表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/113

第八十二話:理由

「ほら、腕上げて」

 

 そう短く命ずれば、腕は些かの抵抗もなく、上げられていた。


 その素直な振る舞いに、リュートは、……ようやくだな、と嘆息する。

 ここまで、抵抗なく、腕を上げさせるのに、一体どれほどの労力と時間を費やした事か。触れれば、下賤な鳥め、我に触れるなと騒ぎ立て、包帯を解けば、手当などせずとも良い、情けをかけるな、と抗い、薬を塗ってやれば、どうせなら、毒薬でも塗るがいいと、ふて腐れ……。とてもこの大帝国の主と思えぬ、幼稚な暴れっぷりだったのだから、堪らなかった。

 以前、戦った時から、この男の気性の荒さは薄々気づいていたことだったが、よもや、これほどまでに、狭量で、感情的な男だったとは。

 

 ……子供、なのだ。

 

 成長しきれぬ子供を、その内心に抱え続けてきたリュートが言うのも、何なのだが、この皇帝、本当に、子供なのだ。

 しかも、とびっきりの我が儘で、甘やかされた、浅慮な子供。

 それが、この大帝国の主だ、というのだから、世界というのは、実に不思議なものである。

 

「お前、本当に、二十歳越えているのか? それに、本当に、この帝国を治める皇帝なのか?」

 腕から、極力優しく包帯を解きながら、リュートがそう問うてやれば、これまた、幼稚なふくれっ面が返ってくる。

「黙れ、白。我は、誰にも脅かされぬ、大帝国リンダールの皇帝ぞ。本来なら、お前如き、我の姿一つ拝むことも出来ぬ身分であるのに……」

「はいはい。お前が、僕をここに、呼んだんだろ。それに、僕は、しばらく、お前の世話をしてやるって言っただろ、諦めな」

「な、何を……」

 

 そう抗いの言葉を見せながらも、包帯を解くリュートの腕を振りほどいてこないのは、少し、進歩があったと見ていいだろう。

 あの驚愕の再会から、一月たって、ようやく、ここまでの関係になれたのだ。この、……どうしようもなく、扱いづらい、大帝国の主と。

 

 ふう、とまた大きく嘆息して、リュートはこの一ヶ月を振り返る。

 大暴れして、抵抗し、何かあれば、お前なんぞ、火刑だ!、とわめき立てる皇帝を宥め賺せるのに、終始した最初の一週間。それは、もう、はっきり言って、……こいつ、ぶっ殺してやろうか、と内心、何万回と思ったか分からない。それでも、尚、この皇帝と、彼を取り巻く環境、そして、この帝国の様子を観察したくて、その脳裏に、皇帝の首をべきべきに折った所を思い浮かべながら、我慢を重ねてきた。そして、ようやく、ここまで懐いてくれたのだ。

 

 正直、憎い、憎い、仇である。

 両親、兄、仲間達を殺した、あの悲劇の戦争を指揮した、責任者。

 今も、この男に対して心の奥底に、どろりとした感情が渦を巻いているのは確かだ。

 だが、その感情に、自分は、もう、流されはしない。

 過去とは、今現在に生かすために、存在しているのだから。過去を悲惨だ、愚かだ、と疎んで、それから目を逸らしてはいけないことは、この身を持って知っている。

 だから、感情のままに、この男を殺すつもりはない。だが……。

 

 ――たぶん、以前の僕だったら、あっさりと、この馬鹿、殺してただろうな。

 

 そう偽らざる内心を確信しながら、リュートは、解けた包帯を器用に巻き取って、洗濯籠の中へと放り込んだ。

 包帯が解かれた目の前の腕には、代わらぬ爛れた皮膚。

 リュートが得ていた有翼の民の医学でも、一向に改善が見られないその症状。だが、どうやら、以前と比べて、痛み、かゆみは大分緩和されたらしい。夜、痛みからくる悪夢にうなされて、暴れ狂う事が、ここ最近ではめっきり少なくなっている。

 そういえば、とリュートはもう一つの事実に思い当たる。

 最近、皇帝は、侍女の顔も殴らなくなっていた。

 どうしても辛い夜には、侍女のサルディナの名を呼んで、狂乱するも、暴力をふるうのは決まってリュートにのみで、サルディナには一切手出しはしなくなっていた。それどころか、甘えるように、彼女に抱きすくめられながら、眠りにつくのだ。

 正直、リュートには、これが、理解しがたい。

 

 殴られても、殴られても、彼に尽くしてきた侍女と、その女を、突然大切にするようになった皇帝。

 

 ……僕が、来てから、何かあったのか? まさか、皇帝が、僕の言葉に動かされて、女性に暴力をふるうのを止めたとは、思えないし……。

 

