67.Who are you?~暗殺者Part2~
==========第二部========
・Who are you?:64話~
==========第一部========
・消失の章: 1話~12話
・悲哀の章:13話~26話
・裏切の章:27話~35話
・疑惑の章:36話~47話
・犠牲の章:48話~63話
人類がICチップ管理下に置かれ一世紀以上が過ぎた。これにより、様々な利便性を人類にもたらすことになったのだが、光があれば影があり、陽があれば陰があるように、闇もまた大きくなったのだった。導入当初は、ICは任意だったが、導入後に生まれた子供たちは強制的に埋め込まれることになっていた。だが、それは病院で生まれればの話だ。貧困層ではそれすら叶わない。そうなるとICを持たない人々もいた。世界管理連合は、導入後に生まれてICを持たない者を“人ではなく物である”と2100年に発表したのだ。当然、このような非人道的な決定に異を唱えるものが多かったのだが、そのような人物は、ICにより瞬時に特定され、犯罪者としてカラー識別された。このことは全人類に衝撃を与えた。IC導入時には説明がなく、これが世界警察機構の管理下に置かれるという意味だと悟った。ICが無ければ表立った売買すら出来ない。それがライス神父がICを破棄しない理由だった。子供たちのためには物資を買う必要があったのだ。
その日の夕食時
ポーラ『なんでいるの?目障りなんですけど。』
M『…もしかして俺のことか?』
ポーラ『他に誰がいるのよ。』
M『神父様や子供たちの誰かかと。』
ポーラ『そんなわけないでしょ。』
子供『夫婦喧嘩?』
M&ポーラ『違う。』二人は慌てて否定した。
M『まあ、俺のことは気にするな。夜這いはしないから安心しろ。』
ポーラ『はあ、そんなことしたらアソコ斬るからね。』
ライス神父『まあ、とにかく賑やかで結構ですね。』
子供『楽しいね。』
この後もポーラは文句を言っていたが、子供たちの楽しそうな表情を見て、段々どうでもよくなってきた。
翌朝
ライス神父『よく眠れましたか。』
M『はい、できれば数日間いてもいいでしょうか?』
ライス神父『何日でもいいですよ。来るものは拒まずですから。』
M『ありがとうございます。それでお礼と言っては何ですが、この建物は大分ガタがきているようなので修繕しましょうか?』
ライス神父『それは助かります。出来る範囲で結構ですのでお願いします。』
Mは慣れた手つきで建物の修繕を始めた。子供たちは興味津々だった。ポーラはぶつぶつと文句を言っていたがMの真剣な作業を見て、何も言わなくなった。
日が傾きかけた時間。Мが廃棄材に座って何かをしていた。
ポーラ『冷たい水よ。少し飲んだら。』
М『下剤とか。』
ポーラ『…さあね。』
Мはそれを受け取り迷わずに飲んだ。
ポーラ『疑わないのね。ところでそれは何?』
М『廃材を使って、子供たち用に竹トンボを作ってる。日本の手作りおもちゃだ。羽の部分は紙にしたけど、その方が子供たちも安全だろうしな。』
ポーラ『日本?行ったことあるの?』
М『俺は、日本生まれの日本育ちだ。国籍も日本だった。』
ポーラ『え~?それならICは?あっそうか、日本“だった”と言ったわね。IC破棄とともに国も捨てたのね。だからその左手首を隠すようにリストバンドをして、ICを取り出した痕を隠してるのね。』
М『…そんなところだ。』盛大な勘違いをしているのだが弁明する理由もないので放っておくことにした。
ポーラ『とても器用なのね。建物の修理もうまいものね。』
М『生まれ育った家が古かったからな。修理しながら住んでたからかもな。しかしこの教会は今までよく潰れなかったな。ある程度補修できるけど、持ってあと数年だな。梁から直さないとどうしようもないぞ。』
ポーラ『そんなお金は無いわ。でも当てはあるのよ。ここより北の方にある組織があって、きっと話せば支援してくるはずよ。だから壊れる前に私が行ってくるわ。』
М【北?あの組織のことか。……あと数年持てば十分だろ。ここの子供たちはそれぐらいしか生きら…。】
ポーラ『何考えてるの?』
М『ああ、ちょっとな。』
ポーラ『さては、恋人のこととか。』
М『…ちょっと疲れたし、続きは明日にするかな。』
ポーラ『…逃げたな。』
Мが教会を修繕して三日が過ぎた。
М『これ以上は、無理だな。』
ライス神父『十分です。すごく住みやすくなりました。子供たちも楽しそうです。』
子供たちは、竹とんぼで遊んでいた。
М『それなら良かった。』
ライス神父『もうそろそろ行かれるのかな。そうでしたら最後に頼みたいことがあるのですが。』
М『何でしょうか。』
ライス神父『明日朝から買い物に付き合って欲しいのです。日用品を買いに行こうと思っているのですが、人手があれば多くの物を買うことができるので、どうでしょうか。』
М『ポーラとは行かないのか。俺が子守りをしていてもいいんだが。』
ライス神父『…いや、やっぱり一人で行くとしようかな。』
М【彼女に知られるとまずいことでもあるのかな】『歩きですか。それなら早起きしないとですね。』
ライス神父は笑顔で『そうですね。太陽が出るころに出ましょうか。』
М『早っ!』
夕食時。
ポーラ『納得いかないんですけど。』
ライス神父『荷物は重いからポーラにはきついだろう。』
М『男同士の話もあるしな。』
ポーラ『はあ?まさか神父様をいかがわしいところ連れて行こうとしてるんじゃないわよね。』
М『神父様も男だぞ。たまるもんはたまる。』
ポーラ『最低!』
ライス神父『日本では、こういうのを夫婦漫才と言うんだったな。』
М『違う。』全力で否定した。
次回は12/28の予定
『Who are you?』
暗殺者の後編です。