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蔵品大樹のショートショートもあるオムニバス

都合の良い展開

作者: 蔵品大樹

奇妙な世界へ…

 俺は峯崎武。インチキ宗教に悩まされるサラリーマンだ。

 俺は今、『愛信教』という宗教の信者が最近、うちに来る。特に、神戸雪というおばさんが来ている。普通の信者なら、『帰ってください』と言えば、すぐに帰ってくれる。しかし、この女だけは違う。俺が何度言っても、愛信教を薦めてくる。実際、『警察を呼びますよ』と、言うまで、あの女は帰らなかった。

 そんなある日、またあの女がやって来た。

 「すいませ〜ん、愛信教の神戸です」

 この言葉も耳にタコが出来るぐらい聞いた。それに対して、俺はうんざりしながら返す。

 「あのねぇ、神戸さん、俺はその愛信教とやらには入りませんよ…もう、止めてください…」

 「あのね、峯崎さん、愛信教の神様ならば、貴方のような、心が悲しく雨が降っている様な人でも、迎え入れてくれますわよ、オホホホホホホ」

 俺の怒りは遂に頂点に達し、俺はドア越しに叫んだ。

 「あのねぇ!神戸さん、あなた、いっつもしつこいんですよ!愛信教、愛信教、愛信教…こっちは、胃が痛むほど苦しんでんだよ!」

 流石に胃が痛むは盛ったが、流石にここまで言うと、帰ってくれるだろうと、大半は思うだろう。しかし、この女は違う…筈だった…

 「あ…そうなの…すいません…ではもう帰ります」

 といい、神戸は帰っていった。

 そして、これ以降、神戸や、愛信教の信者が家に来ることはなかった。

 それから数日後、その日は休日。俺は公園で趣味のランニングをしていた。

 そして、ランニングを終え、帰ろうとしたその時。老婆がうずくまっていた。

 「そこの貴方、すいません…手伝って貰えないでしょうか…」

 その老婆は何か、神戸に似ている気がした。それはともかく、俺は老婆に話しかけた。

 「あぁ、おばあさん、どうしました?」

 「はい…実は、メガネを落としてしまって…」

 「あ、メガネですか、わかりました。探してみます」

 「ありがとうねぇ…」

 「いえいえ…」

 俺はその老婆のメガネを探した。

 数分後、メガネはランニングコースの最後あたりにあった。

 「おばあさん、メガネ、見つかりましたよ」

 「あぁ、ありがとうねぇ…何か、お礼をしなくちゃ」

 「いえいえ、これはただの親切ですよ」

 「あらそうなの…優しいだけではなく、謙虚だなんて…」

 そう言うと、老婆は公園を去った。

 あれからまた、数日後、俺は会社で昼休憩をとっていた。

 「係長、何か、おばあさんが、『お礼をしたい』と来ています」

 「おぉ、わかった。今、そのおばあさん、どこにいる?」

 「会社前に居ます」

 俺は会社を出ると、そこには、あの時の老婆と若い美人の女性がいた。

 「あっ、あの時の…」

 「お久しぶりねぇ…」

 「こんにちは」

 俺達は、近くのカフェに行き、3人で話した。

 「あの時、お礼が出来なくて、ごめんなさいねぇ…」

 「いえ、あれはただの…」

 「だから、私の娘の真琴を貴方にあげるわ」

 「えっ!」

 俺は驚いた。何故なら、こんな都合の良い展開、ある訳無いと思ってたからだ。

 「これから、よろしくお願いします」

 「は、はい!真琴さん!」

 「そういえば、貴方の名前を聞いてないねぇ…」

 「は、はい!峯崎武と言います!」

 「私は神部真琴」

 「私は神部ゆきと言います。真琴をよろしくお願いします」

 それからは、幸せの人生だった。真琴と結婚し、同僚や家族に沢山、祝われた。そして、昂と言う名前の息子も生まれた。ここまでは良かった。

 昴が生まれ、俺達の関係は崩れた。そして、昴が保育園に入るのと同時に、離婚し、真琴と昴は出ていった。

 「あの二人は出てってたか…まぁいい、一人で自由なことが出来るからな」

 そう呟いた瞬間、ガス臭い匂いがした。

 「ん、なんだ…」

 俺は匂いがするキッチンへ向かう。するとそこには、火が!

 「うっ、うわっ!」

 俺は思わず口に咥えたタバコを落とす。床は木材。無論、床が燃え始める。

 「うっ、ウワァー!」

 俺は急いで家を出て、消防車を呼んだ。

 そして、消防車が来る頃には、家は、大炎上。

 「おいおい…こんな都合の良い展開、あってたまるかよ…」

 俺はそう呟いた。

 数時間後、なんとか火は消し止められたが、家はもう、家とは言い表せない何かになっていた。

 それから数日後、俺は今、とあるアパートで暮らしている。

 「ふぅ…アパート暮らしも悪くないな」

 俺はそう呟き、今日の新聞を見る。そこには、とある親子が襲われてその親子が死んだ事件が書かれていた。そして、その被害者は…真琴と、昴だった。

 「あぁ…真琴ぉ…昴ぅ…ごめんようぉ…」

 あの時、離婚していなければ…俺はそう思っていると、チャイムの音がした。

 「はい…」

 俺は気力もなく、扉を開けた。

 「お久しぶりです!覚えてますか?」

 そこには神戸がいた。

 「あぁ…神戸さん…お久し振りです…」

 「あらやだ!元気ないわねぇ…」

 「いえいえ…」

 「そんな時には、愛信教に入ったほうがいいわよ」

 「(こんな時でも愛信教か…でも、たまには乗っかるか)えぇ…そうします」

 「えぇ!そうしたほうがいいわよ!」

 こうして、俺は、愛信教に入った。そして、俺は幸せになった!正に都合の良い展開だ!そして、俺はマコトという女性と結婚し、幸せな人生を送っている。





 ここは、愛信教の会議室。そこには教祖の神戸雪とその娘のマコトが話し合っていた。

 「お母さん!また信者が1人入ったね!」

 「えぇ、そうね!」

 「にしても、あの峯崎っていう人、ホント、アホみたい。自分が騙されている事に気付かないなんて。一軒家もここの信者に作らせて、敢えて炎上させたし、あの親子が亡くなった新聞もここを推している新聞社に作らせたものだしね」

 「えぇ、そうね!とにかく、アイツには金を絞れるだけ絞って、保険金殺人なんて起こしましょう!」

 「そうしよう!」

 数年後、二人は詐欺罪と殺人罪で捕まった。これはこれで、都合のいい展開である。

読んでいただきありがとうございました…

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