 そう。人の心なんて、そう簡単には動かないのだ。

 それが、男女の間柄ならまだしも、国と、国の間では、尚更だ。

 

「皇帝。前も言ったが、……侵略、止める気はないか? 以前の賠償金の額が負担で、国庫を脅かしたというのなら、今回は、額を、少し考慮してやっても良いぞ」

 

 こんな、言葉では、動かない。

 皇帝も、元老院も、侵略が当たり前だった国家も。

 そう分かってはいても、リュートは、毎日、その言葉をかけずにはいられなかった。決まって、次の様な言葉が吐き捨てられるのが、分かっていても、だ。

 

「馬鹿か、お前。綺麗事を言うな、反吐が出る」

 

 ……反吐なら、お前のその姿見ただけで出そうだ。

 と、言い返したいのをぐっと堪えて、リュートは三度(みたび)、嘆息する。

 

「はい、お決まりの台詞ありがとう。じゃ、僕も、再度、お決まりの台詞を。『お前は皇帝だろう? 戦争くらい止められなくて、どうする』」

 

 これにも、決まって――。

 

「黙れ、白。焼き鳥にするぞ」

 

 こう、返ってくるのだ。

 堪らないのは、何故、皇帝たる身分にあるものが戦争を止められないのか、そして、第二軍とその将サイニーを破られて尚、あの聖地に固執するのか、はっきりと明言しないところだ。なんだかんだと、子供のようにだだをこねて、話題をはぐらかすか、押し黙ってしまうかのどちらかで、話が遅々として進まない。

 

 この一ヶ月、万事こういった調子で、リュートが目論んでいた肝心の情報収集の件は、めざましい成果はなかったと言ってよいほどだった。

 皇帝の治療名目で、リンダールの本を所望するも、あっさりと却下され、それどころか、この皇帝の居る本宮から、一歩たりとも外に出ることは許されなかった。奴隷という身分を考えれば当たり前なのかもしれないが、それにしたって、本の一つも読ませてくれてもいいのに、と思う。医学の本であれ、何であれ、本というのはそこに書かれていること以上に、多くの情報を内含しているものだからだ。

 それに加えて、監禁と言っていいほどの、行動規制。この皇帝の部屋に来るとき以外は決まって、鍵と鉄格子の付いた部屋に閉じこめられる。皇帝曰く、――『鳥籠』らしいが。

 皇帝の世話の隙を縫って、皇宮外の衛兵くらい幾人かは倒せるかな、と思うものの、一人でこの宮殿全てを突破できるか、といったら、また不可能な事だろう。空を飛んで逃げたとしても、皇宮上に常に見張りに竜騎士数体が飛んでいるのだから、すぐに捕まって今度こそ、処刑されてしまうに違いない。

 そして、さらに、困ったことに、リュートが目論んでいた結婚式への出席許可も、易々と許されることもなく、ここ数日、まさに、飼い殺し、といっていい状態が続いているのだ。

 

 結局、そんな手詰まりなリュートに残された道はただ一つ。この国の長である皇帝から、一つでも多く情報を聞き出すことしかなかった。そのために我慢に我慢を重ねて、彼との関係を構築し、会話も進めてきたのだが――。

 

 ……攻め方を、そろそろ変えるべきかな。

 

 功を成さぬ作戦を、いつまでも続けるのは、元々性に合わなかったのだ。

 リュートは、今までの情に訴えての正攻法から、別の、卑怯とも言える手段への移行をあっさりと決意していた。

 

 先ずは手始めとばかりに、べりっ、と痛々しい音を響かせて、患部から一気に薄布をはぎ取ってやった。これには、堪らず、即座に悲鳴と暴力が返ってくる。

 

「し、白! 貴様!! か、火刑だ! お前なんぞ、今すぐ火刑……!!」

「はいはい。何度目の死刑宣告でございましょうかね、陛下。畏れながら、承伏出来ません。死にたくないですから」

「わ、我を馬鹿にするのも大概にせよ、白! ツァイア! 即刻、この男、刑場に連れて行け!」

「やだね。僕を殺したいんだったら、お前が殺りに来いよ。お前、自分の竜の仇が取りたいんだろう? 復讐ってのは、自分の手でやるもんだ。それよりもさ……」

 

 火刑、火刑と言いながら、皇帝には、本気で自分を殺すつもりがないことは、この一ヶ月で十分に理解していた。

 本気で殺すつもりなら、元々がこの場にリュートを呼びつける必要などなかったからだ。皇帝にしてみれば、憂さ晴らしに、かつて自分をコケにした男を、屈辱の奴隷身分に落とし、それを残忍にいたぶって、間近であざ笑いたいとの算段があったのだろう。しかし、むなしくもその優越感は、この不貞不貞しい男の前に、あっさりと砕かれる羽目になってしまい、何故だか憎い仇に手当を受けるという奇妙な状況にまで陥っているのだが。

