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ポーカーフェイズ
―――冬の雨は凍てつく程に身を切る。
核が産廃された筈の冬は特に―――
2016年、古寂びた街の
古い廃倉庫に雨宿りがひとり。
ドアノブに凭れ掛かり、中になだれ込む
隻腕の警官が 途切れそうな意識を研ぎながら。
拳銃の残弾を確かめる。―――1.2.3。
…残り3発。
憎らしげにスライドを引き、装填された弾丸とデコッキングされた事を確認した彼女は
気を失い、力無く俯く。
赤のレンガに水針が穿たれる音も
雨が溜まる音も
伏した彼女には聴こえない。
戦争が終わる最後の日
雨醒めやらぬその倉庫では
1発だけ 銃声が轟いた。