57.退路無し
・消失の章: 1話~12話
・悲哀の章:13話~26話
・裏切の章:27話~35話
・疑惑の章:36話~47話
・犠牲の章:48話~63話
One for all, All for one
何時までも触手の攻撃が来ないので目を開けるジャンヌ。
目の前で触手群相手にジャックが孤軍奮闘していた。
ゾーンやチャンを吹き飛ばした束ねられた触手=触手群を蹴りで吹き飛ばすジャック。
Time Keeperメンバーは茫然と見ていた。聞いていた話ではジャックと言う男はTime Breakerで一番大したことは無いはずだったのだが、蓋を開けてみれば、強いの一言だった。ゾーンはもちろん、ジャンヌの的確な指摘、そして不在のタケオ、少数なのに侮れないと思ったものが多かった。
ゾーンとジャンヌはジャックの戦いぶりを見て、不安になった。
Time Keeper本拠地へのダイブ前日。
ナンバー2が『強制はしないわ。残ってタケさんを見ていて欲しいし。』
ナンバー4『一晩考えてみるよ。』
ノア『ジャック様、TB様よりジャック様用に作った薬を預かっております。脳の潜在能力を上げる薬です。』
ナンバー4&ナンバー1『なんだと!』
ナンバー2『?』
ノア『0.01%引き上げます。』
ナンバー4『たったそれだけ…。』
ノア『十分かと思います。劇的に全てが違うと推測します。TB様は、この薬をキッカケにしてほしいみたいでした。その感覚を覚えて、いずれは薬無しでも達成できることを思って、10個だけ作製されております。また、注意事項があります。
1.薬の効果はジャック様の今の身長と体重に合わせて1分で切れるように配合しております。本意ではありませんでしたが配合については私がアドバイスを致しました。
2.脳への負荷を考えて、1時間以上空けて薬を飲んでください。
3.万が一、異常があっても自己責任で
以上です。3番目は笑いながら話しておりましたので注意事項かは分かりません。明日行かれるのであれば持って行ったほうがいいと判断してお話させていただきました。持って行くのであれば保管場所をお知らせします。』
ナンバー4『なぜタケオさんは直接渡しくれなかったんだ?』
ノア『ゾーン様が戻られるのを待っていたようです。効果を確認するのにゾーン様と戦って欲しいようでした。そのうえでジャック様にアドバイスをしてほしいような感じでした。主観ですが、単に薬のデータが欲しかったのでしょう。』
ナンバー1『そうか。行く前に試すか?』
ナンバー4『…止めとくよ。何かあったら明日行けないしな。いざとなったらぶっつけで使うさ。』
ナンバー2『難しい話みたいだけど、とりあえず使わないのが一番よね。』
ゾーン『すまない、ナンバー4。結局、使わせてしまった。』
ジャックには触手の動きが良く見えていた。世界がスローモーションで動いているように感じていた。これが+0.01%の効果。すごいと感じた。そして身体能力もアップしているのが分かった。俺の蹴りであの触手群が弾ける。
ジャック『今のうちに、行け!』ジャンヌたちをディーンの元へ促した。
全ての触手でジャンヌ、否、ゾーンを襲おうとしたが、その動きがスローモーションで見えるジャックにはそれらは烏合の衆だった。圧倒的なスピードとパワーで触手群を蹴散らし、その攻撃を防いだ。
ディーン『すごい。これは?』
ゾーン『タケオが作ったブレインアップの薬の効果だ。時間があまりない。俺を戦えるようにできるか。』
ディーン『ブレインアップ?私の想像をはるかに超える開発者だな。やはり会って話がしたいもんだ。どんな原理なんだ?やはりアドレナリンを…』
ゾーン『おい。』
ディーン『ん?ああ、戦うのは無理だな。見たところ、内臓から出血、肋骨骨折、左腕は粉砕骨折だ。応急処置だけしよう。まずは内臓の出血を止めるぞ。きついから覚悟しろ。』そういうと手をゾーンの背中に当てた。
ゾーン『!』声は出さなかったが、苦悶の表情だ。口から血塊を吐くと同時に煙も出た。出血箇所を電気で焼いたのだ。
ディーン『次は骨折だな。腕からやるが、日常生活レベルにしかできないぞ。戦えば瞬時に骨はバラバラになるからな。』
ゾーン『そうか。でもそう言っていられない状況だぞ。何度でも直してくれ。うっ!』
ジャンヌ『ジャック!』叫んだ。そう、薬の効果が切れて反動で動けなくなった。
電池切れのようにうずくまり動けなくなったジャック。
ローランド『よくやった。』ジャックに肩を貸して下がる。
その光景を見てホッとするジャンヌ。
ジャンヌ『でも、なぜ?』自分の手を見ながら『聞きたいんだけど、120本も操ることができるのかしら?』
ディーン『ほお!面白いことを言うな。結論から言えば可能だ。よし、最後に肋骨だな。』
ディーン『だが、おそらくあれは、そうではない。』
ジャンヌ『?』
ディーン『触手が単独で考えながら動いていると言ってもいいだろう。そういう動きをしている。本体からは大まかな命令をしているにすぎないと推測する。もっとも何本かは完全に操っているのかもな。』
ゾーン『それは厄介だな。すごいな、楽になった。』
ディーン『一時しのぎに過ぎないぞ。なんとか打開策を見つけないといけないが。』そのとき
ベン『神父様、ダイブしてこれを奴の目玉に喰らわせます。』
ディーン『BHBか。ダイブして本体を攻撃するか。それしかないな。やってくれるか。』
ベン『任せてください。座標は…。』
ディーン『245.667554 005.285548 523.008701』
ベン『了解。目玉野郎、今からその目玉に穴を開けてやるぞ。』
ディーンはなぜか不安だった。何かが引っかかる。何だ?何か見落としてるのか。
本能で分かったのか?ベンに触手群が振り下ろされる。
ベン『残念。』そう言って触手が届く前にダイブしようとした。が、ベンが触手群に潰された。
初めての死者が出たのだ。逆にここまで死者が出なかったのが不思議なくらいなのだが、これが選ばれし者たちだからなのだろう。
ディーン『ベーン!』ベンはダイブ出来なかった。
残り28名
次回は10/19の予定
『最終手段』