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青髪少女の恋煩(のろ)い  作者: chuboy
恋煩(のろ)い
5/8

その4

「呪いに関するお話なら、ここがいい」


 私たちは蔵部死公園に訪れていた。気を失った警察官には、お借りした服をお返しした。あのまま、裏路地に突っ伏して、ということも良かったかもしれない。だけど、呪われた被害者が同業者に変態扱いされるのは、どうにも気の毒だろう。


「桜が綺麗だね。まるで、直ちゃんのように美しい」


 公園は春を語るかのように、満開の花びらに包まれていた。紳士のもてなしのごとく、阿田は私のことを褒めてくれた。


「直と桜は全然違うだろ。バカじゃないのか」


「はぁ………」


 特に何かをいうのも嫌気がさして、ため息だけが零れた。

 奥ゆかしさのないペラペラなサルは、口もペラペラ。黙っていればいいものを、私にストレスを与えてくる。

 とはいえ、ここに来た目的は桜ではない。たった一本の桜の木にある。


「蔵部死町の恋愛スポット。“落ちぬ桜”だね」


 私がそのたった一本を見ていると、阿田は私の意志を汲み取ったかのように発言した。なんだか、意思疎通をしているみたいと思うと、心臓が()うるさい。


「なんだよ、二人で桜なんか見つめ…………。なんだこの桜、匂うな……」


 サルが桜の匂いを嗅ぎ始めた。ほのかな甘い香りとか、落ち着く気の匂いとか、そんなのではない。サルがそんな匂いに惹かれる訳がないのだから。

 つまり、サルの鼻が感づくに値する存在。

 それは、――呪いだ。


 すると、桜の木の根が突然、伸び始めた。成長というには勢いが早すぎて、まるで生きているかのように動く。


「私に何かよう? 阿田さん。それに瀧本のお嬢さん。そして…………、あなたは誰かしら?」


 蕾が肉声を鳴らし、根っこが私たち一人一人を指さした。


「誰というのは人に対する言葉。これは人間ではなくサルなので、お構いなく」


 私は桜の問いに、言葉を返した。私の言葉に阿田は苦笑いをしているのだが、サルは全く状況についていけていない。まず、自分が何を聞いているのかを疑っているのだろう。


「あら、人ではないのなら、私と一緒なのね」


 すると、桜の蕾が幾分か開いた。これが嬉しいというの感情表現なのだと思う。彼女なりの。

 だって、この桜の木は愛する人を守るとためにその身を犠牲にした“尼宮 廉”の魂の器なのだ。


「あなたは、れっきとした人間」


 憎悪や執念が残ったものだけが、呪いではない。美しさの中に散っていった想いだって、残滓として残るときもある。だから、私たちは“呪い”という言葉を決して、悪い意味には使わない。


「いいえ、お嬢さん。“元”人間よ、身体がないのだから人間とは呼べないわ」


 桜の葉がいくつか散る。それが何を示しているのかは汲み取れないが、言葉にずしっと重みがあった。

 自然の凄さを感じながらも、私は恐れることはない。


「それで、要件はなにかしら? もしかして、縁結びかしら」


「この街で起こっている殺人事件のことを知らない? あなたほど、街に深く根付いた呪いなら何か気付いてると思って」


「あら、真面目ね。もっとお淑やかにならなきゃ、阿田さんを射止められないわよ」


 桜の木は唆すように、靡いた。


「そんなことはいっていません」


 私は喰い気味に呟く。そして、その後にキャップをさらに深く被った。


「そうね、聞き違いだったわ。連続殺人の話ねぇ…………。確か、四人殺されているのかしら?」


「僕が見た最後の四人目は、餓えたように痩せ細ってた」


 阿田が言うには、こうだ。死体は水分が無くミイラのように乾燥していて、骨と皮だけを残していた。事件現場の周りには、血痕はなかったがアスファルトには無残に砕け散って、地表が露出していたという。


「圧縮形の呪い……。犯人の血肉を絞り出した。空間を捻るときにアスファルトを巻きこんだっていう線は?」


「確かに現場から言えば、納得できるかも。さすがは直ちゃん」


 阿田に褒められると、まんざらでもない。だけど、空間を捻るとすれば非常に大きな呪いだ。それこそ、感知できる程に。


「尼宮さん、この街で一番大きな呪いは分かる?」


「私のことを人の名で、呼んでくれるのはお嬢さんと阿田さんだけね」


 すると、桜は風に揺れた。否、風を吹かせたのだ。

 それは北東に向かう大きな突風で、桜の花びらを巻き上げて、私たちを誘導するかのようだ。


「花びらが、大きな呪いに引きつけられてる」


 私たちは、ピンクの吹雪に導かれて北へと向かう。


「なぁ、もしかして、桜の木が喋ったのか?」


 すると、サルは今頃になって状況を理解している。


「えぇ、ここからは頭を使わなくていい単純な仕事」


 私はサルを焚きつけると、口角を上げ、目を光らせた。

 斜陽がサルの闘志を、象徴するかのように太陽は落ちていった。


「直ちゃん。もうすぐ夜だよ」


 夜は呪いが盛んに動き出す時間帯だ。これ以上の被害を食い止めるためにも先を急ぐしかない。

 この連続殺人に終止符を打つために。

前回、今回と説明っぽさの残るお話になってしまったかと、思います。

ということで、華やかな登場人物のデザインを募集いたします。


この章が終わりましたら、打ち切りかどうかの判断を致します。

連載続行の場合には、定期更新といたしますので、ぜひともお付き合い下さい。

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