25.遭難~観光と正体~
・消失の章:1~12話
消失という任務を実施する理由とは?
その任務を遂行する各メンバーはどのような人物なのか?
・悲哀の章:13話~26話
新たな仲間を探すダイブになっています。
15話~18話 ナンバー4の出会いと別れ
19話 ナンバー3について
20話~22話 ナンバー1の出会いと別れ
23話~ ナンバー4の決断
翌日、誰かが来ても出ないようにと念を押して、タケオは会社に出かけた。ナンバー4は、ドラえもんの映画を見ていて生返事だったが、大丈夫だろうと思った。
タケオは、出勤時間よりも一時間早く出社した。タケオの会社はベンチャー企業で比較的自由が利く。誰も来ないうちに部品をチェックしようと思った。半田コテで部品を外し、テスターを使い導通確認をした。簡単な回路図を描いたところでそろそろ誰かが出社してくる時間になった。持ってきた部材を片付けてPCに向かった。とりあえず、仕事のふりをして回路構成を調べてみた。だが使われているモジュールのような部品は、ネットでもヒットしないので機能が分からない。バクタ―セルが電源ならそこを起点に想像して回路図を引いてみようと思った。ネットのニュースにはNASAが失敗したという記事は無かった。ジャックの言う通り、公表できない失敗なのだろうと思った。定時になり他の社員が帰り始めた。この会社は残業を推奨していないのがいい。誰もいなくなったのを確認して、モジュールに適当に電圧をかけてみた。いくつかは反応があったが、全く無反応の物もあった。壊れているのか、使い方が間違っているのか分からなかった。だが、ひとつだけはっきりしたことがある。ある部品が焦げている。これはおそらくマイコンだろう。過電圧で焦げたのか。落下でショートして焦げたのかは分からないが、どの端子がどの役割をしているのか分からない。書き込んであるデータが飛んでいたら終わりだなと思った。これ以上は何もできないし、さすがNASA、普通の会社員には分からないことだらけだ。修理不可だ。買い物をしてから帰ろう。あとは明日と明後日は休みをとろうと思い、休みのメール連絡してから退社した。
タケオが帰ると、ナンバー4はまだDVDを見ていた。タケオを見て笑った。
タケオ『一日中見てたのか。今夜もカレーでいいか?』残っているカレーを見て言った。
ナンバー4『オーケー。』
タケオは夕食の準備を始めた。準備と言ってもカレーを温めて、買ってきたものを切って載せてカレーをかけただけだ。
タケオ『出来たぞ。』
ナンバー4『なにか載ってる。』
タケオ『これが男の浪漫、カツカレーだ。』と言って食べ始めた。
ナンバー4も食べ始め『うまい。この載っているやつうまいな。』
タケオ『市販のカツだけどな。うまいだろ。男にしか分からんと思ってる。』
食べ終えてから
タケオ『持って行った機器を調べたんだがダメだった。おそらくデータ処理するマイコンが死んでる。他の部品も怪しい。手の施しようがない。』
ナンバー4『修理不可か。しょうがない。ハイテクノロジーだからな。俺は操作する側だったから中身は分からない。』
タケオ『まっ、警察経由で連絡すればすぐに迎えに来てくれんじゃないか。それかNASAならある程度位置が分かってそうだから近いうちに迎えに来てくれるかもな。』
ナンバー4『諸事情で、警察はダメなんだ。犯罪者というんじゃなくて、ほら、あれだよ、試験用に飛んでて落下したから、いわば密入国扱いだから始末書レベルの話じゃないから。』と言ったが、俺は殺人犯なんだけどと思った。苦しい言い訳だ。日中に瓦礫の片づけをしたときに愛用のナイフを見つけた。今なら殺れるが、そうなるとここでの生活ができない。
タケオ『じゃあ、NASAが見つけるのを待つしかないのか。そうか。じゃあ、明日は観光しようか。せっかく富山に来たんだしな。』
ナンバー4『タケオさん、会社は?』
タケオ『休みを取った。』とにやりと笑った。
次の日。
軽四に乗って観光に出かけた。
向かった先は、高岡市。車を走らせていると
ナンバー4『タケオさん、あれ、あれ。』興奮している。理由はもちろん。
