乱暴されたことに対してではなかった。
М【気配が7人だと思ったのに、ポーラとあの男がくっついているから気配を読み間違えたな。いや、それは言い訳だ。俺が未熟だからだな。】
Мにとってはポーラが乱暴されていようとどうでもよかった。あの連中に女が拉致されればどうなるかは想像できた。だから、ポーラも覚悟のうえで教会で楯突いていると思っていた。
М『殺るか。』そういうと瞬間移動をした。まずは6人の真上の天井に。『ドン』と音がした。6人が上を見た。誰もいない。Мは天井に着いた瞬間に真下に瞬間移動をした。6人が囲んでいるテーブルが破壊された。小太刀を持って旋回する。6人が一瞬で斬られて絶命したかに見えた。いや2人は浅かったようだ。
М『小太刀だとリーチが足りないな。やはり“イゾウさん”のような日本刀がいいな。』とつぶやきながら、小太刀とアーミーナイフを投げて2人の息の根を止めた。
ポーラに乗っかっていた男は、何もできずに仲間が殺されるのを見ていた。仲間を殺した長細い武器(小太刀)を死体から引き抜き近づいてくる。時間にして10秒もなかっただろうが、男には長く感じた。その男も死んだ。だが顔が少し安らかなのは、死ぬ前にイけたからなのだが、Мにはどうでもよかった。その死体となった男をポーラから引き離したが、ポーラは動かない。息はしているが目が虚ろだった。
М『おい。』と頬を叩く。そして『子供たちを助けに行くぞ。』
子供という言葉で正気に戻るポーラ。そしてМに抱きついた。
しばらくそうしてからМ『落ち着いたか。』と聞いた。
ポーラ『もう少し慰めの言葉は無いの?』と涙声で聞いてくる。
М『…そこまで人生経験豊富でないから。』実際に何を言えばいいのか分からなかったのだ。
М『気づかれる前に助けに行こう。』殺した者たちが持っていたレーザー銃を拾う。ポーラも死体をまさぐっていた。それを見て、扉に向かおうとした。後ろで倒れる音がした。振り返るとポーラが倒れていた。駆け付けるとおそらく自らの胸をナイフで刺したのだろう。Мは倒れたポーラを抱き寄せた。
ポーラ『М、ごめんなさい。あなたにだけは、他の男にされているのを見られたくなかった。私も女なのよ。一目ぼ…。』
М『………俺のせいなのか?』怒りで手が震えていた。
Мの頭の中で【お前は若さのせいかすぐにカッとなる癖がある。それは戦いではマイナスにしかならない。常に冷静に行動するんだ】と言われた言葉を思い出した。だが、
М『冷静に?俺はそこまで人間できてないんだ!』
Мは左手を突き出し指を広げて壁に突進していった。次々と壁に穴を開け、ある部屋に入った時進むのを止めた。
そこには、興奮を醒ますものがあった。
М『ここは?』
???『助けて。』『助けて。』『殺して。』『助けて。』と連呼する声がした。
牢屋のような場所に人が入れられていた。ほとんどが子供たちだが、中には大人もいた。だがぱっと見は人間だが、何かが違っているように見えた。
М『この人間たちに何をした。』と聞いた。
ギラン『実験だよ。訂正するが人間ではないからな。それよりも爆発音無しに壁に穴を開けるとは面白い武器を持ってるな。お前は世界警察機構の調査員か?』
М『知っても仕方ないだろう。(お前たちは)死ぬんだから。』
ギラン『確かに(お前が)死んだらどうでもいいことだな。』
会話中もМは牢屋の方を見ていた。そして
М『遺伝子操作か。もう助からないな。』
研究所長『ほお。目ざといな。どうだろ、我々の仲間として働かないか。待遇は検討するぞ。』
Мは、それに答える代わりに、コート内からレーザー銃を2丁取り出し、2人に向けてトリガーを引いた。研究所長は慌てたが、ギランは動じなかった。レーザー銃からは何も出なかったのだ。