 その皇帝の内心の悔しさを見越して、リュートは、計画発動、とばかりに、さらに、ざくざくと痛い所を突く言葉を、口から吐き出し始める。

 

「大体、何気取ってるんだよ。お前らリンダール人だって、元々は奴隷民族だった癖して」

「うるさい! 羽が生えているとか言う気持ち悪い民族のお前らには言われたくはないわ! 我らは、神に選ばれた民族なのだ! 本来なら、お前達が住む北の大陸に、我らの祖先の国があったに違いないのに……。あの約束の地、こそが、本来の我ら、故郷で……って!!」

 

 唾を飛ばして抗う皇帝を制するように、今度は、膿んだ患部に、ざっくりと医療用の小刀が食い込んでいた。壊死した皮膚を取り除いて、新しい皮膚の再生を促進させる、というれっきとした医療行為なのだが、施される患者の方は堪ったものではない。しかも、医者でない、この異民族の羽の生えた仇にされるのであるから、痛みは尚更だ。

 

「し、しろ……。き、き、きさま……」

 

「はいはい。約束の地、ね。お前らの言う、神の遺跡だろ? その聖地回復の為、そして、それに付随する奴隷貿易の為に、お前達は僕達の国を侵しているわけだが――、その辺り、もう少し、詳しく教えてくれるかな?」

 

 今度は、その患部に、消毒液に浸した布の一拭き。

 この痛みには堪らず、皇帝は、渋々とその口を開いて答える。

「く、詳しくも何も、それ以上何もない。我らの祖国の奪回と、お前達を狩って、奴隷として売り、帝国の利益としている。それだけだ」

「ふうん。祖国の奪回と言うけれど、それが、今、本当に必要なのか? 皇帝の間で地図を見たが、あれだけ広大な領土を手に入れておいて、尚、祖国が欲しいものなのか? 人口が増えて、この大陸だけではまかなえないとか、そういうのではないんだろう? それから、お前の言う奴隷貿易についても、一点、腑に落ちない点がある。今から僕の仮説を言うから、正解かどうか、後で答えてくれるな?」

 

 答えないと、さらに、治療を続けるぞ、とばかりに、リュートは小刀を、きらり、と光らせた。

 これが、本当の脅しのつもりで取り出された刀なら、今頃、護衛騎士が叩き落として居るところであるが、一応、名目医療行為なので、騎士も、なかなか手出しが出来ないようだ。それを見越して、リュートがさらに問う。

 

「奴隷貿易についてだが、そもそも、そんなに、この国に有翼人奴隷の需要があるものなのか? 観賞用の珍しいペットを飼う層が、それほどいるとも思えないし――、労働用として必要なのだったら、お前達がしていた『選定』も必要ないよな? 頭数が欲しい労働用なら、とりあえず、手当たり次第に連れて来ればいいんだ。それをせず、金髪やら、碧の目やら、珍しい者だけを選んでこの国に連れてくるのは、やはり、有翼人は、観賞用としての需要が主だから、なんだろう? いや――、そうでなければ、ならないんだ。なぜなら……」

 

 ばさり、と久しぶりに、リュートの背の白羽が、羽ばたきを見せる。

 

「理由は、これ。この翼があって、単体で空を飛べる有翼人は、空を制する竜騎士の地位を脅かす最たる者だ。例え、この大陸の風が、有翼人にとって、好ましくない風であっても、飛べないわけじゃない。もし、労働用奴隷として、大量に僕らの国から有翼人を輸入したら、どうなるか……?」

 

 この問いに、皇帝は答えない。ただ、その乾燥してひび割れた口元を、ほんのりと歪めて、沈黙を貫くのみだ。

 その、彼の態度を見越していたように、リュートはさらに、自分の仮説を、口にする。

 

「もし、大量の有翼人が、奴隷身分からの脱却を求めて、反旗を翻したら……? それは、この国において、お前達、リンダール人を脅かす最大の敵に他ならない。空を飛べるという占有技術があるから、お前達は、この大陸の覇者で居られるんだ。それを脅かす大量の有翼人は、この国にあってはならないんだろう? だが、やはり、高値で売れる有翼人の奴隷貿易といううまみも捨てきれない。そうした時に、戦争をして、これ以上有翼人をあの国から拉致するのは、ひどく効率が悪いんじゃないか? その証拠に、僕が戦ってきた、今回の第二次侵攻の時には、お前が行ったあのエルダーでの惨劇以降、帝国が大規模に、有翼人の選定を行い、希少種を拉致した、という話は聞かなかった。考えてみれば、当たり前の事で――」