タケオ『すごいだろ。ド〇えもんが描かれている路面電車だよ。ド〇えもん好きみたいだし。それにここはその作者の生地だからね。あとで乗ってみようか。』
ナンバー4『いいのか。』
その後、その電車に乗り、古城公園でちょっと休憩がてらにド〇えもん像を見て、最後におとぎの森公園でもド〇えもんとその仲間の像を見て満喫した。幸い男二人が騒いでも(特にナンバー4)ホームステイにきている外国人を案内しているように見えたせいか周りからは白い目でみられることはなかった。帰る途中で〇オンの〇スドでドーナツを大人買いさせられて、ジャックは車で食べまくっていた。NASAはやっぱり体重管理とか節制生活してたんだろうなと思った。また、
ジャックのド〇えもん好きから、NASAではド〇えもんブームなのかと想像した。ド〇えもん一色の部屋でくつろぐ職員…。だから失敗してジャックが落ちてきたのかと納得した。
ナンバー4は、寝ながら、寝る前にタケオが言ったことを考えていた。
寝る前にタケオ『明日も休みを取っているからドライブ行くぞ。』と。
興奮して眠れなかった。ド〇えもんの本にDVD、さらには電車等。教授が知ったら嫉妬するだろうな、と思った。ふとナイフを手に取って眺めた。ここにいればこのナイフは必要ないかもしれないな。だがタケオには全てを打ち明けるべきか悩んでいた。打ち明ければ、ここにいさせてもらえるかもしれない。でも警察に通報され尋問されるかもしれない。普通なら後者だが、見ず知らずの俺にここまでしてくれるタケオなら前者を選択してくれるんじゃないかと期待している自分がいた。
タケオは、明日はどこに行こうかと考えていた。なぜここまでジャックに親切にするのか。もちろんジャックをNASAの関係者だと思っているからだ。修理費+世話代+接待費+αを期待している。ジャックが帰る日=大金持ちになる日と思っていた。
そう、ジャックがNASAの関係者ならの話なのだが、タケオは真実を知らないのだ。
翌日の朝。
雨が降っていた。
朝食を食べ終わり
タケオ『外は無理だな。どうするかな。室内の観光はと。』スマホで調べ始めた。
それを見て、ナンバー4は言うなら今かもしれないと思い、『タケオさん、聞いて欲しいことがあります。』と言った。
・タイムマシンのこと
・仲間のこと
・未来を変えるために大勢を殺したこと
・NASAの人間ではないこと
・そして、タイムベルトの不調でこの世界に来たこと
タケオは黙って聞いていた。そして『NASAじゃない?タイムマシン?想像の斜め上だな。だから知らない部品やバイオの電源だったのか。』と納得した様子だった。
ナンバー4『俺は、この世界の人間じゃないんだ。だから迷惑だよな。』
タケオ『すごい迷惑だよ。誰にも請求できないじゃないか。どうするよ。』と怒りをあらわになした。
ナンバー4『えっ?請求?俺の食費の請求?』
タケオ『違う!屋根とか一階の天井にも大きい穴が開いたままだよ。俺は養育費払ってて修理費用は無いんだよ。』
ナンバー4『俺がいることが迷惑なんじゃ…。』
タケオ『はあ?働いて修理費を稼げ。生活費も稼げ。逃げるなよ。不法滞在者でも働けるところはあるから。お前が自由になるのは修理が終わってからな。それまではここで生活しろ。』と怒っている口調だが、笑ってるようにも見えた。
ナンバー4は、タケオはやっぱり前者だったのだと思った。
タケオ『お前の話が長いからもうお昼だな。話が重すぎたし、うーん、ずしりとしたものが食べたくなった。ジャック、お好み焼きは食べたことはあるか。』
ナンバー4『無い。それはどういうものだ。』
タケオ『できてからのお楽しみだ。午後から気分転換にゲーセンに行くぞ。』そう言って準備にかかり、『どれで焼こうかな。片付け面倒だからホットプレートよりフライパンにするか。できるまでDVDでも見てろよ。』と言ってくれた。
ナンバー4は、もう戻れなくてもいいと思った。ここで生きていこうと。
だが、それは許されなかった。この日、お好み焼きも食べれなかったのだ。
DVDをセットした瞬間、爆発が起こった。タケオの家が全壊したのだ。
しばらくして近づく人影。
人影『俺が当たりを引いたな。』と言ったのは、バイエンだった。