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64.Who are you?~殺人領主Part1~

==========第二部========

・Who are you?:64話~



==========第一部========

・消失の章: 1話~12話

・悲哀の章:13話~26話

・裏切の章:27話~35話

・疑惑の章:36話~47話

・犠牲の章:48話~63話


12世紀。欧州のとある村。

多数の悲鳴が聞こえている。

男『領主様、どうしてこんなことを。』男はその言葉を最後に体から血を流しながら倒れた。もう動かないだろう。

領主『どうして?家畜の分際で。』馬上で男を刺した槍を振り、付いた血を吹き飛ばす。周りを見回した。配下の者たちがこの村の住民を追い立てているのが見えた。それをみてニヤリを笑う。悪鬼の笑みだった。見上げると今日は満月だ。最高の気分だ。家畜(人間)狩りは実に楽しい。

???『うおおおおお!』と大きな声がした。見ると大男が斧を振りかざしており、配下の者たちが近づけなかった。

領主『家畜の抵抗か。』

配下A『はっ。やみくもに振り回されて、申し訳ございません。』

領主『よい。これも余興と思えばいい。』

大男『よくも、よくも。税をちゃんと納めているのに。』斧を持ち、領主を睨みつける。

領主『税?』

配下B『我々の飲み代にもなりません。』と背後の男が答えた。

領主『だそうだ。ここが無くなっても痛くもないということだ。分かったか。』

女『あなた!』女と娘が配下の者たちに抑え込まれていた。

それを見た大男は『やめろ。やめてくれ…。お願いします。』両手をついて領主に許しを請う。

領主『そうだな。こいつと勝負しろ。勝てば考えてもいいぞ。』配下Cとの決闘を促す。

配下C『分かりました。領主様、私が勝てばあれを好きにしてもいいですか。』あれとはもちろん大男の妻のことだった。

領主『そうだな。お前にも褒美が必要だからな。いいだろう。』

配下C『悪く思うな。お前の妻はじっくりと可愛がってやるよ。へへへへ。』

大男は無言だったが、斧を握った手が震えている。怖いのではなく怒りで震えているのが分かる。

配下C『いくぞ!』自らの合図とともに剣を振りかざす。それを斧の柄で受け止める大男。防御で精一杯だった。体中に切り傷が出来ていく。現状を打破するために斧を振り回した。さっきは有効だった。しかし、今度は逆だった。斧を振り回すと隙ができた。相手は、訓練された兵士だ。その隙を見逃すはずがなかった。振り回した斧を戻す前に腹を斬られ、胸を斬られた。

大男の妻『あなた!』と叫ぶ。

その言葉に大男は一瞬妻の方を見て、そして斧を振り回すのを止めた。息が上がっている。斬られた腹が熱い。妻と娘を見る。妻も娘も泣いていた。数時間前の家族団欒が遠い過去のようだ。腹を触った手が赤い。【もう自分は助からない、なんとか妻と子供だけでも】と思った。

そして大男は『うおおおおお!』と斧を振り上げた。すかさず配下Cが剣を突き出す。剣は腹から背中に抜けた。勝負あった。配下Cは笑みを浮かべた。勝利の笑みだった。剣を抜こうとしたとき大男の顔を見た。大男は笑みを浮かべていた。反射的に退こうとした。その顔に斧が振り下ろされた。配下Cは絶命した。もし退かずに前に出ていれば斧を体に受けずに勝っただろう。決断力の差だった。片や自らを犠牲にしたもの、片や保身に走った者の差だった。

領主は、配下が殺されたのに無言だった。それどころか動揺すらしていないようだった。

大男『領主様、約束通り、妻と娘は解放を…。』

領主『勘違いするな。勝てば考えてもいいと言っただけだ。娘は何歳だ。』

大男『?…7歳です。』

領主『女としての価値が出るまであと10年程か。』他の配下に目配せする。それを合図に

妻『キャー。』胸を刺され絶命した。次は娘の番だった。

大男『そんな…やめろ~!』もう助からない体で娘の元に走り出す。しかし、その願いは叶わなかった。数メートル進んで他の配下の剣に串刺しにされ、絶命寸前だった。

領主『その小娘で最後…もう一人いたか。』

暗闇から男が一人出てきた。身長は180弱か。歳は20前後に見える。黒いコートを着ており、あきらかにこの村の住人でないことが分かった。

大男『娘を…ベルを…。』知らない男にそう言って息を引き取った。

謎の男『………。』大男の最後の頼みに対して、まるで聞こえなかったかのように無言だった。

領主『迷い込んだのか。不運な男だ。』そう言いながら警戒していた。理由は、見たことのない服を着ている。そして未だかつて感じたことのない雰囲気を出していた。この領主がこれまでの人生で敗北を味わっていればこれを悪い予感として戦うのを躊躇い、もしかしたら命は助かったのかもしれなかった。しかし、訳の分からないその感情を打ち消すために配下の者たちに命令を下した。

領主『その男を殺せ。』

配下たちは思った。【領主様はなぜこの男を家畜と言わなかったのだろう】と。

配下は全員で6人いたが、今は5人だ。そのうちの1人は大男の娘を捕まえているので4人が動いた。

先手必勝とばかりに1人(配下D)が剣を振りかざす。相手の男は手ぶらだったのだが、コートの内側に手を入れ長い棒状の物を取り出し、それで剣を受け止めた。刃の部分は長さが60cm程で反っており片刃のようだった。領主を含め誰もが初めて見る武器だった。この時代の欧州では知られていないのも無理はない。海を渡った小さな島国で小太刀と呼ばれているものだった。配下Dは、一旦少し下がった。

配下D『フ~。』と息を吐く。その男の突然の出現で気持ちが高ぶっていたようだった。今度は冷静になり観察する。身なりは見たことがない恰好だが、問題は武器だ。これも見たことがない。だが、細い。力任せに剣を振れば折れると判断した。受け止めれば、その武器ごと体を切って終わりだと思い、踏み込んだ。相手の武器をへし折るために渾身の力を込めて剣を振り下ろした。案の定、相手は自分の剣を受け止めようとした。それを見た時、勝利を確信した。だから自分が斬られ、死ぬことが信じられなかった。

領主『ほお~。なかなかやるな。』配下が殺されたにも関わらず相手を褒める余裕があった。

配下の剣をまともに受ければ当然相手の武器が折れただろう。だから相手は受ける直前に武器の先端を下げて角度をつけ受け流したのだ。配下は振り下ろす勢いのまま剣を地面に叩きつけてしまい、その瞬間を狙われて相手の武器が腹を刺されそのまま左胸まで振り上げられて死んだのだ。

領主『殺すには惜しいが、次はどうだ?』娘を捕まえている配下Eに目配せして攻撃に加わるように促した。今度は4人の配下は男の周りに散らばった。男を取り囲んだ。



次回は12/07の予定


『Who are you?』

殺人領主の後編です。



第二部スタートです。


一応、エンディングの構想はできていますので

尻切れトンボで話を終わらせることはありません。



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