 

 また、ばさっ、という小気味よい音を響かせて、リュートの翼が、折りたたまれた。そして、その碧の目を伏せ、過去の戦へと思いを馳せる。

 

「何故なら、お前達が初めて有翼人を拉致したのは、第一次侵攻の時だ。それから、もう十三年の時が流れている。十三年もあれば、十分だっただろう? わざわざ遠征をせずとも、この国において、新しく、そして、貴重な有翼人奴隷を手に入れるのには」

 

 おそらく、行われたであろう悲劇。そして、今も尚、悲劇の元にいるであろう拉致された同胞達。

 想像するだけで、リュートはその腹の底から、ぶくりとした黒い感情が湧き上がるのを感じて、唇を噛みしめる。

 

「……奴隷確保の為の遠征なんぞという金の掛かることは、もうしなくてもいいだろう? この国で、有翼人を繁殖させればいい訳だから。希少な者と、希少な者を掛け合わせて、より高値で売れる希少な者を、な」

 

 自ら語った、おおよそ人の扱いからほど遠い同胞達の運命に、リュートは吐き気をもよおしながらも、ただ、凛として、その目を見開いていた。そして、その仮説の正否を問うべく、崩れた男の顔を、射抜くように見遣る。

 それに対して、返ってきたのは、奇妙に歪んだ口元から漏れる、不気味な笑みと、肯定の言葉だった。

 

「はははっ。よう、そこまで、分かったな。流石、我を敗走させた男だ。褒めてつかわす。おおむね、正解だ。しかし、完全なる有翼人奴隷の自国での繁殖、というのは、まだまだ出来ず、新しい血を入れるためにも、定期的に奴隷を北の地から狩ってくる必要はあるが、な。それ故、エルダーでも選定を行ったのだが――。正直、それだけのための遠征というなら、金の面からは割が合わない」


「……だろうな。証拠は何もなかったけど、僕がこの国の長だったらどうするか、と考えたら、自ずと導き出された答えだ。正直、おぞましい答えだが、効率を第一に考えたら、自然、そうなる。異国から飛翔能力のある奴隷を多く輸入しても、反抗心を生むだけだ。今まで、かの国で人として当たり前の生活を送っていたものが、連れて来られて、はい、奴隷ですよと、承伏出来るわけがない。真に有益な奴隷が欲しいなら――、反抗心も何もない、売買される奴隷身分が当たり前だと思ってくれる奴隷が欲しいのなら――、子供の頃から、教育すればいいんだ。お前は、奴隷だ。反抗なんて許される身分ではないのだ、とな。まったく、教育とは使いようによっては、最大の武器であり、有益なる政策だよ」


「くくくっ。白、お前、なかなか、為政者としての素質があるではないか。冷酷で、無慈悲で、極めて効率的で、結構。……実に、性悪な政策だ」

「お褒めの言葉、光栄の至り。性格が悪いのは、どうやら血筋でね。……で、奴隷貿易については、むしろ赤字になるとすれば、お前達が侵略をする理由は、これ以上、奴隷貿易に求めることはできない。それでも尚、侵略に拘る理由は……あと一つなわけだが――」

 

 言い淀むリュートの目が、部屋の隅に置かれていた皇帝の錫に、ちら、と向いた。すると、そこには、神を現す、円の中の十字の印。

 

「何よりも、宗教的な理由……だな。正直、有翼の民の僕にとっては、分かるようで、よく分からないんだがな。その神の為の聖地回復、という理由がな。金をかけてわざわざ侵略して、聖地を手に入れることが、そんなに必要なのか。そして、それが、どうして、この『今』に、必要なのか」

 

 これに対して、皇帝からは、肝心の返答はなく、小さな笑みと共に、ふん、という鼻息のみが返ってくる。

 

「宗教国家というのも、……何だな。ここまで来ると、狂信にしか見えないんだが、まあ、お前らの国にとっては、この宗教というのが欠かせないんだろう? 人を集め、人の思想を統一し、人を動かすためには、宗教というのは、実に効率がいいな。少し、見習いたいくらいだ」

 

 と、そう言葉を続けていたリュートの前で、凶暴な八重歯が、てらり、とその姿を見せていた。

 珍しく、声を上げて笑っているのだ。……この、崩れかけた、傲慢で、稚拙な帝王が。

 その笑いは、容貌と相まって、どこか、狂気を帯びたものに感じられ、今まで優位に会話を進めてきたリュートでさえも、その内心でぞくり、と寒気をもよおしたほどだ。

 そんな彼の動揺を知って知らずか、皇帝は、その八重歯を見せたままひとしきり笑うと、ふう、と大きく溜息をついて、意外な言葉を吐き出していた。

 

