【3】今後の方針……?
俺が荒野にスポーンしてから1週間が経過した。
「ようやくまともな意思疎通ができるようになるのか」
この一週間俺はこの世界の言語を理解しようと試みたが、全く意味が分からず一日で諦めた。
ワイバーンの群れが襲って来たり、商人っぽい人が盗賊っぽい奴らに襲われてるのを助けたり、色々なことをしていたらあっという間に1週間が過ぎていった。
「そうだ 君の名前は?」
と俺が聞くと少女は少し畏怖を見せながらも小さな声で
「 ノルン、 ノルン・アーガイル」
と言った。
流石異世界と内心ガッツポーズをしていたなんて言えないのだが。
「ノルンかいい名だな ひとまずよろしく」
と言うと少女改めノルンに、「オジサンの名前は?」と聞かれた。
おっと、これは予想してなかったな。
「・・・・・・。」
困ったな前の世界の名前は使いたくないし……
「スマンな俺は何も覚えてないんだ」
取り敢えずその場しのぎの出まかせだが仕方ない。
数分後……
ノルンと会話してみていくつか分かった事がある。
彼女がこの近くにある王国の皇室令嬢であるという事。
この世界を支配していた魔王 マハトマス・アルグレンが滅び、この世界を支配しようとする輩が増えて魔族と人間との間に世界大戦が始まりそうな事。
そしてこの世界の名前はアハトユグシルというらしい。
取り敢えず意思疎通ができるようになったから近くの国まで行くか、それとも別の事をするか迷っていた。
するとノルンは強引に洞窟から俺を連れ出した。
「行こうよオジサン 」
「お、おう……? 行くのはわかったけどオジサンはやめてくれ……」
オジサンって言われてもなあ……
まだ俺は前世だと23歳なんだが……
そんなことも知らずノルンは勝手に足を進めた。俺も慌てて着いていくが、ちょっと待てこいつ足速すぎやしないか……?
あっという間に俺の体は酸素を求めて過呼吸を起こした。
「ゼェゼェ……ちょっと……ちょっと待ってくれ」
「何? もう疲れたの?」
「ハァハァ…… そうだよ 悪いか?」
それでもノルンは容赦なかった。俺の事を置き去りにしてさっさと足を進める。その靴の音がだんだん遠ざかっていくのを感じて、俺は体に鞭を打って歩き出した。
「で、どこへ行くんだ?」
「ナイショ」
「ア、ハイ」
それだったら意味ないんだと思いながら俺はノルンに必死で着いて行った。
「さ、着いた着いた」
ノルンは余裕そうな表情をして前を見るが、俺に関しては体力がない中無理やり限界突破したせいでクタクタで視界はぐわんぐわん揺れていた。なのでもう歩く事いや、立つことすらままならなくなっていた。
「大丈夫かよこいつ」
呆れたようにボソッと呟くノルンの声だけが最後に聞こえた――。気がするがよく覚えていない。
「……!」
気がついた。俺は今どこにいるのだろうか。
どうやらとてつもない疲労で気を失っていたようだ。
冷たい床の感触。視界に入っているのはくすみひとつない真っ白な天井。あとやけに寒い。
「んぁ……ここ何処だ……?確か……一緒に歩いてノルンの目的地に付いて気を失った……? あ、そうだ、忘れないうちにやっておこう」
『システムコマンド コール トゥー ゴット』
自分の体力の無さにはびっくりだが今まで何もしてこなかったツケが回ってきたのだろう……きっと。
もう体力がなければこの世界では生きていけないだろう。だからまた神の恩恵を授かることにした。
「はい マスターなんの御用でしょうか?」
「大至急体力を100億位と錬成と全魔法解放してくれ
ハァハァ」
とにかく俺はこの状態からいち早く抜け出すために更なるチートを求め女神を呼んだ。
女神は内心こんな短期間によくポンポンと出てきますねと思ったがそれは心の中にしまっておいた。
数分後……
とある食堂にて
「いや〜それしにてもオジサン体力無さ過ぎじゃない……?」
「だ〜か〜ら〜 オジサン言うな」
「だって名前分からないんでしょ? 」
「一つだけ思い出せた俺の名前はシン ホランス」
これは俺がゼェゼェしながら考えていた名前だ。わりと違和感はないはずだ。
ノルンはパンを口に詰め込みながら早々と食べている。
「ところでさ、これからどうするの?」
「あ?何が……?」
「私はあの国には戻りたくないの だからお願い私を連れて行って」
ノルンの目には涙が溜まっている。それくらい辛い思いをしてきたのだろう。
「わかった だが俺がこれからやる事は身が一つだけじゃ足りないくらい骨が折れる旅だぞ?
俺はな、ここだけの話だが魔王になって世界を支配し救ってくれと頼まれて居いるんだ
だからノルンにも危険が及ぶかもしれない」そう言うとノルンは、
「ななななななんですってぇぇぇぇ!!」
「おい!バカ声が大きいわ」
「あ、ごめんなさい」
周囲の人達になんだコイツらといった目で見られているがスルーだ。
「で?そこまで聞いても連れて行ってくれと言うか?」
「……はい 私を連れて行ってください」
どうやら覚悟は決まっていたようだ。
「はあ、わかった好きにしろ 但し勝手に死んだらぶっ殺すからな?」
「言ってる事が滅茶苦茶ですよシンさん」
「後、さん付けはむず痒いからシンでいい」
食事を済ませ宿屋へと向かった。
宿屋でこれからの予定と方針を決める為に会議を始めた。
翌日俺たちは、東国へ向かって歩いていた。
「昨日はあんなにへばってたのに今日は平気なのね」
そう昨日ノルンが知らない間に更にチート性能を貰ってきたからである。
「そうかもな〜あ、いい所に洞窟があるじゃん」
いつぞやの洞窟である(来た道を戻って来たと言った方が妥当か)
「しばらくまたここで寝泊まりするからよろしく」
そう言って俺は洞窟の奥へと入って行った。
しばらく進むと鉱脈があるようで辺り一面が光り輝いていた。ここまでキラキラしていると男心をくすぐるもので、めっちゃテンションが上がった。
「よっしゃあ やっぱりこの洞窟は当たりだったな」
と言って俺は一言呟く。
「錬成」
すると、辺り一面の鉱石が圧縮されて自分の目の前に纏まっていく。
「さーて どーすっかな」
俺には鉱石の硬さや、発生の仕方が分かるのである程度見通しを持たずしても大丈夫だったりする。
そうして俺はトライアンドエラーを繰り返しながら作業に没頭した。
数時間後……
「シン〜まだやってるの〜?」
岩の影からひょっこり顔を出したノルンが聞いてきた。
「ちょうど今終わったところだ」
気が付いたら日が暮れているな。
「腹も減ったしこれから夕飯にしようか」
その言葉を待ってましたとばかりにノルンは嬉しそうに「準備出来てるから早く来て〜」と言っている。
さて明日からどうしようか……?




