勇者と魔王に口説かれます。
最近いい事ないって言ったのこれで何回目だろ・・・
学生時代からずっと呟いている気がする。私はいつでも1人で過ごしていた。誰とも関わりを持たず、ただやるべきことをきちんとやって来たつもりだ。なのになんで私、早乙女時雨はアラサー(29)になっても恋人が出来ないのだろうか。たしかに私は誰とも関わらず過ごしていたから男性の知り合いなんているはずもない(それに女友達もいない)ため、私には出会いがなかった。自業自得といえば確かにそうですが。でも時々思ってしまう、私がもっと本音で話していればもしかしたら、こんな人生ではなかったのかもと。まぁそんなこと考えたところでもう取り返しがつかないけれど。私の人生設計では25歳には結婚していて、28には子供が2人入るはずだった。
実は今日の11月22日は私の記念すべき30歳の誕生日なのですが誰も私の誕生日を祝ってくれる男性は一人もいないのです。なので今年も自分の部屋で恋愛映画を見ながら静かに過ごすはずが会社の残業により、帰りがものすごく遅くなってしまいました。私は会社を出たあと、自然と口から願望の言葉が出てきました。
「誰か私をもらってくれる世界に行きたい」
すると突然私の真下に謎の魔法陣とも呼べるものが出現し、私は謎の光に包まれた・・・
目が覚めると、うっすらと見えてきたのは2人の男性が何やら良い争いをしているようだった。
「この人はこの僕、勇者ラインヘルツ・ゴットバルトの妻となるべく召喚されました。お前はさっさと引きなさい魔王」
「そうゆう訳には行かないのだ、勇者ラインヘルツよ。この女こそこの俺様の妻となるために召喚された者だ。若造はそこら辺の女でも拾ってくるのだな」
なぜでしょう、私抜きで2人が私を取り合っているようにしか見えない。頭が混乱してきた。
「あ、目覚めましたか我が愛しき妻よ」
「むっ、とうとう目覚めたか、我が正妻にふさわしき女よ」
「あの、そんな妻とか正妻とかは置いといて、私から質問させて」
私は確認のために一つだけ質問した。
「ここは異世界ですか?」
「はい、貴方様から見たら間違いなく異世界であります」
「言うまでもなく、貴様はこの世界とは別の世界から我の妻となるべくして召喚されたのだ」
「おい、それは違いますよ魔王。彼女は私の妻となるべくして召喚されたお方!、お前には渡しません!」
「くどいぞ勇者!あの者こそ我の正妻である。断じて貴様のものではないわ!!!」
「あぁもううるさーい!!!!!!!!!!」
私の一声でふたりは静かになった。
「いいですか、私はあなた方のように本人に相談しないような方を選ぶつもりはありませんからね」
「そ、そんな私はあなた様を幸せにするためにここまで来たのですよ、なんでも致しますのでどうかお考え直しください」
「我を選ばぬとは、とんだ恥さらしよ!じゃが我もここで引く訳には行かぬ、望みがあればなんでも叶えてやるぞ」
なんでもと聞いた瞬間、私は少し我儘を言ってもいいと言われた気がした。なので私はここぞとばかりに上から目線でこう言った
「なら、これから2日に1回交互に私とお出かけをしていただきます、その結果が出次第、私はあなた方の中から選ばせていただきます。なにか文句はありますか」
「そういうことでしたら文句はございません。我が名誉と誇りにかけて」
「まぁ、我妻となることは決まっておるのだ。少々遊んでやるとするか」
2人の了承は得た、今まで人生辛いことばっかだったけど、ここなら私はもしかしたら幸せになれるかもしれない。そんな期待を胸に秘めながら、彼女の新しい人生が始まった。