「宗教が、政治的手段にしか過ぎぬと断ずる時点で、お前と我らとは分かり合えぬのだ。お前らの所の神は、随分とぬるいらしいの」

 

 正直、リュートには、この言葉の真意が理解できない。いや、したくないのだ。

 心の奥底で、今も、疎んでいるからだ。あの、狂信からくる惨劇を。そして、あの惨劇を引き起こしたこの国の宗教というヤツと、一日に幾度となく聞かれる狂気を帯びたあの祈りの声を。

 それと同時に思い起こされるのは、かつて対峙した、あの誇り高き鉄人の残した言葉だった。

 

 ――『我らの神は絶対なのだ。我らは……神にすがるしかないのだよ。この、我ら、リンダール人といういじましい民族はな!』

 

 あの、男でさえも。

 あの、人を殺しながら、畜生に堕ちたくないと自分を研鑽し続けてきた男でさえも。

 すがらなければならないものが、この世にはあるというのか。

 そして、この何者をも恐れぬ、大帝国の主でさえも。

 

 ……分からない。

 分かりたく、ない。だが……。

 多分、それは、何よりも、この国で見なければならないものの一つだ。

 この国で、真実を見定め、祖国の安寧を得るためには、どうしても。

 ……安寧? いや、もっと……。

 

 その思考と共に、また、リュートの脳裏にもう一つの台詞が過ぎる。だが、その思考も、すぐに、目の前の凶暴な八重歯が紡ぎ出す言葉に遮られていた。

 

「ああ、そう言えば、あの女も、その様な考えであったな。あの、雌蟷螂の娘もな」

「……え、エリーが?」

 

 ふと漏らしたその名に、即座に、八重歯が反応していた。先までの凶暴さからは一変、にや、と歪められた口角と相まって、からかいに似た表情を見せている。

 

「何だ、あの女。お前に、その名を許しておるのか。随分とお前がお気に入りのようだの。その愛称であの女を呼べるのは、あの女の母親だけであるというのに。これは、いい」

「こ、これは、いいって……! ぼ、僕はあの女なんか、大嫌いなんだからな! ただ、あの女がそう呼べと言ったから、そう呼んでいるだけで……。だ、大体、何だ。そ、その、あの女は、お前の、その……妻になる女なんだろうが。お、お前、本当に、あの異母妹と結婚するつもりで……」

 

 またも、いつにない少年の表情で、そう言いつのるリュートに対して、皇帝は、さらにその口角を意地悪げに歪めてみせた。そして、一言、短く告げる。

 

「無論。結婚式を挙げるつもりだが、……何か?」

「な、何か?って……! い、異母妹だろう? いくら、神託があったからって、どうして、そんな簡単に、妹との結婚が受け入れられるんだ」

「我は、皇帝であるからな。この国の為に、世継ぎを残すは、務めである。楽しみにしておるよ、あの女との結婚式を」

 

 完全に、嘘と分かる白々しさ。

 だのに、それを悪びれることもなく口にする、この態度。

 

「我らリンダールの結婚と言うは、実に神聖なものなのだ。神の許した相手と、神の御前にて、誓いを立て、自らの名が記された婚姻証書に血判をし、それを聖なる炎にくべて、婚姻が成立する。神が認めたその結婚は、どちらかが死ぬときまで、破られてはならないのだ。そう……、夫と妻の、どちらかが死ぬときまで、な」

 

 ――夫か、妻か。そのどちらかかが。

 

「皇帝、お前、まさか……。な、何か企んでいるんじゃあ……」

 

 続けざまに語られる言葉に、言いしれぬ不吉さを覚え、リュートがそう真意を問うた時だった。部屋に、いつもの侍女の声が通っていた。

 

「陛下。ガイナス将軍が、帰国なさったそうです。有翼の国の今冬の駐留の件で、陛下にお話したいことがあると、お目通り願っております。如何致しましょうか。やはり、いつものように、面会はお断りになられますか?」

 

 その意外な言葉に、皇帝よりも先にリュートが動いていた。今まで、持っていた小刀を置くなり、即座に入室してきたサルディナに、詳細を問う。

 

「ほ、本当に、あの暗黒将軍が? サルディナ、将軍は一体何と?」

「そ、それが、陛下に一度お目通り願いたいと言うだけで……。それから、あの、何故か、将軍は白様にも会いたいと仰せで……」

「ぼ、僕にだって?」

 

 あの、エルダーで一度会ったきりの、あの暗黒将軍が、一体どうして。

 そう問う間もなく、後ろの帝王からは、意外な返答がなされていた。

 

