13.進歩
再開します。
・消失の章:1~12話
・悲哀の章:13話~25話ぐらいを予定(3日毎更新予定)
登場人物紹介(12話まで)
Time Breaker と呼ばれているらしい。
・ネモ教授 :65歳 インド出身 リーダー ラマラガン元大学教授。
・ナンバー1:40代後半 190cm ロシア出身 屈強怪力 本名ゾーン アーミーナイフ所持。
・ナンバー2:22歳 160cm フランス出身 長髪で美人 剣を背負っている。
・ナンバー3: 165cm位 アジア系 精悍な顔つき BHBを所持。
・ナンバー4:20代後半 170cm55kg イギリス出身? 茶髪で茶色の目 ナイフ所持。
・ナンバー5:1歳前後? カナダ出身 グリズリー。
・ナンバー6:1歳前後? カナダ出身 グリズリー。
用語
・BHB:ブラックホール爆弾。半径50mの全てを消失させることができる。
・DBH:?
・STステーション:5人と2匹の基地?
天安門のダイブからは、時間軸で三ヶ月が経っていた。
STステーションの研究室。
教授は、BHBの調整をしていた。ふと手を休め、手伝いをしてくれてるナンバー2を見た。
ナンバー2『どうされましたか?ネモ教授。』視線を感じて振り返り聞いた。
教授『いや、少し休憩しよう。』と言い、ナンバー2とともに食堂に向かった。
ナンバー2『疲れましたか?私にもっとBHBやタイムベルトのメンテナンスの仕方を教えてください。』通路を歩きながら話していた。
教授『ナンバー2。君の気持は嬉しいが、こればかりは専門知識と才能が必要なんだ。知識は学べばいいが、それを応用できるかは才能がものを言うんだ。残念ながら君たち三人にはそれが無いと言わざるを得ない。』
ナンバー2は、それを聞いて反論できなかった。回路が全く分からなかったのだ。このステーション内の日用品でも分からないものが多くある。十五世紀生まれの私には理解できなかった。
教授『ナンバー2の気持ちだけで十分だよ。視力以外は、私はまだまだ元気だ。BHBの調整は終わったし、タイムベルトのメンテは、明日以降にしよう。また手伝ってくれるかな。』うつむいて歩いているナンバー2を励ますように言った。
ナンバー2『はい、なんでも手伝います。』少し元気になった。
第3格納庫。
ナンバー1は一人で訓練をしていた。全身から汗がしたたり落ちている。どのくらい体を動かしていたのだろうか。ナンバー1は、いつの間にかこのぬるま湯の環境に慣れてしまっていたようだと思っていた。教授に拾われた時は47歳だった。時間が無い世界だがそれでも肉体は普通の人間だ。同じように年を取る。あの時からどれだけ経ったのだろうか。50歳は過ぎたと思うし、年齢的に全盛期には遠く及ばないことは理解している。だが、少しでも近づけるようにやれることはしておこう。次はアーミーナイフを使ったシミュレーションをしようと思ったとき、扉が開いた。そちらに目をやり、邪魔が入ったかと思い、緊張が解けてしまった。そして入ってきた二頭が格納庫内を走り回っているのを見て、休憩しようと思った。格納庫を出ると二頭も後をついてきた。
ナンバー1『ナンバー2はどうした?相手してもらえなかったのか?』二頭が脚に抱きついてきた。遊んで欲しいのかと思い、格納庫に引き返した。
二頭は成長するにつれ力を持て余すようになって、自然と遊び相手としてナンバー1を指名してくるようになった。本能で強者が分かるのだろう。じゃれてくる子熊たちを適度に投げ転がしながら、各メンバーのことを考えた。
教授は、年だな。こればかりはどうしようもない。亡くなればこのチームは解散だろうな。
ナンバー2は、教授の助手を頑張っているようだ。だが教授の後継者にはなれないだろう。
ナンバー4は、かわったな。俺の提案した禁忌とも言える力を手に入れる努力をしている。
