23.遭難~ナンバー4~
・消失の章:1~12話
消失という任務を実施する理由とは?
その任務を遂行する各メンバーはどのような人物なのか?
・悲哀の章:13話~25話ぐらいを予定
新たな仲間を探すダイブになっています。
15話~18話 ナンバー4の出会いと別れ
19話 ナンバー3について
20話~22話 ナンバー1の出会いと別れ
23話~ ナンバー4の決断
STステーションの出入口。
教授『慌てても仕方ない。状況を詳しく聞きたいからモニター室に移動しよう。』三人はモニター室に向かった。
モニター室。
教授『さて順を追って聞こう。まずは任務はどうだった。』
ナンバー1『不適合と判断して抹殺した。』
教授『そうか。やはり強引に探してもダメだったか。さて問題のナンバー4だが、どのように遭難したのかな。』
ナンバー2『ステーションに戻るために、ダイブしたんですが、ナンバー4が穴に、時空が、穴が開いてナンバー4が吸い込まれて、どこかの時代に落ちたと思います。すぐに探さないと。』かなり慌てているようだった。ナンバー5とナンバー6が足元に来てその様子を伺っている。
教授『落ち着きなさい。言ってることが支離滅裂になってる。ナンバー4は穴が開いて吸い込まれたのか。それとも二人から離れるよう時空の障壁に近づいて穴が開いて吸い込まれたのか。どっちかな。』
ナンバー2『それは…』二頭の頭を撫でながら考えたが、気づいたときにはナンバー4が穴に吸い込まれる寸前だったからどっちかは分からない。しかし少し落ち着いてきた。
ナンバー1『それは重要なことなのか。』
教授『うむ。穴が先ならダイブ先の座標が吸い込まれた先に代わっていたことになる。穴が後ならタイムベルトの故障になる。』
ナンバー2『戻る際の座標はこのステーションにしていて不変のはずですよね。それなら故障ですか。』
ナンバー1『すまない。向こうで、ナンバー4のベルトと俺のベルトを交換した。俺が動けなかったんで情報収集してもらうために。二人は俺を助けるために瞬間移動回数を使い切ったから、念のために瞬間移動できる俺のベルトを貸したんだがそのままだった。もしかしたら斬られた際にベルトの回路が損傷したのかもしれない。』
ナンバー2『そんな!でももしそうならナンバー1が遭難していたかもしれないわ。どちらにしても遭難者が出ることに変わりはないわ。』
教授『そうだな。誰も責めれない。もしかしたらタイムベルトの損傷ではなくベルトそのもののバグがあってナンバー3も同じように遭難した可能性が考えられる。』
ナンバー2『ナンバー3も!そうね。そうかもしれない。きっとそうよ。』
ナンバー1『だからと言って探す方法はないんだろ。』
教授『うむ。探す手立てがない。自力で戻ってくる以外はな。ナンバー3ならタイムベルトを直せるだろう。同じ部品がなくても原理を知っているから代替品で対応できるだろうから、もしかしたらそのうち戻ってくるかもしれない。逆に、ナンバー4は修理できないだろう。それに戻ってくる途中での遭難だから、再ダイブするエネルギーが足りないと思う。落ちた時代がバクタ―セル開発前なら絶望だろう。』
ナンバー1『見つけることもできない。修理もできない。戻ることもできない。絶望的だな。』
ナンバー2『そんな。』思わず二頭を抱きしめた。
教授は頭を振り『さあ、落ち込んでも仕方がない。少し休みなさい。念のために二人のタイムベルトとステーションの予備のタイムベルトを総チェックするから、しばらくダイブは止めてもらおう。』
ナンバー1『教授、カプセルで治療したい。』そう言って上半身裸になった。
教授『これはひどいな。お前がここまでやられるとは。相当手ごわかったのか。』
ナンバー1『いや、普通だったが、油断した。』
教授『そうか。では治療に行こう。ナンバー2は、怪我はないのか。』
ナンバー2『はい。私は部屋で休みます。』ナンバー4のことを考えると元気がないのは仕方ない。
STステーションの医務室。
ナンバー1は、カプセルに入り、液体に体を沈めた。傷口にバイオマゴットが寄ってきた。それが気持ちよくて目を閉じた。
(遠藤麻希のことを考えていた。気持ちに応えたほうが良かったのか。ミンリ、俺はどうすればよかったんだ。ミンリの顔が浮かんでこなかった。嫉妬してるのか。やはり先に進むにはお前の仇を取るしかないな。)
そう考えながら眠りについた。
ナンバー2の部屋。
ナンバー2はシャワーを浴びてからベッドで横になっていた。
(アレクサンドラならナンバー4を探せるのかしら。彼女の能力は人の過去を見ることだと言っていた。ナンバー1は、彼女にはもしかしたら他にも能力があるかもしれないとも言っていた。その能力があったとしてナンバー4を見つけられるのかしら。でももうあのアレクサンドラに会うことはできない。きっとダイブしても別世界のアレクサンドラに会うことになるだろう。ナンバー4のことを知らないアレクサンドラ。それでは意味がない。結局、何も。できないのね)
そう考えながらいつのまにか眠りについた。
教授の部屋。
教授は椅子に座り考えていた。
(ナンバー4は、もう死んでいるかもしれない。ダイブ先が地上とは限らない。海中や地面の中の可能性もある。空中も。もしかしたら、これも運命に抗う者たちへの制裁なのかもしれない)
と思った。
ナンバー4は背中に衝撃を受けた。そのあとの記憶は無い。
正確には、ナンバー4は、ある民家の屋根に落ち、当然ながらその屋根を突き抜け、運が良かったのかその家の二階のベッドに落ち、ベッドごと一階に突き抜けて止まったのだった。
一階でテレビを見ていた住人は、口を開けたまま天井の穴と瓦礫とともに自分のベッドと一緒に落ちてきたナンバー4を交互に見ていた。そして
住人『マジかよ。』と言ってどうしようかと思った。(警察か救急車か。そもそもどうして人が落ちてくる?保険で直せないよな。火事や地震ならともかく人の落下による保証ってあったかな)と考えて、ナンバー4に近づいた。
住人『宇宙人じゃないよな。人間だよな。』手ごろな長い瓦礫の棒のようなものでそうっと触ってみた。
ナンバー4『うう。』
住人『生きてるな。見た目は外人か。警察に言っても修理費は出ないよな。生きてるならこいつに払わせるか。』とつぶやいて損害が無かった部屋に連れて行った。
前のダイブが日本だったせいかもしれないが、ここは、2016年10月の日本のとある民家だった。