「よい。元老院の爺共ならともかく、ガイナスなら、会おう。あれは、爺共と違うて、腹に何もない男であるからな。それから、白。お前も付いて参れ」

 

 

 

 

 

 それから、しばらくの後、皇帝と将軍の面会は実現していた。

 場所は、玉座の置かれた皇帝の間。立ち会うは、リュート、護衛騎士ツァイアの二人のみ。

 皇帝は、あの良くできた仮面を付けて、玉座に鎮座し、自国の第一軍の将を迎えていた。勿論、その病状を詳しく知られたくないのであろう。将軍には、一切玉座へ近づく事が許されず、玉座から遙か遠く、声がやっと聞こえる距離での謁見という奇妙な面会になっていた。

 

「久しいな、ガイナス」

 

 皇帝が仮面の下からそう声をかけてやれば、遠くの黒装束から、だみ声が返ってくる。

 

「陛下におかれましては、ご病床にある身を押されて、この謁見をば――、って、俺ぁ、そんな堅苦しい挨拶苦手だからよぉ、陛下。ざっくり行かして貰うとするぜぇ。とりあえず、報告すっとよ、有翼の国に俺んとこの第一軍配備完了したぜ。ま、来年の雪解けには即、侵攻するつもりだからよ、ご心配なく」

 

 本当に、これが帝国最強の一軍の将の言葉遣いなのか。その崩れっぷりときたら、酒場で飲んだくれるどこぞの親父のようである。

 だが、当の皇帝は、この将軍の不敬ぶりはいつものこと、と、咎める様子もなく、その先の報告を尋ねてやる。

 

「それで、次の春の勝算は?」

「ま、俺様にかかれば、楽勝、楽勝……って言いたいところだけどよぉ。なんせ、俺様、鳥相手の戦争初めてだからなぁ。ま、もう少し、情報が欲しいところだな」

 

 遠く、そう笑って告げると、将軍はそのアクの強い浅黒い顔を、皇帝から、その脇に控えていたリュートへと滑らせていた。

 

「だからよぉ、陛下。ちょっと、そこの金髪兄ちゃん、俺に貸してくんねえかなぁ? そいつ、有翼軍の元指揮官だった男だろ? ちょいと、聞きてえことがあるんだよ」

「……聞きたいこと?」

「そうそう。その兄ちゃん、俺に払い下げてくんねえかなぁ? そいつ、ちょこっと拷問して、軍の情報から、地形まで、全部聞き出してえんだ。あ、悪ぃけど、俺様、手加減しらねぇから、拷問のあと、この兄ちゃん原型留めていないだろうけどよ」

「……なっ……! ふざけるな!!」

 

 あっさりと言われた提案に、勿論、黙っているリュートではなかった。皇帝を押しのけて、即座に玉座の置かれている高台から降りると、畏れなど一分もない足取りで、将軍の前まで歩み寄る。

 間近で見る将軍は、壮年の男ながら、リュートよりも遙かに頑健な逞しい体躯をしていた。あのエルダーで見た時と変わりのない粗野な印象の顔に、下品な態度。今とて、皇帝を前にしながら、鼻を堂々とほじっているのだから、実に大した物だ。

 

「なんでぃ、兄ちゃん。自分から、拷問されに来たのかい。手間が省けていいやぁ。素直なやつぁ、俺様、好きだぜ。おっ、でかいの取れた」

 

 と、鼻からほじりだした巨大な鼻くそを観察する、という下品な男の態度に呆れながらも、リュートの瞳は些かも揺るぐことはなかった。ただ、堂々として、喧嘩をふっかけんばかりに将軍の目を睨め付ける。

 

「誰が拷問されに来た、だ。僕は何をされたって、何も喋らんぞ。同胞を売るくらいなら、全力でお前と刺し違えてやるよ」

「……ははははっ。相変わらず、気持ちいい啖呵切る兄ちゃんだなぁ。そりゃ、陛下や姫さんが気に入るはずだ。ま、その意気、その意気。せいぜい頑張って、俺様の拷問に耐えてくれや」

 

 ――ぺと。

 

 ぞんざいな言葉と共に、リュートの胸元に何かが塗りつけられていた。見遣れば、それは――。

 

「うわっ! 汚っ! 何、鼻くそ、なすりつけてんだ! おい、皇帝! お前んとこの将軍、下品にも程があるぞ!!」

 

 あまりの衝撃の行為に、なすりつけられた部分を拭き取りながら、玉座へと文句を飛ばせば、これまた楽しげな笑い声が返ってくる。

 

「その男は、そういう男なのだ。そうだな、サイニーが帝国の理性なら、ガイナスは帝国の本能だ。喧嘩に関しては、滅法強いぞ。それ故、第一軍を束ねられるのだからな。さて、我が卑しき奴隷よ。その男に、お前を委ねてやってもいいな。丁度、お前との下らぬお世話ごっこにも飽きてきたところだ」

