12.消失⑨後半~中国~
北京天安門広場。
最大のピンチだった。
爆発の直前でナンバー1は無意識に右後方へ飛んでいた。しかし爆発の衝撃を受けて飛んだ方向に更に飛ばされ転がった。すぐに立ち上がる。だが、コートはボロボロになり全身から血が出てる。爆発で破片が刺さったのだ。しかし、飛んだ瞬間に右腕で目を覆い、左腕で後頭部をかばったことで致命傷は避けた。コートを脱ぎ棄てながら周りを確認した。周囲に敵はいなかった。爆発で吹っ飛んだのだ。遠くに二人いる。一人が肩に武器を担いでいる。ロケットランチャーだ。撃つ瞬間の殺気があればもっと上手に回避できただろう。やはり今までの敵と同じく殺気がなかった。長年の戦闘経験で培った第六感による回避だった。敵は、もう一発撃つ準備をしている。ナンバー1は敵から視線を外さずに、じっとしている。怪我でもう動けないのか?否。来るのが分かれば問題ない。殺気がなくても目で見える。幸い周りにもう敵はいない。集中できる。敵がもう一発撃った。ロケット弾がナンバー1めがけて飛んできたが、そのままロケット弾は180度方向転換して敵のほうへ向かった。ここでもグリズリーを倒した技が発揮された。右手でロケット弾の先端下に触れ左手を側面に当てて、そのまま自ら回転して方向転換させたのだ。敵のいた場所が爆発した。ナンバー1は、その様子を見届け、先ほどの爆発で死体から抜けたアーミーナイフを拾い上げた。そしてゆっくりとナンバー2たちのほうへ目をやった。
首が飛んでいた。3つの首が。どれも男の首だった。ナンバー2の意識はすでに無く横たわっている。そばには首を撥ね飛ばした剣を持っているナンバー3がいた。間一髪、戻ってきたのだ。
ナンバー4は、残念な気分だったが、同時にホッとしている自分がいることに驚いた。ナンバー2が死ななくて良かったと思っていることに。
ナンバー3はナンバー2の状態を見て『血を流し過ぎている。タイムベルトは損傷が激しいな。ナンバー4!ナンバー2を連れて先に戻るんだ。ナンバー2のタイムベルトは破損していて自力帰還は無理だ。あとのことは俺とナンバー1で対処する。』と叫んだ。
ナンバー4は頷き、ナンバー2を抱えて消えた。それを見届けてからナンバー1に近づくナンバー3。
ナンバー3『ひどい姿だな。油断したのか。』ナンバー1の姿を見て言った。
ナンバー1『ああ。油断した。ナンバー2とナンバー4は?』
ナンバー3『ナンバー2は、出血がひどく意識が無かった。タイムベルトが破損していたので役立たずのナンバー4に連れて帰ってもらった。ナンバー1。君のタイムベルトも使えなさそうだな。』
ナンバー1『そうか。』どうでもようさそうに答えた。この男にとって帰れなくなることは問題ではないようだ。
ナンバー3『俺のタイムベルトに何かあれば2人とも遭難だな。』
消失50分前
ナンバー1『BHBは無事か。』
ナンバー3『ああ。まだ使うには時間がある。どうする。任務を中止して戻るか。』全身が総毛立つ。隣からの殺気のせいだ。
ナンバー1『任務を中止することは無い。』全身から殺気を放っている。ナンバー1は、ロシア時代を含めて一度も任務を中止したことはない。失敗したことはある。それは人質奪還の任務だ。勢いで敵ごと人質を殺してしまったのだ。だから失敗は恐れていない。常に全力で任務にあたるだけだ。中止はありえない。
ナンバー1『敵を全て倒す。』
ナンバー3『正体不明の敵なんだが。』
ナンバー1&ナンバー3『!?』
STステーションの医務室。
ナンバー2は顔だけを出して液体の入った容器に入れられていた。そばには教授がいて装置の設定をしている。
教授『この装置を使うことがやってくるとは思わなかった。ナンバー4も裸になり、そっちのカプセルに入りなさい。』
ナンバー4がナンバー2を抱えて戻ってきたあと、理由を聞かずにすぐにこの部屋に連れて来られた。教授がナンバー2を裸にしてこの緑の液体の入ったカプセルに入れたが、大丈夫か?ナンバー4は躊躇していた。液体の中になにかうごめいている。それもたくさん。