俺も、過去に向き合って前に進もうと決意した。
第4格納庫。
ナンバー4は、一人瞑想していた。何もない空間で意識レベルを上げる。この結果の見えない努力をしている。ナンバー4らしからぬ行為だった。
ちなみに各格納庫は、
第1格納庫は、食料品保管、
第2格納庫は、生活用品保管、
第3格納庫は、いつの間にかナンバー1の訓練ルーム、
第4格納庫は、空きだったが今はナンバー4専用ルーム、
第5、第6格納庫は、研究用品やがらくたの保管(ホッカイロもここに保管されていた)
となっている。
ナンバー4は、ダイブで失敗するたびに力のなさを感じ取っていた。口で文句は言うが、心ではナンバー1に鍛えてもらって強くなろうと思っていた。ナンバー1から「格闘術の才能も剣術の才能もない。武道の才能がないな。」と言われるまでは。ナンバー3からは銃はどうかと言われて、練習してみたが、ナンバー1から「弾の無駄」と言われた。レーザー銃もあるがダイブすると使用不能になってしまい使えなかった。調べるとエネルギーが枯渇していた。時を超えるときに消費してしまうらしい。ナンバー3は時間を見て改良して使えるようにすると言っていたが、それは叶わなかったのだ。ナンバー1はこんな俺に、「リスクはあるが強くなる方法がある。」と言った。俺はそれに賭けることにしたのだ。瞑想の有意性を考える度にこの悔しさを思い出すようにしている。もっとも瞑想中にこれを考えるようではまだまだだ。
STステーションの食堂。
ナンバー1『ナンバー4、どうだ?』瞑想の件だろう。
ナンバー4『まだコツと言うかキッカケすらつかめない。』
ナンバー1『焦らないことだ。あれが使えたのは俺が指揮した部隊でも二人だけだった。一人は一年半、もう一人は二年以上かかった。』
ナンバー4『他に方法が思いつかないから気長にやるよ。』
ナンバー2『最近、カレーに文句を言わなくなったのね、ナンバー4。』
ナンバー1『瞑想のおかげだな。』 ナンバー4『瞑想のせいかな。』と同時に言った。
教授は笑っていた。あの満身創痍だった天安門ダイブの状況を考えれば、平和だと思った。
ナンバー1は、リーダーとしてこの二人を引っ張っていく覚悟がようやくできたようだ。
ナンバー2は、私の助手として頑張ってくれてる。
ナンバー4は、ナンバー1の指導の下、強くなろうとしている。ロシア軍があれを実現可能にしていたのには驚いたが、リスクを聞いたときは、ナンバー4にはやめて欲しいと思ったくらいだ。
教授『さて、食料や日用品が少なくなってきたので買い出しが必要だ。今回は、誰が行く?』
ナンバー2『私が行きます。その~、個人的に必要なものがあるので…。』
教授『では、私が同行しよう。修理部品が少なくなってきてるんでね。他の者では分からないだろう。』
ナンバー1『謎の敵に襲われたらどうする。俺も行こう。』
ナンバー4『なら全員で行こう。息抜きにうまいもんを食べたい。』
ナンバー2『あの襲撃以来、(敵からの)接触はないわ。教授と二人でいいですよね。』必死だった。教授と二人でのダイブはしたことがないからだ。
教授『たまには、任務以外でそれぞれ好きなことをしてもいいだろう。但し、その世界のルールに乗っ取って問題は起こさないようにな。ダイブする時代を選定しておこう。ダイブはタイムベルトのメンテが終わってからだから明後日でいいかな。』
ナンバー1『ノープロブレム。』
ナンバー4『明日は絶食するぞ。』
ナンバー2『分かりました。』がっかりだった。
ナンバー1『教授、話は変わるが、俺は過去を清算しようと思う。タイミングは任せる。』
教授『覚悟を決めたのか。清算しても歴史は変わらないぞ。』
ナンバー1『構わない。俺の心の問題だ。先に進むには必要だと判断した。』
教授『分かった。買い出しのあと、やってほしい任務がある。その成果次第で決めよう。』




