66.Who are you?~暗殺者Part1~
==========第二部========
・Who are you?:64話~
==========第一部========
・消失の章: 1話~12話
・悲哀の章:13話~26話
・裏切の章:27話~35話
・疑惑の章:36話~47話
・犠牲の章:48話~63話
2199年アフリカ大陸南部。
砂漠に囲まれた一画に古びた教会のようなものが建っている。その建物の敷地内から話し声が聞こえる。いや、言い争う声だった。
???『神父さんよ。全員寄越せと言ってるんじゃない。5人でいいんだぜ。そうすれば口減らしにもなるし、どうせまた増えるんだろ。』
神父『そういう問題ではない。この子たちはここが居場所なんだ。誰にも迷惑はかけてない。お前たちにもな。逆に連れて行った子供たちはどうなってるんだ。返して欲しいんだが。ギラン氏。』
神父と呼ばれる男が子供たちを隠すように間に立って返答をする。子供たちは21人いるので隠せてはいないが。
ギラン『あれらは、役に立ってるだろうよ。何度も言ってるが、人ではないんだぞ。』4人の部下たちに目配せする。
神父『人だ。我々と同じ人だ。お前たちも心では分かってるだろう。』
ギラン『分かってるさ。ICチップの無い者は、人ではないと言うことをな。その証拠にお前はICチップを入れたままだろ。』
神父『それは、物資の調達に必要だからだ。本当は取り出したいが…。』
ギラン『はいはい、そういうことにしておくよ。じゃあ、5人連れて行くぞ。やれ!』部下たちが子供たちに近づこうとした。部下たちの足元が噴煙を上げた。焦げた匂いがする。
???『それ以上、子供たちに近づくんじゃないよ。今度は当てるよ。』教会建物からゆっくりと姿を現した。
ギラン『ポーラか。言っとくが俺たちは合法的に動いてるんだ。だから殺しは、身を滅ぼすぞ。』
ポーラ『そのときは、お前たち全員道連れだよ。』とその女性はレーザー銃を持ちながら近づく。身なりは傭兵のようだ。
ギランもポーラに近づく。
ギラン『威勢のいい女は好きだぜ。』といきなり右フックを放った。
ポーラは左腕でガードし、銃を撃とうとした。その銃が吹き飛んだ。ギランが蹴りでポーラの右手を蹴ったのだ。女性の格闘スキルはかなりのレベルのようだが、相手が悪かった。ギランは、その風貌通り百戦錬磨の傭兵だった。あっという間に押さえ付けられた。
ポーラ『くそっ!放せ!』
神父『止めるんだ。その手を放すんだ。』
ギラン『子供5人と交換だ。やっぱり10人だな。それともお前を連れて行くか。そろそろ本気を出さないと色々言われてるんでね。』ポーラの胸を揉みながら言い放った。
神父『止めるんだ。子供たちは…。』
ギラン『ポーラ、残念だったな。愛しの神父様は、お前よりも子供たちが大事らしいぞ。』
ポーラ『そう?お前は私のおっぱいが好きなんだな。ベイビーギランちゃん。』
ギランは、ポーラの髪の毛を掴むと顔を地面の砂に打ち付けた。
ギラン『その減らず口が言えないくらい俺の相手をしてもらうぞ。』そう言うとポーラを立たせて連れて行こうとした。その視界に人影が入った。
この暑い砂漠に長袖の黒のコートを着て、一応サングラスを掛けている。歳は二十歳前後か。
謎の男『間の悪い時間に来てしまったな。』
部下A『ギラン様、あの男は、ICが無いようです。』
ギラン『そうか。お前はICを入れてないのか。なら人ではないんだな。殺しても罪にはならないな。』
謎の男『IC? おっと、忘れてた。今更まっいいか。』
部下B『? 何を言ってるんだ。殺りますか。』殺したくてうずうずしているようだ。
ギラン『まあ待て。おい、お前一人か。どうしてここに来たんだ。』仲間がいる可能性があると判断したのだろう。意外と慎重派のようだ。
謎の男『人ではないと言いながら一人かと聞くのか。どうでもいいが、目的は人探しだ。仲間はいないから安心しろ。』
【自分たちを見ても慌てるわけではなく妙に落ち着いている。場慣れしているようだが、そんな年齢には見えない。単なる鈍感なだけなのか?】とギランは思った。
ギラン『殺すな。痛めつけるだけにしろ。』その言葉に部下たちは動揺した。【殺すな?】
部下B『ちっ。死んだ方がましと思い知れ。』男に突進していく。
謎の男の実力を持ってすれば部下Bが地面に倒されたのは当然だった。それも一瞬の出来事だった。他の部下たちに動揺が走り、全員レーザー銃を取り出す。
【レーザー銃を向けられてもまだ落ち着いているな】とギランは思い、部下たちに『銃を下ろせ。』と命令した。
ギラン『なんか興ざめしたな。まあいい。今日はこのまま帰るぞ。』そういうと部下たちを去って行った。
謎の男は、ポーラに近づき、『大丈夫か。』と手を差し伸べた。
ポーラは、男の手を取り右回し蹴りを繰り出した。それを躱す謎の男。ポーラは蹴りの流れから一回転してその勢いを利用して、男をひっくり返そうとした。事実、男は見事に回転させられた。そして、ポーラから手を放して距離を取った。
謎の男『俺は、助けたつもりなんだが…。』
ポーラ『そうやって油断させて、実はあいつらの仲間でした、ということも考えられるからね。』
謎の男『…そうか。』それだけ言って、神父のほうに歩き出した。もうポーラには興味が無いと言わんばかりの態度だった。
ポーラ『ちょっと…』
謎の男『神父様、申し訳ありませんが、水を分けてもらえないでしょうか。歩きっぱなしで喉が渇いていまして。』と神父に礼をして言った。
神父『もちろん構いません。こちらです。』
謎の男『ありがとうございます。』
ポーラ『ライス神父様。そんな簡単に信用しては…。』
ライス神父『ポーラ、困っているのであれば助けるのが人ですよ。』
ライス神父のあとを付いて行く謎の男がポーラの方を振り返り、ニヤリと笑って舌を出した。
それを見たポーラ『この~!』
ライス神父『ポーラ!いい加減にしなさい。』
ポーラ『しかし、神父様、こいつは…。』
ライス神父『外で子供たちの相手をしていてくれないか。』語尾が強めだった。怒っているのが明白だったのでポーラは無言で従った。謎の男を睨みつけながら子供たちのところに向かった。
ライス神父『すまない。ポーラは、私を守るためにあんな態度を取るんだ。根は優しい女の子だ。』
謎の男『女の……子?』フッと笑った。ライス神父も笑っていた。
ライス神父『そう言えば名前を聞いていなかったな。』
謎の男『マ……Mと言います。』不自然な間があったのを神父は見逃さなかったが無視することにした。
ライス神父『なにやら事情があるようですね。人を探していると言っておりましたが、誰をお探しで?』
M『それは言えません。企業秘密でして。ハハハハハ。』
ライス神父『…まあいいでしょう。周りは何もないですし、今日はここに泊まるのがいいかと思います。
M『それは助かります。』
外から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。Mは窓から外を見た。ポーラと子供たちが遊んでいた。
M『確かに、優しい女の子みたいだ。』と呟いた。
次回は12/21の予定
『Who are you?』
暗殺者の中編です。