45.ナンバー1vsディーン
・消失の章:1~12話
消失という任務を実施する理由とは?
その任務を遂行する各メンバーはどのような人物なのか?
・悲哀の章:13話~26話
新たな仲間を探すダイブになっています。
・裏切りの章:27話~35話
ステーションがメイン(Time Keeperの襲撃)
・疑惑の章:36話~47話
滅亡後の未来
ナンバー1vsディーン
タケオvsドジル
Time Keeper本部
ディーン神父『…ロキか。』
ロキ『はい、少しよろしいでしょうか。』
ディーン神父『ドジルのことか。』
ロキ『ご存じでしたか。』
ディーン神父『好きにさせておけ。今、お前たちにしてもらうことは無い。』
ロキ『分かりました。』
ある病院の病室。
ここに数カ月前に意識不明で搬送された女性が眠っている。原因は不明だった。しかし、その女性が目覚めた。そして『どうして。』と言って涙を流した。
あるテントの中。
サニー『もう起きても、大丈夫ですか。 』
アレクサンドラ『ええ。少し力を使い過ぎましたね。』
サニー『無茶をし過ぎです。いくら好きな人の危険を回避させるとはいえ、時間を超えた念話はもうやめてください。』
アレクサンドラ『ごめんなさい。でも、そうもいかないかもしれないわ。ジャック、あなたは何者を仲間にしたの。彼の存在は何?』
2067年8月30日ムルマンスク某所
ローランド『来るぞ。お前は神父様に伝えろ。他の者たちは準備をしろ。』そして伝達役の男が一人消えた。
ナンバー1は、記録に残っている村の襲撃日にダイブした。しかし、降り立ったとき違和感を感じた。天安門広場にダイブしたときと同じような違和感だった。奴らがいると確信した。Time Keeperが。
ナンバー1は、動かなかった。目を閉じている。気配を探っているのか。そうではなかった。当時は29歳だった。自分が30歳の誕生日に休みをもらい、ミンリにプロポーズをするつもりだったのだ。その計画がこの日に無駄になったのだ。それらを考え、そして目を開けて、村の方へ歩き出した。敵は迎え撃てばいいだけだ。目的は襲撃の真実だからだ。
ディーン神父『ご苦労だったな。』
ローランド『正直、待ちくたびれました。』
ディーン神父『なおさらそれに応えなくてはならないな。いくぞ。』
ナンバー1は、故郷の村に近づくにつれ、村の方から複数の殺意を感じた。
(襲撃が始まるのか)と思い、走り出した。そのとき、咄嗟に左に飛んだ。ナンバー1のいた位置に稲妻が落ちた。
ナンバー1『これは…』周りを見ると、遠くから近づく者がいる。四人だ。そのうちの一人は頭巾を被っている。
そして、村の方から銃声が聞こえた。
ナンバー1『くそっ。』村の方へ向かおうとしたが、再び稲妻が落ちる。一発二発三発と…。それを躱すのに精一杯だった。進めなかった。
ナンバー1『Time Keeperだな。邪魔をするな。』どういう原理で稲妻を出している?分からないが焦っていた。
ディーン神父『ゾーン、分かってるだろう。死の運命は変えられない。成り行きを見守るんだ。』
ナンバー1『そうだな。だが自分が何をするかを決めるのは俺だ。好きにさせてもらう。』進もうとすると行く手を再び稲妻が落ちる。
ディーン神父『私が本気を出せば当てることができるのだが、その意味が分かるか。』
ナンバー1は気づいていた。だから反撃しなかったのだ。だが、
ナンバー1『これ以上邪魔をするなら排除させてもらうぞ。』
ディーン神父『残念だ。』それが合図だった。
数十の稲妻がナンバー1に落ちる。全てを躱すのは不可能だった。何発か被弾した。その箇所が痺れる。殺傷力は弱いと判断した。だが追撃は無かった。
ナンバー1『?』Time Keeperたちが村の方を見ていた。ナンバー1は気づいた。銃声がもう聞こえない。襲撃が終わったのか?走り出した。今度は稲妻もなく邪魔が無かった。村の入り口で立ち止まり気配を探る。そして気配の方向へ再び走り出した。数人いや七人いた。ナンバー1は20m程手前で立ち止まった。相手がナンバー1を見る。ナンバー1は戦闘態勢を取ったが、相手の一人が覆面を外す。そして消えた。ダイブしたのだ。
ナンバー1『そんな……………なぜ。』両膝をついて両手を下げた脱力状態のようだった。
背後からTime Keeperの四人が近づくが、気が付いていないのか。
ディーン神父『真実を見たのか。ゾーン、我々の仲間になれ。お前の力はすばらしいものがある。消してしまうには惜しい。』
ナンバー1『…知っていたのか。』振り向かずに聞いた。しかし立ち上がった。