ギラン『部下のものだな。万が一のために指紋認証式の銃を購入しておいて正解だったわけだ。』
それを聞いてレーザー銃を投げ捨てるМ。その直後、横に飛び退いた。Мのいた位置の床が一直線に切られその周りが焦げている。
ギラン『よく避けたな。』手には長柄のようなものを持っていた。Мとの距離は3m程ある。
М『レーザーブレード。グレードⅡのようだな。』
レーザーブレード:映画ス〇ーウォーズのファンが開発したと呼ばれる剣だが、その後の改良でグレードアップされている。グレードⅠは、単純に刃の部分がレーザーになっており、比較的安価で購入でき、割と強靭で長持ちなのが特徴だ。グレードⅡは、刃の部分が伸びる仕様となっている。値段は張るが剣でありながら遠距離の敵にも使用できることから資金に余裕のある傭兵が持っている。欠点はバッテリーがⅠよりも持たないことだ。グレードⅢは、持っている者に遭遇したら戦うなと言われるほどの仕様だ。Мも遭遇したらすぐにダイブして逃げるように念を押されている。今回は、グレードⅡ。逃げることは考えていないが…。
М【まずいな。感情まかせで動いたせいで左手の時空盾のバッテリー交換をしていない。瞬間移動もあと2回しか使えない。そもそも瞬間移動で対処できるものではない。バッテリー交換の時間はくれそうにないよな。冷静に行動しなかったツケか。】そう思いながら相手のレーザーブレードをなんとか躱す。小太刀で受け止めれば小太刀が斬られるだけなので躱すことしかできなかった。そして躱すだけで近づくことができない。
ギラン『いつまで躱し続けられるかな。』笑いながら長柄を振る。
М【相手のバッテリー切れを待つか。否、そんなことは計算済みだろう。くそっ。】そう考えているとある人の言葉を思い出した。
【ある女性『使えるものは何でも使うのよ。フライパンでもね。あとは出し惜しみしたらダメね。窮地ほど何でもやるのよ。足掻けば光が見えてくる…かもね。』最後は笑いながら話していたけど…。】
Мは、周りを見た。使えるもの?捨てたレーザー銃が2丁。どうみても使えない。他は牢屋。見事に使えるものが無かった。【使えるもの?????!】
Мは、レーザーブレードを躱した直後、ギランの頭上の天井に瞬間移動した。
ギランは、一瞬Мを見失った。その一瞬がМにとっては十分な時間だった。ギランは突然Мがいなくなったことに困惑したが、気配で頭上にいることがわかり、見上げてすぐにレーザーブレードを伸ばして攻撃した。再びМが消えた。今度は自分の背後に現れたようだ。ブレードを出したまま長柄を後方に振った。気配を消えていないのに手ごたえは無かった。ギランは振り返ろうとしたが、Мを見ることはできなかった。視界には見たことのない光景が入ってきた。
ギラン『なんだ、ここは。幻影?』そう思ったのが最後だった。下半身に激痛が走り、時空間に放り出された。ギランの上半身だけが。
Мは左手のひらを広げて時空盾でブレードを無効化し、ギランを頭から時空孔に嵌めたのだが、途中でその時空孔を閉じたのだった。そのためにこちらの世界にギランの下半身だけが残ったのだった。
М『フ~。出し惜しみしなくてよかった。』瞬間移動のことである。瞬間移動でバッテリー交換の時間を作ったのだった。
次回は01/11の予定
『Who are you?』
暗殺者の完結編です。
余談ですが、能登半島地震は、被害がすごいですね。私は隣県在住なのでかなりの揺れを感じましたが、揺れだけで被害はありませんでした。未だに余震が続いており、それは隣県でも感知できるほどですので救助や物資の輸送も困難を極めていると思いますが、寒さもありできるだけ早く救助されることを願います。