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雄牛丸連続殺人事件 その2

~6日目~

 いつものビュッフェに向かうと、そこにはパンの他に肉が溢れていた……という事はありませんでした。なんでも魚が提供できなくなったお詫びとして肉バイキング的なイベントが行われるらしいです。ただ、それは夜から始まるらしいので外の景色でも眺めて時間を潰す事にするのでした。



 オニク、オイシイ……モット、モットタベタイ……。ハヤク……ツギノ……ニクヲ……ヨコセ!ヨコセ!ヨコセェェェェ!!


ー以下、脂がポタポタした跡と、何かを書き殴った様なグチャグチャな線が続く。ー


~7日目~


 昨日は神田さんに飲まされたお酒のせいで美味しい肉の味をまったく覚えていません。なんでアルコール度数の高いお酒を一気飲みさせるんですか!そう思っていると弟がさらに怯え出しました。なので昨日の夜に何があったのか思い出せる範囲で軽く振り返ってみましょう。


 昨日は黄金の牛の象部分のカジノでは無い方の広間に行きました。そこでは特別にケバブやシュラスコ等の肉バイキングと言えるイベントが開催されたのです。弟や神田さんは早々に食べるのを辞めていましたが、私はガツガツムシャムシャと食べていたところまでは覚えています。


 ただ、広間が急に騒がしくなったと思うと突然広間の電気が一部消えました。それを見た弟は椅子から転げ落ちるように怯え始め、神田さんはヤレヤレといった感じを醸し出しながらお札を取り出していました。私はその間もケバブを運んできてくれるボーイさんに皿を差し出して肉を落として貰っていました。


 お札を何回も投げる神田さん、転げ回っている弟、ナイフで肉を削ぎ落としているボーイさん、肉をパンに挟んでケバブサンドにしてソースを掛けている私というなんとも奇妙なテーブルだった所は覚えているのですが……あの後神田さんに度数の高い酒を飲まされてからの記憶がありません。ただ、その酒はまるで舌を焼くような物だったのでそれまで食べていた肉の味の記憶が一気に飛んだ事だけは覚えていました。


 それから神田さんは昨日の事を話していたのですが、ほにゃほにゃした様な説明という眠気を誘う物だったので結局真相には辿り着けず、後日肉バイキングを奢ってくれるという事で話がついたのでした。

 


~8日目~


 ドゴーンとした音と共に目を覚ました私は、その後まつたく揺れていない事から空耳か夢だと思い二度寝しました。後から弟に聞いた所、爆発音は偽物だったらしいです。まったく人騒がせな事をする人がいるものですね。


 いつものビュッフェに向かうと、周りの空気が少し重く感じました。周りの声に耳をすましてみると、爆発音に驚いた人達が脱出ボートのある場所に押し掛けてきたらしく、船員の多くが疲弊しています。そんな事は気にせず私はビュッフェに並ぶ肉料理やビーフシチューとパンを持ってきては食べ、持ってきては食べを繰り返しました。


~9日目~

 弟が知らない人と話しています。なんでも弟が船から逃げようとした時に知り合った人物らしく、神田さんも含めて芝居の打ち合わせをしていました。雄牛丸には劇場がないのでどこで芝居をするのでしょうと思いつつ耳をすませていると、知らない人がパチンッと指を鳴らすのでした。


 それから芝居の会場となる娯楽室で知らない人が弟と神田さんにとある物を破壊させようとして……別の知らない人が慌てて飛び出してきました。そして、その人物を指さした知らない人が飛び出してきた知らない人に「アンタがこの事件の黒幕……海上のミノタウロスだ!」と叫ぶのでした。


ーメモー

:被害者:

①海亀 界王 35

・ウミガメ海送の代表取締役。

・3年前に雄牛丸とほぼ同型である雌牛丸でパーティを開いていた。パーティの進行を優先した結果、無茶な要望を船員にし、出現して間もない台風に突っ込む様なルートを進ませた経緯あり。

・死因はナイフで心臓を刺された事による出血死。


②海亀 美晴 32

・海亀 界王の妻。

・雌牛丸パーティで船が難破した時に界王に助けられた事で一目惚れし、結婚した経緯あり。

・夫が亡くなった事で個室に引き籠もっていたが、船員が食事を持っていた時に個室はもぬけの空となっており行方不明となる。その翌日、レストランの生け簀に死体が発見される。腐敗防止の薬品が塗られていたので魚が食べて証拠隠滅とはならなかった。