ディーン神父『そうだ。仇が作った組織にいる必要はないだろ。あいつは偽善者だ。だから抹殺したのだよ。』
消えた七人のうち覆面を外した男の顔は、ネモ教授だったのだ。
ディーン神父『やつは、お前をロシア軍シークレットノー部隊に行かせて力をつけさせるために邪魔なお前の恋人を殺したんだ。そのついでに村全体を襲撃したんだ。』
ナンバー1は考えていた。ナンバー3が言っていたこと、ネモ教授がなかなかこの襲撃現場に行かせてくれなかったこと、そして教授に助けられて、一緒に任務を遂行してきたことを。それらの全てがネモ教授が原因だった。ナンバー1は振り返った。(仇が作った組織にいる必要はないだろ。) その通りだ。
ナンバー1『お前の言う通りだよ。』
ディーン神父『賢い選択だ。紹介がまだだったな。私はTime Keeperのリーダー、ディーンと言う。』
ナンバー1『そうか。リーダーか。』そう言うとディーン神父に向かって蹴りを放った。それをローランドが受ける。
ディーン神父『愚かな方を選んだようだな。』
ナンバー1『おいしいカツカレーとカツ丼が待ってるんでな。それにお前たちは最後に心から笑ったことは何時だ。俺は最近だ。』絶望感の中に、短い付き合いだがタケオと過ごした楽しい日々がナンバー1を引き留めた。
ディーン神父『何を言ってるのか理解できないが、ローランド、力で制圧しろ。私は補助に回る。』
ローランドがファイティングポーズを取る。これを見てナンバー1もファイティングポーズを取った。ナンバー1は目の前の男が只者ではないと感じた。二人は睨み合ったまま動かない。先に動いたのはローランドだった。右ストレート。ナンバー1はいつも通り左腕で受け止めて躱し、同じように右ストレート。ローランドも同様に左腕で受け止めた。但し、ナンバー1と違い、バランスを崩した。そこをナンバー1の左膝がローランドの右脇腹に食い込む。ナンバー1は、左のアッパーを放とうとしたが、後ろに下がった。元の場所に稲妻が落ちた。
ディーン神父『やはり、強いな。』
ナンバー1は、ディーンの稲妻が一番厄介と判断した。殺傷力が無くても麻痺が残る。それはこの男との戦闘にはマイナスになる。ディーンに攻撃をしようとしたが今度はローランドが邪魔をする。2対1だった。ローランドが不利になると稲妻が落ちる。
2対1の激しい攻防がしばらく続いた。しかし徐々にローランドが劣勢になっていく。
ローランドは、弄ばれてると感じた。自分が攻撃するのをゾーンが躱さずに受け止めていた。そしてパンチにはパンチでキックにはキックで返してくる。それを受ける度に態勢が崩れそうになる。逆にゾーンは平然と受け止めている。同じ攻防なのにこの差はなんだ。これがディーン神父様の言う人類史上最強の力なのか。
ナンバー1は、ローランドを弄んでいるわけではなかった。倒そうと思えば倒せるがとどめを刺そうとすれば稲妻が飛んでくる。だからローランドをどうやって戦闘不能にするかを考えた。それはダメージの蓄積で徐々に動けなくさせることとプライドをへし折ることだった。そのために追撃無しの同じ攻撃のみを仕掛けていたのだ。近接戦なので稲妻は使えないだろう。そして、敵の動きが鈍くなってきたのを感じ取った。もう少しで戦闘不能になりそうだ。
ディーン神父『戦況が悪そうだな。ゾーン、最後にもう一度聞く。我々の仲間になる気は無いか。』
ナンバー1『くそくらえだ。』
ディーン神父『ローランド!3分時間を稼げ。死ぬ気でやれ。お前たちもいけ。』傍観していた二人も戦闘に参加した。
ディーンは、ローランドたちの戦いを見ていた。ゾーンの強さが群を抜いている。元イスラエル暗殺部隊隊長のローランドが赤子同然だ。他の二人に至っては、一撃で沈んで全く役に立たなかった。まだ3分経っていないがローランドが限界だった。倒れてしまったのだ。
ディーン神父『ローランド!』叫ぶと同時に今までにないくらいの強力な稲妻がナンバー1を襲う。そしてナンバー1はそれを避けようと思ったが、倒れたローランドがナンバー1の脚を掴んで動けなかった。引き離す時間は無い。やるしかなかった。稲妻の力のベクトルを変えるしかなかった。上からの直撃を受け止め、そのままディーンに向けようとしたが、実体のないもののベクトルを変えることはできなかった。触った瞬間に感電し、エネルギーが体内を走った。衝撃でナンバー1が吹き飛ぶ。ローランドも吹き飛んだ。ナンバー1は倒れたまま動かない。そしてローランドも倒れたまま動かない。二人とも意識が無いようだった。この地にはディーンのみが立っていた。そしてゆっくりと倒れているナンバー1のほうに歩いて行った。止めを刺すために。