「お、お世話ごっこって……!」

「我は、お前の苦痛に歪む顔が見とうて、お前を奴隷にしたのだ。憎い仇の世話という屈辱にいつまで耐えられるかと思い、今まで言いなりになって傍観しておったが、存外、お前は、そんな屈辱には、びくともせぬようなのでな。そろそろ――血が、見たい。お前の、血がな。白」

 

 そこにあったのは、何よりも冷たい無機質な、仮面。感情も熱も、一切がない、まるで、死人の様な、顔。

 

「皇帝、お前……」

「ガイナス! 良かろう、この者への拷問、許可する。ただし、殺すなよ。簡単に死んで貰っては、つまらぬのでな」

 

 かつて、対峙した凶暴な男の表情が、リュートの脳裏に蘇る。

 ……ああ、そうだ。こいつは、こんな男だった。

 人を人とも思わない、残虐で、傲慢な男。そして、どうしようもなく、幼くて、浅慮な子供。

 

「さ、金髪兄ちゃん、俺様と来てもらうぜ」

 悔しさと怒りから、皇帝の居る玉座へと、歩みを戻さんとしていたリュートの腕が、否応なしに、無骨な腕に引き戻される。抗いたくても抗えぬ、その強靱な腕。

 それを、何とか振りほどかんと、リュートがその目を光らせた、その時。

 

「――お待ち下さいませ!!」

 

 突然、この皇帝の間に、女の声が響き渡っていた。

 この部屋には、皇帝、将軍、護衛騎士、そしてリュートの男四人しかいないはずであるのに、一体、どうして女の声が。

 

 驚き、一同が、皇帝の間入り口を、即座に見遣れば、そこには、ルビーの様な赤目を細めて、ゆったりと微笑む、とびっきりの美女の姿。だが、その猛禽を思わせる鋭い赤目は、今日はどこか花の赤を思わせるほどに艶めいて、いつもの、高飛車な雰囲気は微塵としてない。

 

「え、エリー……」

 

 リュートのその呟き通り、突如として皇帝の間に現れたのは、この国の主の異母妹、エリーヤだった。

 そして、その後ろには、二人の女騎士――、一人はリュートの見覚えのあるキリカという副団長、そして、もう一人は見たことがないキリカによく似た少女騎士の姿。

 彼女は、驚く一同を尻目に、優雅に一つ微笑むと、将軍に連れ去られようとしていたリュートを追いやって、その前に進み出ていた。その出で立ちに、追いやられた当のリュートの目が、少々、揺るぐ。

 

 美しいのだ。

 今日の彼女は、いつになく、美しい。

 

 彼女が纏っているのは、いつもの騎士服でもなければ、あの中継島でみた破廉恥な衣装でもなかった。

 品の良い、露出の少ないシンプルなワンピース。一言で言えば、清楚、とでも言うような、派手さのないその衣装が、とびきりに彼女に似合っているのだ。いつものあの高飛車で、傲岸な香りを漂わせる出で立ちよりも、ずっと、ずっと……。

 

「あら、リュートさん。如何なさいましたの? もしかして、私に見とれていらっしゃるの?」

 

 言葉使いまでも、違う。

 今居るのは、あの、炎の様な女ではない。大事に温室で育てられてきた、品のよい花を思わせる、とびきりの淑女。それが、どうして。

 

「お前が、なぜ、ここに来た、雌蟷螂の娘。お前との謁見なんぞ、我は許可しておらぬ」

「あら、冷たいお兄様ですわね。私、帰国してからずっとお兄様に会いたいと切望しておりましたのに。ここ一月、一度も会って下さいませんでしたわね。酷い方」

「我に、会いたかっただと……?」

 

 優雅に語られたその台詞に、即座に皇帝が、不快感に満ちた声を漏らす。おそらく、仮面の下では、崩れた顔が、さらに凄惨な事になっているに違いない。

 それの知ってか知らずか、女はさらに、ふうわりとした気品ある笑みを浮かべて答える。

 

「ええ。私、この一月、教会にお籠もりをしておりまして、ずっと神の声を聞いてきましたの。そうしましたら、今まで私がお兄様から逃げて来たことが、何て罪深いことだったのか、やっと、悟りましたのよ。逃げては、いけませんでしたわね、逃げては。ええ、結婚こそが、女の幸せですもの。素敵な旦那様との結婚式を、今か今かと待ちきれなくて仕方ありませんの。それで、今日はお兄様が久々に将軍に会われているという噂を聞きつけまして、不躾とは思いましたが、一つお願いに参りましたのよ」