・死体解剖の結果死因は薬物による中毒死と判明する


羽下滝(はかたき) 三郎 31

・ウミガメ海送の社員。元雌牛丸の船員であり、雌牛丸沈没の原因となる台風侵入の罪を「片山 太陽が賄賂を受け取った」という証言で片山 太陽に押し付けた経緯あり。海亀 界王は彼が裏切る可能性を考えて社員として手元に置いていた。

・自殺しようとしているのを知らない人達が目撃した後、現場に向かうと船尾にロープを括り付けた首吊り死体となって発見される。



④馬綱 義景 43

・ウミガメ海送の社員。雌牛丸の元船長であり、目牛丸沈没の際に特殊通路からいち早く脱出しようとした経緯を持つ。賄賂を貰って雌牛丸を台風が発生する可能性大のエリアに直行させる指示を出しており、羽下滝同様、唯一死亡した片山に罪を擦り付けている。

・突然の爆発音で飛び起きた後があり、彼に装着されていたレーダーを確認すると海に沈んでいた。その日の内に捜索されたが溺死体となって発見された。


⑤森谷 恵介 59

・定年間近な雄牛丸船長。年齢より若く見られる傾向がある。冷え性なのか顔が見えなくなるくらいの防寒着を着込んでいる。 

・犯人に早々に絞殺された後、娯楽室のビリヤード台に死体を隠される。死体があると勘付かれないように冷房をガンガン効かせて照明を暗くしていた。


:犯人:

尾上 瑞穂 (片山 雪穂)  38

・片山 太陽の妹であり、事件の黒幕、海上のミノタウロス。犯人だという決め手はビリヤード台を破壊しようとした弟と神田さんの演技に釣られて飛び出してしまった事。

・片山が1人雌牛丸沈没の原因として報道された結果、職場を追いやられた挙げ句多額の借金を抱える事となる。借金を返す為に生命保険に入り自殺しようとした所、とある男に唆されて今回の事件を計画する。


⑤仕掛け人が仕込んでいた睡眠薬により、娯楽室の中で眠っている所を首を絞めて殺害。遺体を隠して船長に成り代わる。

 ↓

①船長と勘違いして話す界王にキレて衝動的に刺し殺してしまう。

 ↓

②ルームサービス内に毒を仕込んで渡す。死亡時間を誤魔化したのはアリバイ作成、あわよくば料理人に罪を被せる為。この為に釣りが得意な料理人を仕掛け人が欠席する様に仕向けた。

 ↓

③知らない人達から自殺しようと見せ掛ける為に被害者と同じパーカーを着て顔が見えないように立っていた。知らない人達が動き出したのを見て眠らせてから軽く首を絞めていた被害者のロープを締めた後、黄金の牛像の秘密の抜け道を使用して回り込み、死体発見現場に到着したフリをした。

 ↓

④船長室からの船内放送で偽の爆発音を流された事でトラウマが蘇り、緊急脱出口に走る。本来なら開かない筈の扉の鍵が開けられていた事、脱出用潜水艇が切り離されていた事から脱出口から滑り落ち、海に沈んだと思われる。開いていた扉は犯行後犯人の手によって閉められている。


ーメモ終わりー


 説明をダラダラ聞きながら思ったのは船長の死体を放置している所ですかね……?それはそうと、犯人の人が何かのスイッチを取り出し、カチカチと音を鳴らしています。「あれ?あれっ?」とスイッチを確認している内に取り押さえれた彼女は刑事ドラマでよく見る「何時何分○○の容疑で逮捕する」みたいなシーンを挟んで手錠をされるのでした。


 ただ、死体がある場所にしばらくいたせいで臭いが服や体にしみこんでそうだと感じた私はレストランに行く前にお風呂に行くことにしました。そういえば個室のシャワーでずっと済ませていたので船内にある大浴場は始めてだな~と思っていると、大浴場はボイラー関係の故障とやらで使用禁止となっていました。


 売店の方は一応開いていたので、私は風呂上がり用のドリンクをいくつか買って帰るのでした。


~10日目~

 今日でこのビュッフェともお別れかと思いつつ朝食を楽しんでいると、弟と神田さんがちびちびとサラダを食べていました。弟は涙を流しながら「うめぇ…うめぇ……」とキャベツやコーンを口に運んでおり、神田さんはドレッシングを吟味しながら掛けては食べてを繰り返しています。


 そんな光景を見た後でなんですが、その後は特に書くこともなく船旅は終わりました。船から降りる時に料理人の人達が船以外で働いているレストランのチケットをくれたのでまた今度行ってみようと弟に話すと、嬉しそうにうんうんと頷くのでした。

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