ナンバー4『俺はかすり傷だから消毒液を塗っておけばいいから。』遠慮がちに言ってみた。
教授『右腕の怪我はひどいぞ。まともに動かなくなるかもしれない。入りなさい。』
ナンバー4『… … …』観念して裸になり液体に体を沈めた。全身を這う感触。あらゆる傷口に何かが這う。だが、しばらくすると気持ちよくなり、ナンバー4は眠りに落ちた。
北京天安門広場。
敵の気配が消えた。もとより殺気はなかったのだが、人の気配が全くないのだ。
ナンバー1『…』目を閉じて周囲を探るがやはり人がいないようだ。
ナンバー1『消えた。俺たちと同じマシン持ちか?』
ナンバー3『分からない。教授に聞いてみるしかないな。』
ナンバー1『まだ時間があるな。手がかりがあるかもしれないから、周りを見てみるか。』
ナンバー3『一緒に行こう。罠かもしれないしタイムベルトは一つだからな。』
消失10分前
広場をゆっくり見て回ったが、死体があるだけで人の気配が無い。
ナンバー1(おかしい。これだけ騒ぎがあったのに警察の介入がない。)
ナンバー3『人がいないし、BHBの設定を10分前にして帰るか?』
ナンバー1『人がいないのにBHBを使うのか?』
ナンバー3『…任務はBHBの使用で完了となるからな。』
ナンバー1『そうだったな。そうするか。』ナンバー1の脳裏にある疑問が浮かんだが、すぐに消した。
ナンバー3『9分前だ。』BHBを投げて、ナンバー1に抱きつかれて嫌そうな顔して消えた。
消失3分前
BHBを拾い上げる男。
男『これがやつら、Time Breaker のブラックホール爆弾か。小さいな。』BHBを眺めながら言った。
別の男『Time Breakerの一人が着ていたコートも持ち帰りますか?ドジル隊長』ナンバー1のボロボロになったコートを持っている。
男=ドジル『念のために確保しておけ、他にはなかったか、バイエン。』BHBを触りながら聞いた。
バイエン『もうやつらの所有物はありません。』
ドジル隊長が、あるボタンを押すと暗証番号入力表示になった。解除ボタンのようだ。あと40秒。
ドジル隊長『暗証番号?聞いてないぞ。ロキ!バイエン!』慌てて聞いた。
ロキと呼ばれた男『知らん。』
バイエン『聞いてません。』
男『何!』あと20秒。
STステーションの医務室。
ナンバー1も液体の入ったカプセルに入った。緑の風呂かと思ったが、全身を何かが這っている。手のひらですくうとそれは蛆虫みたいだった。ナンバー1の知っている蛆虫とは違っているが蛆虫の一種もしくは遺伝子操作で生まれたバイオマゴットだろうと思い、身をまかせた。気持ちがいい。緊張を解いて目を閉じた。
北京天安門広場。死者43人。
STステーションのナンバー3の部屋。
真っ暗な部屋でナンバー3は椅子に座り、何かを考えているようだった。
一日おきの更新でしたが、次回は4月11日再開予定です。
定期的に読んでくれてる人がいらっしゃるか分かりませんが
とりあえず自己満足で続けます。
登場人物紹介(12話まで)
Time Breaker と呼ばれているらしい。
・ネモ教授 :65歳 インド出身 リーダー ラマラガン元大学教授。
・ナンバー1:40代後半 190cm ロシア出身 屈強怪力 本名ゾーン アーミーナイフ所持。
・ナンバー2:22歳 160cm フランス出身 長髪で美人 剣を背負っている。
・ナンバー3: 165cm位 アジア系 精悍な顔つき BHBを所持。
・ナンバー4:20代後半 170cm55kg イギリス出身? 茶髪で茶色の目 ナイフ所持。
・ナンバー5:1歳前後? カナダ出身 グリズリー。
・ナンバー6:1歳前後? カナダ出身 グリズリー。
用語
・BHB:ブラックホール爆弾。半径50mの全てを消失させることができる。
・DBH:?
・STステーション:5人と2匹の基地?