「……お願い?」

「ええ」

 

 遠く玉座から返ってきた言葉に、女は頷くと、その視線を後ろにいた将軍と、そしてリュートの方へと向けていた。

 

「ねえ、お兄様。ご存じ? この有翼の民の王子様、笛の名手なんだそうよ。私、一度、その音色を聴きたいと、以前からおねだりしておりましたのですけれど、この方、渋って、なかなか聴かせて下さらなくて」

 

 その言葉に、リュートは、即座に、あの中継島でのやりとりを思い出す。この女に迫られて、笛を武器に抵抗したあの夜の出来事……。そのあまりの恥ずかしさに赤面するリュートを尻目に、女はさらに言葉を続ける。

 

「私、今度の結婚式で、この王子様から、是非とも祝福として、その笛の演奏をして頂きたいの。ねえ、お兄様も素敵だと思いませんこと? 有翼の民の王子が、お兄様の奴隷として、祝いの演奏をするなんて、属国の皆様方に帝国の威光を知らしめる絶好の機会ではありませんか」

「……なっ! 何を勝手に! ぼ、僕は……」

 

 抗うリュートの足に、お黙り、とばかりに、女の足がのし掛かる。

 

「だから、この男への拷問は少し待って下さいな。私、そんな拷問をされて酷い顔になった方に、結婚式に出てほしくありませんし。ね? ガイナス将軍もよろしいでしょう?」

「ん? あー……、まあ、俺様はよ。春までに情報が得られればいい訳だから、別に今すぐじゃなくてもいいんだけどよ。結婚式後に、この兄ちゃんの身柄引き渡してもらえりゃ、俺様はそれで……」

「じゃあ、決まりですわね! 将軍も、是非、是非、結婚式に出席して下さいな。それから、お兄様。それまで、この方に演奏の練習をさせて上げてくださいな。うふふ、エリーは楽しみです」

 

 その、あまりにも普段とかけ離れた態度と、踏みつけられる足の痛みに圧倒されて、流石のリュートも、声すら出せない。

 ただただ、女の怪しすぎる豹変ぶりに、その内心で訝しく思うのみだ。

 

 ……この女。一体、何を、考えている……?

 

 

 

 

 

 


「姫様。すばらしい淑女ぶりでしたわね」

 

 皇帝との謁見を終えて、本宮から西宮へと伸びる廊下を歩きながら、腹心キリカが、先を行く姫に声をかける。それに対し、しずしずとその歩みを進めていた淑女は、突然、上品に結い上げていた髪を、窮屈だ、とでも言わんばかりに解いてみせた。ばさり、と音を響かせて、炎を思わせる赤毛が、幾何学の廊下に、優雅に広がる。それと同時に、淑女の口から飛び出したのは、いつもの高慢な笑い声だった。

 

「あははははっ。病気だとは聞いていたけれど、あの愚帝、あそこまでとはね。そりゃあ、元老院が焦る訳よ。あはははっ、あの顔! 笑えるっ!!」

「まあ、姫様ったら、本当に、性悪ですわねぇ。病人を笑うなんて、人として最低の行為ですわよ」

「あの男は人じゃないでしょ。人の皮を被ったけだものよ。そう……、妹との結婚を了承するなんて、けだもの以下。それよりも……」

 

 蔑むような眼差しから一変、女は、もう一人の女騎士、キリカの娘であるティータの方へ向き直ると、含むような魅惑の笑みを、彼女に見せていた。

 

「ティータ。あんたがお母様からの密書を届けてくれたおかげよ。ご苦労様、こっちは、もういいわ。あんたは、引き続き、大森林へ戻ってお母様の元で働きなさいな」

「……はいっ! 姫様」

「それからね、お母様に、伝言を頼むわ」

 

 まだあどけなさの残る少女騎士の前で、炎のような女が、さらに妖艶に笑む。

 

「『貴女の娘は、無事、結婚式を終えて、いずれ、御元まで馳せ参じます。それまで、どうぞ、大森林にて、ごゆるりと』、とね。それからね、キリカ。あんたにも、仕事よ」

「はい、何なりと。我らの、姫様」

 

 これまた、含むような大人の女騎士からの臣従の台詞。それを受けて、女は、自慢の赤毛を、さらにばさり、と翻した。

 幾何学模様の細工が施された窓から差し込んだ光が、それを尚も、きらきらと艶めかせる。その色は、女のルビーの瞳と相まって、さらに美しく、そして、深い、深い色合いを見せていた。

 そう、それは、まるで、人の体内に流れる血液にも似た――。

 

「婚礼衣装を用意して頂戴。とびきり上等で、とびきり清楚な、……そうね。血のような赤が、最も映える、無垢な純白の花嫁衣装をね」

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